〈パリ特派員の子育て通信〉生木のツリー 匂いとともに残る思い出に…

竹田佳彦 (2019年1月8日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て世代がつながる

パリ特派員の子育て通信

 2017年9月からフランスに駐在する東京新聞パリ支局の竹田佳彦記者(40)が、現地の子育てについてつづります。随時掲載。

生木のツリーに飾り付けする娘

 2019年を迎えましたが、フランスで祝うのは新年よりも断然クリスマス。こちらで初めて迎えた2018年の年始は、多くの職場が1月2日から業務を再開することに驚きました。12月22日から冬休みに入る幼稚園にかわり、サントル・ドゥ・ロワジールと呼ばれる学童保育も新年2日から終日預かってくれます。キリスト教徒以外に配慮して「クリスマスの祝日」とは書かずに「冬の祝日」と表記する幼稚園や会社があることも知りました。

「とーたん。サパン・ド・ノエル(クリスマスツリー)きたよ」。12月に入ったばかりのある朝、娘と一緒に幼稚園へ行くと、教室内に置かれた本物のモミの木が目に飛び込んできました。夕方に迎えに行く妻によると、数日前からあったとのこと。娘本人は飾りつけがしたかったようで、「飾らなかったの」と寂しそうな様子です。せっかくですから、我が家も生木のツリーを買うことにしました。

 年末になると、パリ市内のスーパーや花屋さんの店先に、ちょっとした森が登場します。クリスマスツリーに使うモミの木の販売コーナーです。店頭に並ぶモミの木の仲間は何種類もあり、フランス人の知人に聞くと葉っぱの日持ちが違うと言います。早く準備し過ぎると、クリスマス当日にかなりの葉っぱが落ちてしまう種類もあるのだとか。買いに行った店には高さ60センチから2メートル以上まで7つもタイプがありました。我が家が買ったのは、約170センチのもの。肩に担いで持ち帰るほか、街中では買い物カートやキックスケーターに載せて運ぶ人も目にします。

 少し雨に濡れた木を持ち帰ると、マツに似た匂いがほんのりと室内に満ちました。娘は「なんか、くっちぇーな(くさいな)」と言いながらも嬉しそうです。大きなプラスチック製の玉飾りをいくつか落として壊してしまいましたが、大まじめな顔で飾り付けていました。最後に電飾を巻き付けると、さっそく試験点灯です。以来、幼稚園から帰ってくると娘は一目散にツリーへ向かい、点灯するようになりました。匂いとともに、楽しい思い出として記憶に残ることを願うばかりです。

 クリスマス直前には、嬉しいサプライズもありました。マンション管理人のファティマさんから大きなクマのぬいぐるみ、1階に住むマダムのエリーさんからパズルのプレゼントをいただいたのです。お2人が我が家を訪ねてきたとき、嬉しさと恥ずかしさから私の後ろに隠れてモジモジしていた娘ですが、最後には抱きついて両頬にキスをしていました。周辺の住民に可愛がってもらい、親としても嬉しい限りです。

 さて、クリスマスツリーですが、フランスの農林業統計によると、仏全土では毎年700万本ほどが購入されています。全世帯の約24%に相当する数。2017年の平均価格は27.59ユーロ(約3500円)ですから、約250億円とかなり大きな市場です。多くの家庭では1月中旬くらいまで飾っているようで、このコラムが掲載される1月初旬はまだまだ多くのツリーが現役でいることでしょう。

 パリでは役目を終えた生木のツリーを市が回収してくれます。今シーズンは2018年12月26日から19年1月27日まで市内174カ所に回収ステーションが設けられ、市民は飾りを外した木を持って行くだけ。市は細かく砕いてチップにした後、公園の植栽にまくそうです。マツの仲間特有の成分で、雑草が生えにくくなるのだとか。暖炉が家にあれば燃やすことも可能ですが、パリにあるマンションの場合は管理規約などで許可されている必要があり、年2回の煙突掃除も義務付けられています。フランス人の友人によると「燃やした後の片付けもなかなか煩わしいんだ」。我が家も一応暖炉がありますが、分厚い管理規約の内容確認と煙突掃除に阻まれて、燃やすか回収に出すか決めかねています。

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