里親の悩み、経験者が家庭訪問でケアする「里親ピアサポート」 真実告知にもアドバイス
増える里親 寄り添う姿勢で支え合う
「先生に砂をかけたりとかやんちゃで。保育園の連絡帳で先生がキレている」
「うちも長女が気が強くて、いつも謝っている。そんなお年頃だよね」
名古屋市中川区の西村賢裕さん(39)、妻の真依子さん(39)宅に先月下旬、「里親ピアサポーター」2人が訪れた。西村さんは同市の児童相談所を通じて生後5カ月から優矢君(3つ)を育て、特別養子縁組が成立して法的にも親子になった。ピアサポーターの古田島あかねさん(32)も3歳と4歳の女の子2人の養親。共通の話題に会話が弾む。
この事業は、NPO法人「名古屋市里親会こどもピース」が要望し、市から委託を受ける形で実施。里親の困り事があっても、児相は多忙で相談しにくいのが実情だ。同会は子育てサロンなどを通じて里親同士がつながる機会も設けているが、参加率は高くない。奥田初恵代表は「里親が増えている分、1人で抱え込まないように支え合う仕組みが一層必要」と語る。
ピアサポーターは里親経験5年以上、教員や保育士の有資格者など、いずれかの要件を満たした会員6人。希望する家庭を2人で1回につき1~2時間ほど無料で訪問し、子どもの発達状況や進路といった子育ての喜びや悩みに耳を傾ける。「助言というより寄り添う姿勢を大切に」と心掛ける奥田さん。早急に専門機関の支援が必要な場合は児相と連携して対応する。
真実告知の葛藤 先輩の言葉が支えに
対象は市内の登録里親・養親約230世帯で、先月末までの半年間に22世帯を訪ねた。多く話題に上るのが「真実告知」。「産んでくれた人は事情があって育てられなかった。私たちはあなたを育てることを心から望んで家族に迎えた」と、どう子どもに分かる形で伝えるか。
生みの母親と交流が続いている西村家の場合、すでに優矢君は理解しているものの、成長とともに葛藤が出てくると見据える。真依子さんは「もう少し大きくなり、ほかの子どもと違うと気付いた時に大丈夫かな。ちゃんと受け止められるように訓練しないと」。
古田島さんが応じた。「うちはお風呂に入るたびに疑問をぶつけてくる。真実告知したからといっても消化するまで時間はかかりますよね」。同じ経験をした先輩たちの言葉は何よりの支えになる。
先輩里親による家庭訪問を15年前から先駆的に取り入れている静岡市里親会の真保和彦会長は「悩みを聞いて終わるのではなく、専門機関につなげるなど適切な支援をすることで信頼を得られる」と助言する。昨年度は178件の訪問実績がある。ポイントは子どもを迎え入れる前の里親宅も訪ねること。「初めから顔の見える関係ができていれば、里親会の行事に参加しやすい。里親の横のつながりで、子ども同士もつながっていく。同じ境遇の仲間がいると感じることはいい影響を与える」
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