女性議員ゼロの羽生市議会に2児の母が挑戦 子育て層の声を議会に届けたい

井上峻輔 (2019年3月13日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 間もなく統一地方選が始まります。昨年5月に女性議員を増やすための法律が成立して初めての統一地方選で、地域の課題に取り組む地方議会が変わっていくかどうか注目されます。埼玉県では、唯一女性議員がいない羽生市で子育て中の女性が市議選に挑戦します。
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羽生市議選に立候補する予定の斎藤万紀子さん(右)。事務所は廃園した幼稚園の園舎を利用し、自身やスタッフの子どもが遊び回っている=羽生市で

埼玉県で唯一、女性議員がいない議会

 事務所開きの会場では、幼い子どもたちが遊び回っていた。縄跳びを繰り返したり、ブロックを組み立てたり。廃園した幼稚園を利用した事務所なので、遊具はたくさんそろっている。

 無邪気な笑い声が響く中、4月の羽生市議選に立候補する予定の斎藤万紀子さん(37)がマイクを握った。「みんなが主役のやさしいまちづくりに、女性の視点から携わっていきたい」

 羽生市議会は、県内の議会で唯一、女性議員がいない。7歳と4歳の2人の息子を育てるパート職員だった斎藤さんは、現状打破を願う仲間たちに支えられ、初出馬を決意。5日に事務所開きを迎えた。

傍聴で衝撃「子育て施策の意見が出ない」

 スタッフも同世代の子どもを持つ親が多く、会議中でもママに構ってほしい子どもたちがすり寄ってくる。「この建物が借りられたのはラッキーでした」。ここなら選挙期間中も、自身やスタッフの子どもの面倒をまとめて見られる。

 昨年9月に市議会を傍聴した際、子育て施策に関して議員からほとんど意見が出ないことに驚いた。「母親なら誰でも知っている地元のNPOのことも知らない様子で、びっくりしました」。男性ばかりの議会に女性の声を届けたいと意気込む。

 女性議員をいかに増やすか-。昨年5月、そんな課題を投げ掛ける法律が国会で成立した。「政治分野における男女共同参画推進法」(推進法)。地方、国政を問わず、選挙で男女の候補者数をできる限り均等にするように政党に促す内容だ。

県議会も少ない…立候補予定130人中25人

 しかし、今回の統一地方選でも県内の女性議員は大きくは増えそうにない。特に、欠員を除いた83人中、女性が9人しかいない県議会は深刻だ。推進法ができたにもかかわらず、立候補を検討している約130人のうち、女性は25人程度にとどまっている。

 最大会派の自民は61人を公認・推薦するが、女性はわずか4人。現職は男性ばかりで、新人も女性は2人だけだ。鈴木聖二県連幹事長は「公募に応じる女性は少なく、圧倒的に男性が多かった」と説明する。

 一方、第二会派を構成する立憲民主党は公認する10人中、4人が女性。「子どもがいると政治に挑戦できないという文化を破りたい」(高木錬太郎県連幹事長)とし、各市議選でも子育て世代を擁立する。

「子どもは誰が?」男性なら聞かれないのに

 「男社会」と言われてきた議会に女性が進出していくのは容易ではない。「議会で女性に求められるのはかわいげ。物を言うと生意気と思われる」と語るのは、2015年に初当選した越谷市議の松田典子さん(40)だ。

 子育て世代としての苦労も経験してきた。当選後に第三子を妊娠したため、出産を理由に定例会を欠席。1カ月後の臨時会では生後間もない子どもの預け先がなく、ベビーカーに乗せて委員会室に連れて行った。その場では何も言われなかったが、後になって同僚議員から「神聖な場所だから」と注意を受けたという。

 視察のたびに「子どもは誰が見ているの」と聞かれるのも複雑な思いだ。男性ならそんなことは聞かれないのに、と。「議員は子育てしていない人がやるものという考えは根強い」と実感している。

法律だけではダメ、両立できる環境づくりを

 内閣府が17年度に実施した全国の女性地方議員対象の調査では、女性議員が増えない要因としては「家庭生活との両立が難しい」との回答が最多。ほかに「家族や周囲の理解を得づらい」「政治は男性がするものという固定的な考え方が強い」などの回答が目立った。

 推進法の制定を求め続けてきた全国フェミニスト議員連盟世話人で、八潮市議の矢沢江美子さん(72)は「法律をつくっただけでは女性議員は増えない」と指摘。「育児をしながらでも議会活動ができる環境づくりが欠かせない。身近な女性が議員になっていく姿もロールモデルとして示していきたい」と話している。 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年3月13日

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