東京都内の産婦健診、2026年10月から公費負担に 産後うつや虐待の早期発見と予防へ 全国8割超の自治体が既に実施

奥野斐 (2026年2月13日付 東京新聞朝刊)
 出産後間もない女性の心身の状態を確認する「産婦健診」が、東京都の全区市町村で10月から公費負担となる。全国8割超の自治体では既に公費負担だが、都内では独自に実施していた葛飾区や八王子市など6自治体(2024年度末)にとどまっていた。都は産後うつや虐待の早期発見、予防につなげる狙いだ。
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東京都庁(資料写真)

産後2週間~1カ月に母体の回復など確認 

 産婦健診は、母子保健法上は区市町村が必要に応じて行うこととなっている。出産した病院などで産後2週間~1カ月ごろに、母体の回復や精神状態をチェックする。

 東京都は都内での全面実施に向け昨年3月に検討会を設け、区市町村共通の受診ルールや受診票を作り、全62区市町村が導入に合意した。各自治体が受診票を配り、出産した人は委託した医療機関での産後2週間と1カ月ごろの2回、定められた項目は原則自己負担なしで受診できる。医療機関によっては初診料などがかかることもあるという。

 1回の補助額は5000円で、都は今後、医療機関向けの手引作成や周知を進め、10月の開始を目指す。2026年度当初予算案に区市町村への補助や普及啓発の費用を盛り込んだ。「里帰り出産」などで都外で出産し健診を受けた場合の対応は各自治体が定める。

 産婦健診について、国は2017年度、費用助成事業を創設。こども家庭庁によると、2024年度は1445区市町村で実施し、1回5000円の補助額を国と区市町村とで折半して負担している。

さまざまなリスクを把握し、母子を支援

 都内で産婦健診の公費負担が進んでいなかった背景として、医療機関や専門医の数が地域ごとに異なることや、財政負担の大きさなどが指摘されていた。区市町村や都議会からは都に対し、共通受診制度の導入検討を求める声が出ていた。

 都内では新生児の1カ月健診も10月から、同様の共通受診制度が導入され、全域で公費負担となる。妊婦健診は既に国内の全自治体で公費負担となっている。

 都福祉局の砂賀満帆担当課長は「行政が産後うつなどのリスクを把握しやすくなり、母子への支援につなげる意義は大きい」と強調する。

葛飾区「産婦健診を通じて行政が早期にフォロー」

 都内で先行して2021年10月に産婦健診の公費負担を始めた葛飾区では毎年度、受診者の6〜7%について区に連絡が入り、産後ケアなどの支援につながっている。区青戸保健センターの柳池三智子所長は「心身が不安定になる時期に、本人からのSOSがなくても、産婦健診を通じて行政が早期にフォローできている」と効果を実感する。

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窓口で紹介している産婦健診の案内=東京都葛飾区で(奥野斐撮影)

 区では議会や地元医師会からの要望を受け、公費負担を検討。実施に当たり、区内や近隣の精神科の医療機関にも事業の説明や協力を依頼するなどした。計2回、1回当たり5500円を上限に助成し、2025年度予算は1356万円。2024年度は出産2週間後に受診した人は12.4%、1カ月後に受診した人は68.1%(ともに対出生数)だった。

 健診では産婦にメンタルヘルスアンケートをする。個別の対応が必要とみられる場合は、医療機関が区の保健センターに連絡する。区の保健師らが電話や訪問で状況を把握し、育児相談や産後ケアなどの支援につなげる。

 以前は、区が最初に母子と接する機会は、生後4カ月までの乳児宅を訪ねる「赤ちゃん訪問」が主だったが、産婦健診の導入で、より早く関われるようになった。赤ちゃん訪問でのメンタルヘルスアンケートで対応が必要なケースも減ったとして、区は「効果的にスクリーニングできている」とする。

元記事:東京新聞デジタル 2026年2月13日

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