子どもも大人も「本に寄り道」できる、川崎・いぬくら子ども文庫 小学校の司書教諭が引退後、自宅を「図書館」に

竹谷直子 (2023年11月4日付 東京新聞朝刊)
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自作の紙芝居を紹介する渡部さん=いずれも神奈川県川崎市宮前区で

 神奈川県川崎市宮前区の「いぬくら子ども文庫」は、元司書教諭の渡部康夫さん(72)が退職をきっかけに自宅の1階部分を開放して始めた地域の居場所だ。子ども向けの絵本や児童書はもちろん、文学賞を受賞した大人向けの人気作など1万冊以上を取りそろえるほか、読み聞かせや紙芝居の上演も。渡部さんは「寄り道することの楽しさを知って、心が育ってほしい」と子どもたちを見守っている。

蔵書は1万2000冊 「おはなし会」も

 「おもしろい、こんな話だったんだね」。先月28日、月に一度「いぬくら子ども文庫」で開かれる「おはなし会」には、地域の子どもたちや、本好きな大人たちが集まり、本を片手に会話をしていた。

 同文庫の蔵書は約1万2000冊あり、本棚には絵本や小説などがぎっしり。

 渡部さんは「宝探しのような面白さがある」と文庫の魅力を語る。

 渡部さんは、川崎市内の小学校で38年間、司書教諭として勤めてきた。2011年の退職後、「子どもたちが本と向き合える活動をしたい」と考え、同年12月から手弁当で文庫を始めた。司書教諭時代に購入した本のほか、助成金を活用するなどして蔵書を増やしてきた。

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絵本の読み聞かせを楽しむ参加者

自由に過ごせる 第二のおうちみたい

 利用者は小学生が中心だが、未就学児や地域の大人たちも集まる。昔の教え子が通ってきたり、自分の本を自分より小さい子たちのために、と寄付してくれる子もいるという。年間延べ約1400人が利用し、3200冊を超える貸し出しがあった時期もあったが、コロナ禍の時期は利用が減った。それでも「子どもが一人でもくるのなら開きたい」と続けてきた。

 おはなし会で上演する紙芝居は、渡部さんの手づくりで亀が主役。毎月、お話し会のために作り続け、今は約100作品もある。「かめくん」がサンタクロースになったり、芋掘りをしたりとバラエティーに富む内容で、昨年はウクライナの戦争をテーマに織り込んだ作品もつくった。

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まつぼっくりやドングリで工作をする親子

 母親から紹介されて通っている会社員の三坂楓さん(32)=宮前区=は「娘がおなかにいるときから来ている。自由に過ごすことができ、第二のおうちみたい」と話す。まつぼっくりなどを使った工作をしていた娘の佳央ちゃん(5)は、周りの大人たちに話しかけながら「つくるのが楽しい」と笑顔だった。

 渡部さんは「子どもは遊びとゆとりの中で伸びていく。効率を求められがちだが、自然に伸びて、いろんなことを身に付けていく道をつくっていってあげたい」と話した。

11月18日「ごえん楽市」に参加

 いぬくら子ども文庫も参加する「ごえん楽市」が18日、川崎市中原区の中原市民館・かわさき市民活動センターで開かれる。市民活動団体が一堂に会するイベントで、4年ぶりにコロナ禍以前の規模での開催となる。

 子育て支援団体や平和活動団体など64団体が参加。専修大の学生も初めて参加し、学生らがつくった持続可能な開発目標(SDGs)が学べるカードゲームを初披露する。

 午前10時半~午後3時半。イベントの詳細はホームページ(「ごえん楽市2023」で検索)で。問い合わせは、主催のかわさき市民活動センター=電話044(430)5566=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月4日

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