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「未婚のひとり親」より「離婚したひとり親」が税金優遇 不平等の解消を阻むものは?

皆川剛 (2018年12月15日付 東京新聞朝刊)
 来年度の税制改正大綱で焦点となっていた婚姻歴のないひとり親への支援策は、所得制限を設けて住民税を非課税とするなど限定的な内容にとどまった。婚姻歴の有無によって差別されないことを求める当事者の声を受けての見直しが、自民保守派の「伝統的家族観」の壁に阻まれた。不平等の根本的な解消にはまだ遠い。
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ひとり親家庭の子どもの学習支援。貧困の連鎖を防ぐ手だてのひとつだ=2015年3月、石川県内灘町で

自民保守派「未婚の出産を助長し、伝統的な家族観を揺るがす」

 「税制改正のまな板に載ったことは大きな一歩だ」

 ひとり親の支援を行うNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は、そう話す。婚姻歴の有無により、税の優遇に大きな差がある制度の改善を訴えてきた。

 ひとり親をめぐる現行の税制では、婚姻歴があれば配偶者と離婚・死別した人に適用される「寡婦(寡夫)控除」の対象になる。所得税や住民税が控除されるのに加え、年収が204万円以下なら住民税の支払いは免除される。これに対し、婚姻歴のない人は子どもがいても税の優遇を受けられない。

 自民・公明与党の税制協議会では、公明がこうした不平等の是正を求めた。一方、自民の保守派議員を中心に、「未婚の出産を助長し伝統的な家族観を揺るがす」と否定的な意見が出ていた。

ひとり親になった理由 最多は「妊娠を知り、男性が去った」

 14日にまとまった与党の大綱は事実上の折衷策。婚姻歴のない人でも、児童扶養手当を受給していれば、年収204万円まで住民税を非課税にする。他方で、所得税法の改正は見送り、代わりに年収365万円以下を条件に、婚姻歴のない親に年1万7500円を給付する。

 赤石さんは、こうした改善を評価する一方、「婚姻歴のない親の収入は寡婦と同程度か、あるいはより低い。税を負担する能力に目を向けて平等に扱ってほしいと要望してきたが、いまだ限定的な内容だ」と残念がる。

 しんぐるまざあず・ふぉーらむは10、11月、非婚のひとり親93人を対象にアンケートを実施し、ひとり親になった経緯を尋ねた。「子どもの父親にあたる交際相手の男性が妊娠を知ると去っていった」が22人で最多。「男性に妻子がおり結婚できなかった」が18人と続き、「婚約を破棄されてしまった」と答えた人も15人いた。

 「伝統的な家族観を崩壊させると言うが、望んでひとり親になったわけではない人が多いことを知ってほしい」と赤石さん。アンケートからは、保育料を分納したり、子どもを進学塾に通わせるのを諦めたりと生活に困窮する様子がうかがえる。赤石さんは「一人で産んで必死に子どもを守り育てようとしている母親たちの実像を、国会に伝える努力を続けたい」と話す。

離婚した女性を下回る平均年収…「生活実態に即して課税すべき」

 ひとり親を対象にした厚生労働省の2016年の調査では、母子家庭のうち「未婚」の女性は8.7%。1983年の5.3%から増え、初めて「死別」を上回った。未婚女性の平均年収は177万円で、離婚した女性より28万円少ない。同省は「詳細な分析はしていない」としつつ、「未婚女性の方が年齢が若く、平均の収入が低く出ている可能性がある」とみる。

 税理士で立正大客員教授の浦野広明氏(税法)は、「税は負担能力に応じて払うもので、婚姻歴の有無にかかわらず生活実態に即して課税すべきだ。特に、応能原則の中心にある所得税の是正が見送られたことは、憲法の法の下の平等に反する状態を温存することを意味する」と指摘している。