私語禁止、グラウンド何周も…「過剰なルール廃止を」 東京都の一時保護所に改善求める意見書 

(2019年7月19日付 東京新聞朝刊)
 虐待を受けたなどで児童相談所に保護された子どもたちが最初に入る「一時保護所」について、東京都の第三者委員が3月、私語禁止など不適切な対応で子どもたちの人権を侵害しているとして、改善を求める意見書を都に提出していたことが分かった。 
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40ページにわたる意見書。一時保護所の具体的な問題点が指摘されている

「ダメな奴」「黙ってろよ」などの暴言も

 意見書によると、都の一時保護所では、私語や目を合わせることを禁止するなど、さまざまな不合理なルールが存在。ルールを破ると「個別対応」として、ついたてで仕切った場所で漢字の書き取りを長時間させたり、グラウンドを何周も走らせるなど「指導の名の下に、罰を与えている」と指摘した。

 保護所にいる子どもたちからは、皆の前で職員に怒鳴られたり「ダメな奴(やつ)だな」「うるせえな、黙ってろよ」などの暴言があったとの訴えもあった。保護所にいる間は学校に通えず、施設内での学習指導も不十分とした。

「刑務所みたいで脱走したくなる」

 「刑務所みたいで、感情をなくし、脱走してしまいたくなる」「誰かと話したい」「安全だけど安心ではない」。意見書には、虐待など過酷な状況からやっと逃れた保護所で、過剰なルールに縛られ心が休まらない生活を強いられる子どもの叫びもつづられている。

 意見書では、こうしたことが行われる背景に、職員不足と施設の定員超過があるとして、職員を増やす必要があると指摘。私語禁止などのルールや個別対応と称した罰は「明日にでも廃止できる」とし、「職員の意識改革を早急に実現し、1日も早く子どもたちに対する権利侵害が減ること」を求めた。

弁護士4人が月に1度訪問調査

 第三者委員は都が昨年度から導入した制度で、4人の弁護士が月に1度、都内の一時保護所を分担して訪問。子どもや職員の話を聞いて4人で意見書にまとめた。

 竹中雪与家庭支援課長は「真摯(しんし)に受け止めたい。子どもの入所率が高い中、管理的にならざるを得ない部分もあるが、子どもの権利を守って一人一人にきめ細かに対応できるよう努めたい」と話した。

一時保護所とは

 虐待や非行などの理由で、児童相談所が保護が必要だと判断した18歳未満の子どもが一時的に生活する施設。児相に付設か近くに設置される。保護中に児相が家庭の状況などを調べ、家庭で暮らせないと判断すると子どもを児童養護施設や里親へ委託する。都児相の一時保護所は7カ所あり、定員213人。2017年度の平均入所率は109.2%で、100%超えが常態化している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年7月19日

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