〈絵本さんぽ〉西荻窪 トムズボックス 「絵を見て誰が描いたかわかる」作家性の高いこだわりの古書がずらり

(2024年4月13日付 東京新聞朝刊一部加筆)

絵本さんぽ

 魅力的な絵本の店を記者が訪ね、随時紹介します。

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西荻窪にあるトムズボックスの店舗=東京都杉並区で

赤い窓枠とクマの看板がお店の目印

 JR西荻窪駅北口から10分ほど歩くと、商店街を抜けた閑静な住宅街に、赤の窓枠がポップでかわいい古書店「トムズボックス」がある。

 店内には、店主でフリーの絵本編集者の土井章史(あきふみ)さん(67)が集めたこだわりの絵本や美術書などが壁一面にずらりと並ぶ。

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こだわりの絵本、美術書がずらり

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本棚には作家が携わった作品が並ぶ

 「くまの子ウーフ」の挿絵で知られる井上洋介さん、独特のユーモアあふれる「ナンセンス絵本」を数多く残した長新太(しんた)さん、イラストレーターの和田誠さんらの作品を中心に、店にあるのは5000冊ほど。希少価値の高いものもある。「絵を見てその人が描いたものだと分かるものを並べている。作家性の立っている人の作品が好き」

絵本作家を育てるワークショップも

 トムズボックスは1993年、土井さんが「絵本を直接、読者に手渡したい」と、絵本専門店として吉祥寺にオープンした。

 絵本と出合ったのは、社会人になってから。編集者として「1億人の昭和史 漫画大図鑑」(毎日新聞社)というムックに携わった際、漫画家でもある井上さん、長さんの作品と出合った。「魅力に取りつかれ、裾野が広がるようにどんどん絵本にのめり込んでいった」。絵本作家を育てるワークショップも長年続けており、酒井駒子さん、島田ゆかさんら人気作家も輩出した。

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土井さんが編集した最新の絵本

「自分の好きな作家を誰かが見つけてくれる」

 吉祥寺の店は2015年に惜しまれつつ閉店したが、2019年、西荻窪で古書店として再開。学生時代から古本収集が趣味だった土井さんは、「絶版になったものや流通しない私家版を販売することで、作家の痕跡を残すことができる。自分の好きな作家を誰かが見つけてくれる可能性があるのはうれしい」と話す。

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トムズボックスから出た本

 箱の中からクマがのぞく店の看板は、トムズボックスから本を出版した際、和田さんがデザインしたもの。多くの作家に愛されるお店で、お気に入りの作家を見つけるのも楽しそうだ。

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イラストレーター和田誠さんデザインしたロゴ

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井上洋介さんがデザインした初代のロゴは吉祥寺のお店から飾っている

トムズボックス 

住所:東京都杉並区西荻北3の11の16

電話:03(5303)9737

金土日曜営業。正午~午後8時(日曜のみ午後6時まで)

土井章史さんおすすめの1冊

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「ちへいせんのみえるところ」作・絵 長新太

地平線の見えるとこから、一体何が出てくるのだろう? ぼくのかお、ぞうのかお、おおきな火山、それから…。

おすすめのポイント

 暗い地平線に、いろいろなものが「でました」といって登場する前衛的な絵本。この絵本が描かれる地平線は「鈍色の空だ」と、内田麟太郎さんも言っていました。

 長さんのナンセンス絵本を読んで、すごく変だなぁと思って惹かれました。長さんの絵本は言ったっきりが多いんです。ナンセンス絵本だから、説明できたらナンセンスではなくなってしまうんですよね。子どもたちは身体で感覚で、長さんの絵本を好きになっていくんです。

 幼稚園くらいの子どもは「孤」の状態。友だち同士で情報共有などもそこまで密にはしません。この時期はとても重要で魅力的。そんな時期に、ナンセンス絵本と出合ってくれたら、面白い子に育ってくれると思います。

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