無料で離乳食をどうぞ「赤ちゃん食堂」 レシピも悩みも共有 孤立しがちな親子の居場所に

「赤ちゃん食堂」で赤ちゃんに離乳食を食べさせる母親たち=神奈川県寒川町で
他の子と触れ合い 親はリフレッシュ
昨年11月下旬、寒川町の助産院で開かれた赤ちゃん食堂「ままな」。6組の母子がにぎやかに話をしながら、わが子に離乳食を食べさせていた。
その中の一人、町内の石渡絵里香さん(36)は、1歳3カ月の長男脩真(しゅうま)ちゃんが離乳食を食べずに悩んでいた。以前来た時、出された食事を完食した息子に驚き、レシピなどのアドバイスを受けた。「この子にとっては他の子と触れ合う貴重な場所。私は子どもから少し離れてリフレッシュできる」と喜ぶ。
神奈川県藤沢市の小林美咲さん(29)は7カ月の長女佑愛(ゆうあ)ちゃんと参加。「近くに頼れる人がおらず、自分の育児がこれでいいのかも分からず閉じこもっていた」と打ち明ける。「ここに来ると、他のお母さんやスタッフと話して育児の大変さを共有でき、頑張るパワーをもらえる」
子ども食堂ではカバーできないニーズ
ままなを企画したのは、助産師の菊地愛美さん(35)。以前働いていた病院で、コロナ禍で里帰り出産もできず、ネット情報に頼り不安を募らせてうつ状態になる母親を多く見てきた。自身も子育てで苦労した経験があり、孤立しがちな母子の居場所や支援の場をつくろうと、分娩(ぶんべん)を行わない助産院の開設を思い立ち、仲間の母親と2021年初めから準備を始めた。
地元の子育て家庭825世帯にアンケートすると、「離乳食で困っている」「体を休める時間が欲しい」などの声が多く出た。「一般の子ども食堂ではカバーできないニーズがある」と、貧困世帯も利用対象に含めた離乳食期の赤ちゃん食堂を月2回、6組限定で開くことを決めた。
親もランチ ベビー服のリユースまで
ままなでは、母親らも離乳食を食べさせた後に400円でランチを楽しみ、助産師や先輩ママに相談もできる。ベビー服・用品のリユースも。地域の農家から野菜を、企業から食材の提供を受けるなど、支援の輪も広がっている。
赤ちゃん食堂は、愛知県岡崎市でも昨年7月に誕生。沖縄料理店「ちばる食堂」で2カ月に1回開かれている。乳児に手作り離乳食を無料で提供。親には300円で軽食を出している。運営法人「福祉相談所オハナ」の代表、市川貴章さん(41)は「お母さん同士で育児の悩みなどを話せる場所になっている」と言う。
不十分な「産後ケア事業」 行政に期待
改正母子保健法が施行された2021年4月から、出産後の母親の心身のケアや育児相談、栄養指導を助産師などが行う「産後ケア事業」が市区町村の努力義務になった。2020年度には全体の7割近い1158市区町村が実施していたが、委託先や予算確保に苦労する自治体も多いようだ。
厚生労働省が2020年6月に行った調査では、自己負担額のばらつきが大きく、里帰り出産での利用は認めない自治体が大半だった。別の調査では、産科や助産所がなく隣の自治体の施設に委託する例もあり、利用者から「車で1時間もかかるような場所へは行けない」との声もあった。
日本助産師会会長で上智大総合人間科学部の島田真理恵教授(63)は「離乳食がストレスになる母親は多く、赤ちゃん食堂はニーズに合っている。実績を積み上げ、行政がその必要性を把握して事業化するようになったらいい」と期待する。
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