〈あべ弘士 子どもがおとなになる間〉vol.8 動物園だからわかること、伝えられることがある

子育て世代がつながる

 飼育員を経験し、動物をテーマに絵・絵本を描き続けています。そこで今回は「動物園」について、お話をしたいと思います。

 動物園では、仕事・経験を通して、野生では分かりにくい情報を得られるということがあります。私の旭山動物園時代、それを実感するケースがいくつかありました。


〈前回はこちら〉vol.7 子どもたちのすごい質問…くわああ、やられた!


 例えば、フクロウの一種、コノハズクの鳴き声のこと。コノハズクは夜になると、「ブッポウソウ(仏法僧)」って鳴くことが知られています。フクロウの中では小さいけれど、その声はとても大きく響きます。旭川郊外の森には 春、繁殖期にやってきて、そのすてきな声を耳にします。

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 そのコノハズクについて、鳥の研究者から「あべさん、コノハズクって雄も雌も鳴くの?」って聞かれたことがありました。雄はテリトリーソングとして鳴くことは知られているけれど、雌も鳴いているのかどうか野生では分からないと。動物園では雄と雌を識別し、個別のケージで飼っているので、観察しました。雌も同じように鳴いていたと思います。

 北海道にすむエゾユキウサギ。冬は真っ白な毛が、春になるとだんだんと茶色くなってきて、真夏は焦げ茶色になります。

 ある動物カメラマンからは「毛替わりのメカニズムが分からないんだけど」と尋ねられました。これも毎日ケージを掃除している飼育係は分かるんですね。冬から春にかけて茶色になる過程では、毛が抜けるので、ふわっとした毛がたくさん落ちている。一方で、茶から白になる秋には毛は抜けずに白化するんです。

 後に東京・上野動物園の園長になる小宮輝之さんは、多摩動物公園の飼育員時代、その白化現象が起きる条件を調べました。光が入らないケージを作り、年間の日照時間を逆転させた。すると、真夏なのにノウサギの毛は真っ白になったんです。太陽の光は動物の生命には欠かすことのできない大切なものです。

 こんなふうに野外のフィールドでは分からないことを研究できるのが動物園の面白さ。野生動物に向き合う仕事はいろいろあるけれど、動物園では野生動物に関するデータや知識を得ることができ、そして、それをまた野生動物の保全に役立てることができる。そのことが飼育員として働く僕の誇りでした。

 もう一つ、動物園の重要な役割は教育です。飼育管理をしながら、市民に動物や動物が置かれた現状などを伝えていく「ズーエデュケーション」が大切。子どもたちや子育てする親たちに動物からのメッセージを伝えることで、私たち動物であるヒトがどう進んでいくべきかを考えてほしいのです。(文と絵・あべ弘士)

 動物の命を描いた多くの作品を手がけている絵本作家のあべ弘士さんから、子育て中の人たちや子どもにかかわる人たちへのメッセージを月1回、お届けします。

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