〈あべ弘士 子どもがおとなになる間〉vol.10 何より大切なのは「遊ぶ」ことです

子育て世代がつながる

 動物にとって「遊び」とはなんだろう。哺乳動物の場合、子ども時代はすべてが遊びです。遊びを通して、生きる術を身に付けていく。そのときに、人間のようにすぐに親が手出ししたり、指導したりしないんですね。逆に動物たちは大人になったらほとんど遊ばない。生きることに真剣勝負です。

 人間の社会では、「遊び」は負のイメージで受け止められがちです。そして、すぐ指導してしまう。「遊んでばかりいないで勉強しなさい」「勉強してから遊びなさい」と遊びを下に見る。でも、人間の子どもたちにとっても自由に遊ぶということは何にも代えがたい大切なものです。動物の子どもといっしょで、遊びが自分とまわりを育てていく。


〈前回はこちら〉vol.9 ひらがなで伝えるということ


 僕は定期的に子どもたちと「動物句会」という俳句をつくる会で遊んでいます。もう8年も春・夏・秋・冬計30回以上、続いています。すごく楽しいですよ。僕のギャラリーに集合して、公園や動物園や山にいって、散策したりお弁当を食べたりしながら、大人も子どもも俳句のネタを探します。

 ギャラリーに戻ると、みんなで句を作って披露。「動物句会」なので動物を観察した句や、動物になっての句をつくるんです。気に入った句を選んでシールを貼っていきます。子どもたちが素晴らしい、いい句をつくるんですね。遊びながら俳句をつくる。小林一茶はぜったいそうだったはず。

 僕は子どものころたくさん遊んで大人になった。動物やスポーツを通して知り合った古くからの友人たちもみんな同じです。

 一緒に旭山動物園をつくってきた元園長の小菅正夫さん。彼が子どもたちの質問に答えるラジオ番組なんかは本当にすごい。どんな球(質問)も面白がりながら打ち返す(答える)。長年ゴリラの研究をしてきた山極寿一さんもそう。彼はゴリラに「遊び」を習ってる。うらやましい。山極さんとのコンビで「ゴリラとあそんだよ」という絵本を出して、子どもに伝えてる。

 そしてまだまだたくさんの「遊び友だち」がいる。「遊び」の大人たちが人間の子どもたちにたのしく「遊び」を伝えていきたいと思っている。

 さて、連載は今回でおしまいですが最後に一言…

あべ弘士さんの直筆メッセージ

 私のアトリエの窓からみえる景色は、ぜーんぶ“まっ白”。雪に埋もれて、とても静かだ。動くものはだーれもいない。と、思うでしょう。ところが、たくさんの鳥や獣が動き回ってる。厳しい冬なのできっと楽しくはないだろう。生きるために真剣そのものなのです。

 あっ、アカゲラがコツコツ木をたたいて虫を探してる。あっ、キタキツネ。ふさふさの冬毛があたたかそう。あっ、ユキウサギ、エゾリス、クロテン…みんな雪の中、走ってる。動物は冬も、春、夏、秋も生きて、死んで、命をつないでる。動物に学び、自然に生きよう。(絵と文・あべ弘士)

 絵本作家あべ弘士さんから子育て中の人たちや子どもにかかわる人たちへのメッセージをお届けしてきた連載は今回で終わります。

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