親にも子にも冷たい「子育て罰」なくす1票を コロナ禍の衆院選、子育て世代が考えたいこと

(2021年9月15日付 東京新聞夕刊)
子育て世代がつながる

日大・末冨芳教授が寄稿

 10月31日は衆議院選挙の投票日です。子育て世代のみなさんは、どの候補者・どの政党に投票するか決めていますか? 投票日を前に、教育行政学・教育財政学を専門とする日本大学の末冨芳(すえとみ・かおり)教授による寄稿を紹介します。自民党の総裁選を控えた9月15日に東京新聞で掲載した記事ですが、衆院選を前に子育て世代にもあらためて読んでいただきたい内容のため、ご本人の許可を得て「東京すくすく」にも転載します

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日大教授の末冨芳さん

子育て世帯の2割が困窮

 子育ては本来、親にとって楽しく、素晴らしいことである。

 しかし、妊娠すればマタハラを受け、多額の出産・子育て費用に対して公的支援はあまりに少ない。都会では保育園や学童保育の待機児童が解消せず、高校・大学の進学費用に親も子も苦しむ。残念ながら、日本の政治・企業・社会は親にも子にも冷たく厳しい。まるで罰を科されるような状況が長く続いている。

 菅政権でも、貧困層への給付金はあまりに遅く少額だった。令和の日本で、服や食料を買えない子育て世帯は2割いる。

高所得層には「厳罰化」

 児童手当も教育の無償化も稼ぐほど減らされる。厳しい雇用環境でも頑張って働く中所得層は、夫婦合算年収590万円で私立高校無償化が切られ、910万円で公立高校の無償化も切られる。大学・専修学校進学は、稼ぐ家庭には何の支援もない。

 高所得層に至っては、来年秋から児童手当をゼロにする方針が菅政権のもとで決まった。高所得層の子どもから奪った児童手当を待機児童財源に充てることが、菅総理が力を入れる「少子化対策」なのだという。

 少子化対策をきちんと進めるためには、低・中・高所得層のすべてが子どもを産み育てやすくする政策が必要なのに、菅総理も歴代自民党政権と同様に、親子に冷たい「子育て罰」政権であり、なおかつ高所得層の児童手当の廃止という点で「子育て罰の厳罰化」をしたといってもいい。

コロナ休校で母親が失職

 昨年2月末、突如として安倍前総理が全国一斉休校を宣言した。これにより職を失ったのは主に女性、とくに母親だった。厳しい状況に置かれた男性保護者も少なくない。コロナ禍の中で子ども、若者の自殺者数は過去最悪となっている。心身の深刻なストレス、家庭内での暴力や性虐待に苦しむ子ども、若者も一斉休校で増加した。

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一時「コロナ対策」として多くの公園の遊具が使用禁止となり、行き場を失った親子も多かった

 いまの臨時休校でも同様の事態が起きている。低所得子育て世帯への給付金や保護者の休業補償を菅政権は出し渋ったまま、総裁選の政局で親子への「子育て罰」を放置している。

 状況を変えるには、子育て世代こそ投票に行き「子育て罰」をなくす政党・候補者に投票するしかない。

若者の投票率が低い理由

 若い世代ほど投票率が低いのは、選挙で社会が変わる、若い世代に有利な政策が実現するなどの経験がないからだと考えている。社会を理解する年代になってから安倍政権しか知らず、選挙で政治の変化が期待できないなら、投票には行かないだろう。

 学校で教わる「死に票」という概念も、無駄が嫌い、あるいは勝ち馬に乗りたい人が多い日本では投票率下落の要因かもしれない。

 しかし、選挙コンサルが投票行動の緻密な分析を各政党に提供している現代では、「死に票」などない。子育て支援や若者支援に手厚い政党・候補者に若い世代が多く投票すれば、落選候補への票であっても、政党には脅威となる。

この数値と政策を見よう

 この記事を含め、選挙の争点はマスコミ・政党が作るものだというイメージがある。しかし、争点は有権者自身が作ることが重要である。気になる候補者がいればSNSや事務所HPの問い合わせから、具体策を確認できる。こうした「声」を多くの若い世代・子育て世代が発していけば、候補者は子育て支援を重視せざるを得なくなる。

 政治家に「子育て罰」をなくさせるためには、以下の点を重視するとよいだろう。

  • 児童手当、教育の無償化などについて金額・所得制限・財源などの具体的な数値が示されている。
  • 選挙区の候補であれば、待機児童や、教育の充実のための投資政策が具体的に書き込まれている。

 「子供は国の宝」「女性が輝く日本に」などあいまいなスローガンだけの候補者には、「子育て罰」はなくせない。子育て世代の1票こそ、この国を変える原動力となる。

末冨芳(すえとみ・かおり)

 日本大教授。専門は教育行政学・教育財政学。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年9月16日

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コメント

  • 匿名 より:

    結果を見ると現状で良いと思う方が多いんでしょうか。女性やジェンダーの問題に本気で取り組もうとしている方が落選して、意気消沈しています。

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