少子化対策に失敗した安倍政権 消えた目標「1億人を維持」…人口減前提の社会像は?
晩婚化・未婚化を止められず
新たな推計によると、昨年に初めて80万人を下回った出生数(外国人含む)は2043年に70万人割れ、2052年に60万人割れと減少を続け、2070年に50万人に落ち込む。同年の人口は約8700万人で、20年と比べて日本社会は約7割の規模に縮小する。
この10年間、政府が少子化対策を放置していたわけではない。
2012年に発足した安倍政権は「人口減少を食い止め、維持する」との目標を立てた。2014、2015年の経済財政運営の基本指針「骨太の方針」には「50年後にも人口1億人程度」と明記。待機児童解消のための保育所増設や、幼児教育・保育無償化などの対策を実行した。出生動向基本調査などに基づき、出産を望む人たちの収入面や将来の安心などの条件が整えば、もっと出生率は上がるという「希望出生率1.8」を打ち出し、実現を目指した。
だが、少子化の要因である晩婚化や未婚化を止められず、最新のデータで再計算した希望出生率は1.6に低下。子どもを産み育てたいという「希望」すら失われかねないのが現実で、結果的に対策は失敗に終わった。1億人維持の目標は2018年の骨太で消えた。
岸田政権は3月、児童手当拡充など政策の柱を盛り込んだ少子化対策のたたき台(試案)をまとめ、6月には具体化した大枠を示す予定。大正大の小峰隆夫客員教授は「『1億人』などの目標は破綻している。目標はあった方がいいが、人口は減るものだと考えた上で、少子化スピードを緩めることを目指すべきだ」と唱える。
外国人は国際的な獲得競争に
今回の推計は、現在は総人口に占める割合が2%台にとどまる外国人が増え続け、2066年には10%に達するという数値をはじき出したのも特徴だ。少子化による人口減を下支えする構造になっている。
推計には近年の増加率の上昇が反映されているが、人口問題に詳しい日本総研の藤波匠氏は「労働力としての外国人は国際的な獲得競争になっている。日本に来てくれるのか。処遇改善などが必要だ」と指摘。「10人に1人が外国人という社会は、かなり議論を呼ぶ数字だ」とも話した。
少子高齢化は加速度的に進む。子どもだけでなく、日本経済や社会保障制度の担い手である15~64歳の生産年齢人口も減っていく。外国人の受け入れを含め、どんな社会を目指し、手を打っていくのか。少子化対策にとどまらず、議論は待ったなしだ。
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