最貧国ルワンダで子ども向けラジオ番組を立ち上げ 元ユニセフ職員の栄谷明子さん、体験談を本に

奥田哲平 (2020年7月8日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

ラジオ番組の収録に臨むルワンダの子ども=ユニセフ提供

 1994年に約80万人が民族虐殺の犠牲になったアフリカ東部ルワンダで5年前、初めての子ども向けラジオ番組の放送が始まった。立ち上げの中心となったのは、国連児童基金(ユニセフ)に勤めていた栄谷明子さん(42)。今月2日に著書「希望、きこえる? ルワンダのラジオに子どもの歌が流れた日」(汐文社)を出版した。未来を担う子どもへの温かなまなざしがあふれている。

ルワンダでラジオ番組を始めた経緯を語る栄谷明子さん。高校生のころ、外交官だった小和田雅子さん(皇后陛下)に憧れて国際舞台で働く夢を持った=奥田哲平撮影

虐殺の影響で国民の半数が18歳未満

 ラジオ番組「イテテロ」は、ルワンダ語で「子どもを育む場」という意味。ルワンダは急速な経済発展を続けるが、いまも最貧国の一つだ。未就学児の教育施設は少なく、玩具や絵本を買える家庭はわずか。昼間は子どもだけで何もすることがなく過ごしていた。

 栄谷さんは2013年にコミュニケーション戦略の専門家として赴任した。「手洗いなどの生活習慣を身に付けることや、想像力を膨らませてワクワクすること、希望を持って生きることを教えたい」。虐殺で深い傷を負ったルワンダは、18歳未満が国民の半数を占める。彼らに希望を与えられないか、と思案した。

「おかあさんといっしょ」がヒントに

 テレビが普及していないため、ルワンダ放送協会に子ども向けラジオ番組を提案。番組作りの経験はないため、「自分がNHKで見た『おかあさんといっしょ』などの番組が手掛かりになった」という。幼児教育やラジオ制作の専門家ら協力者と話し合いを重ねた。

 主人公はライオンやウサギなど動物たち。「友達と仲良くする」「子どものしつけ」などをテーマに物語を創作し、オーディションで選んだ子どもが声優を務めた。2015年に30分番組で放送を始めた。反響は大きく、感想を語り合うファンクラブもつくった。ある保護者には「たたいたり、説教すればいいと思っていたのは間違っていた」と気付くきっかけになった。

日本の中高生に伝えたいワクワク感

 栄谷さんは5年間の勤務を終え、番組が続く道筋を付けて2018年にルワンダを離れた。移住したエジプトで1年間かけてつづった初の著書は、「内向き」といわれる日本の中高生に「夢に向かって道を切り開くワクワク感」を込めたという。

 「会員制交流サイト(SNS)やインターネットが大きな世界を占めるかもしれないが、現実が充実することが本当は必要。自分のやりたいことが社会に直結し、役に立っていると思える生き方があると伝えたい」

栄谷明子(さかえだに・あきこ) 

1978年、東京都生まれ。東京大卒業後に外資系銀行勤務を経て米国で修士号を取得。2004年からユニセフのセルビア・モンテネグロ(当時)事務所で働き、出産を経て米ニューヨーク本部などで勤務。2013年にルワンダに赴任した。2019年から国際協力機構(JICA)専門家としてエジプト人留学研修生を日本に送る教育パートナーシップ人材育成事業共同議長。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年7月8日

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