〈絵本さんぽ〉柏 ハックルベリーブックス 発見と夢と冒険のあるお店 「幼年童話」そろえ児童文学への架け橋に

(2024年6月29日付 東京新聞朝刊に一部加筆)

絵本さんぽ

 魅力的な絵本の店を記者が訪ね、紹介します。

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児童書専門店「ハックルベリーブックス」=いずれも千葉県柏市で

店主は児童文学の研究者で評論家

 千葉県柏市の柏駅東口から10分ほど歩くと、愛らしい外観の児童書専門店「ハックルベリーブックス」がある。

 店主の奥山恵さんは東京都立高校で国語の教師を20年以上務めた後、2010年に店をオープンした。児童文学にのめり込んだのは大学時代。ファンタジー小説「ゲド戦記」の面白さに衝撃を受けた。児童文学研究者の佐藤宗子さんの読書会や研究会に参加し、大学院でも研究を続けてきた。

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店主の奥山恵さん

 奥山さんは児童文学の研究者、評論家としても知られ、白百合女子大と二松学舎大で非常勤講師も務めている。

児童文学の名作から名づけた店名

 店の名前は、児童書の名作「ハックルベリー・フィンの冒険」から付けた。南北戦争前のアメリカ南部が舞台で、黒人奴隷のジムと、いかだに乗ってミシシッピ川を旅する物語。「内省的な少年ハックが、当時の奴隷制度に葛藤を抱えながら、自然の中を冒険する姿に感動した」という。店名には「新たな発見や、夢と冒険のある店に」との願いを込めた。

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看板は元同僚の妹さんがデザインした

 店内の本棚には絵本もあるが、幼児から小学3・4年生くらいまでを対象とした読み物が多くを占める。これらの「幼年童話」は「絵本から児童文学への架け橋」だという。絵本では表現できない心の動きや複雑な感情が描かれ、「言葉から想像することで、読む楽しみに触れ、児童文学へと進んでほしい」と願う。

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本棚には幼年童話がずらりと並ぶ

児童書は子育てのヒントにも

 こうした児童書には、登場人物の子どもたちに影響を与える理想的な大人たちの姿も描かれている。「大人も楽しめて、子どもの気持ちが分かり、子育てのヒントにもなります。ぜひ、大人も読んでみて」と笑顔。子どもに贈ったり読み聞かせをしたりして、名作に親しんでほしいという。

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 奥山さんが飼育しているフクロウの「フーちゃん」が店内で出迎えてくれることもある。店と同い年で、マスコット的存在として親しまれている。2階のイベントスペースでは絵本の原画展や個展などが開かれることも。親子で児童書の魅力にどっぷりと漬かりたい。

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新刊や定番の絵本も並ぶ

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運が良ければフーちゃんに会えるかも

ハックルベリーブックス

住所:千葉県柏市柏3の8の3

電話:04(7100)8946

火曜日定休。水曜日も展示イベントがなければ休み。営業時間は午前10時半~暗くなるまで。

奥山恵さんのおすすめの一冊

「ハックルベリー・フィンの冒険」マーク・トウェイン 著・千葉茂樹 訳(岩波少年文庫)

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 舞台は南北戦争以前のアメリカ南部。気ままに生きるハックルベリー・フィンは、トム・ソーヤーとの冒険の後、大金を手に入れたものの、未亡人に引き取られ堅苦しい生活を送っていた。そこへ金を目当てに飲んだくれの父親が現れ、ハックは奴隷のジムとともに、筏でミシシッピ川をくだる冒険の旅に出て…。

おすすめのポイント

 お店の名前にもなっている「ハックルベリー・フィンの冒険」はアメリカ文学としてもすごく高く評価されていて、「アメリカ文学はここから始まった」と言われる作品。主人公のハックは、「トムソーヤの冒険」にも出てくる、トムの友だちです。

 ハックはジムと旅をしながら、事件に巻き込まれます。物語の途中途中でふたりの交流があったり、穏やかな川を旅している描写が美しいです。当時のアメリカは、奴隷を助けることはいけないことでした。どうしたらいいか悩みながら旅をしていく、ハックの葛藤は読み応えがあります。

 いろいろな訳が出ていて、それぞれ工夫されているのですが、私は岩波少年文庫の千葉茂樹さんの訳が好きです。物語は、主人公のハックが一人称で語ります。ハックは宿無しの子。そのため、一人称を「俺」とか「おいら」などと翻訳されることが多い中、千葉さんは「ぼく」と訳しました。ハックは野性児のように言われているのですが、自然の美しさに感動したり、奴隷制度のことに悩んだり、葛藤したりする内省的な少年なんです。だから、千葉さんも「俺」ではなく、「ぼく」と訳したんだと思います。私もこれにはすごく賛成です。また、さまざまな表紙の絵がある中、この絵はミシシッピ川の穏やかな感じをよく表しています。

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