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「苦しむ子から目を背けた」野田市の小4虐待死 母に懲役2年6カ月の有罪判決 DV被害に配慮し執行猶予

  (2019年6月27日付 東京新聞朝刊)
 千葉県野田市の小学4年栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=の虐待死事件で、父親勇一郎被告(41)=傷害致死罪で起訴=による暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母親なぎさ被告(32)に対し、千葉地裁(小池健治裁判長)は26日、懲役2年6カ月、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。 
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千葉県野田市の小4女児虐待死事件の母親の判決公判で、傍聴券を求めて並ぶ人たち=千葉市中央区の千葉地裁前で

何度も救いを求められていたのに

 「夫から暴力を受けていた」と主張したなぎさ被告の責任をどう判断するかが争点となった。判決は、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害や影響を認めた上で、「心愛さんから何度も救いを求められていたのに、家族関係の存続のため、苦しむ子どもから目を背けた」と指摘した。

 一方、家庭で勇一郎被告が支配的な立場だったとし「周囲に相談相手もなく孤立し、夫の意向にあらがうのは相当難しかったことは否定できない」と述べた。

父親の審理は裁判員裁判で

 判決によると、なぎさ被告は1月22~24日、自宅で勇一郎被告が十分な睡眠や食事を与えないまま心愛さんを長時間立たせ、冷水を浴びせるなどの暴行を止めず、手助けした。同日夜、心愛さんは衰弱状態で暴行を受けたことで、浴室で死亡した。

 勇一郎被告は、虐待行為で心愛さんを死なせたなどとして起訴された。逮捕直後は「しつけだった」と供述していたが、その後は黙秘。裁判員裁判で審理される予定で、公判期日は未定。

裁判長の説諭に涙「社会の中でしっかり振り返って」

 「頼るべきはあなたしかいなかった。心愛ちゃんにしたことを社会の中でしっかりと振り返ってほしい」

 判決言い渡し後、なぎさ被告は小池健治裁判長の説諭を聞きながら顔を紅潮させ、退廷時は目に涙を浮かべていた。

 公判を傍聴した千葉県茂原市のアルバイトの男性(36)は、父親が酒を飲んで包丁を振り回すなど母親に暴行する姿を見て育ち、自身の母親となぎさ被告が重なって見えたという。

 男性は「母は父から逃げることができたが、なぎさ被告はあまりにも弱々しく見えた。逃げることができなかったと思う」と理解を示す。一方で、「自分が同じ立場だったら命を懸けて子どもを守る」とも話した。

 今回の事件では、心愛さんを一時保護した県柏児童相談所が、なぎさ被告から夫のDV被害を確認したのに、支援機関への連絡を怠るなど関係機関の連携不足が浮き彫りになった。また昨年3月に東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)=が死亡するなど、悲惨な虐待は後を絶たない。

 事件を教訓に、今月19日に成立した改正児童虐待防止法と改正児童福祉法には、児相などによる介入の壁になりがちだった「しつけ名目の体罰」の禁止が盛り込まれた。(山口登史、黒籔香織)

【解説】執行猶予5年 DV被害者の側面に配慮

 判決は、栗原なぎさ被告の母親としての責任を重視し、夫の勇一郎被告に迎合して心愛さんを心身共に苦しめたと厳しく指摘。一方、勇一郎被告の強い支配下にあったとして、DV被害者の側面もあることを配慮した。

 なぎさ被告は、勇一郎被告の虐待を止めた際に自らも暴行を受け、「止めても無駄」と考えるようになったという。暴行や暴言など精神的暴力を受けるDV被害者は恐怖や無力感が常態化し、冷静な判断力を失うことが珍しくない。

 勇一郎被告の公判は始まっていないが、判決は同被告の心愛さんへの虐待を認定した。倒れるまでスクワットをさせ、何日も食事を取らせず、真冬に冷水をかけて放置したとし、「非人間的な行為をためらいなく続け、虐待そのものが目的化していた」と指摘した。

 しかし、なぜ暴力の矛先が心愛さんに向かったのか、不明な点は多い。勇一郎被告が自身の裁判員裁判で何を語るのか、注目される。(太田理英子)

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年6月27日