〈坂本美雨さんの子育て日記〉60・いい子に育てたなぁ!と言われ、泣きそうになる

(2022年6月10日付 東京新聞朝刊)
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ケンジ兄貴の荒々しい遊びにも大笑い

坂本美雨さんの子育て日記

大きな木のような夫婦と再会

 先日、大好きな「家族」と再会した。娘と一緒に熊本へ。ずっと恋しく思っていた、のはら一家と久しぶりにゆっくり過ごした。おいしいお米やスイカを育てる「のはら農研塾」を営むケンジ兄貴とゆみちゃん夫妻は、どっしりと懐が深く、チャーミングな人柄でありつつも、自然と向き合って生きている人のすごみを持っている。

 どことなく二人は私の中で、熊本に行くたびに連れていってもらう樹齢800年と言われている県指定天然記念物の大木「寂心さんの樟(くす)」と重なっている。この木に触れていると、大きな胸に抱かれているようで、心から安心してふにゃふにゃになっている自分に気づく。

 娘は生まれた時からケンジのお米を食べているせいか、どんなに長い間会っていなくてもケンジたちのことは忘れない(あと、転んだり痛いことがあるたびに私たちが「痛いの痛いのケンジに飛んでいけ!」と強いケンジのもとへ飛ばしているから…?)。顔を合わせると一瞬で心を許し、2人で転げ回っている。

 なかなか荒々しい遊びにもゲラゲラ笑い、本当に楽しそうで、こんなに子どもっぽい姿はひさしぶりに見た、と夢中でカメラをむけてしまう。帰りがけにケンジがコソッと言ってくれた「よーくいい子に育てたなぁ!」という言葉に、樟の幹に触れているような安堵を感じ、泣きそうになってしまった。

連載6年 娘が手にとれる本に

 さて、今月で60回となるこの連載は、2016年5月から始まり、丸6年となりました。毎月、書きとめたいことはたくさんあるのだけど、目まぐるしく日々は過ぎていく。その中で、どうしても忘れられないシーンや、娘の言葉、心の葛藤をここに残していけるのは本当にありがたく思っています。

 いつか、娘が手にとれる形にしたいなと思ってはいたのですが、小学校入学を一つの節目に、いったんこれまでの連載をまとめて書籍化することになりました。ここ数カ月ずっと頭の片隅にあり、眠る娘の隣でパソコンとにらめっこしたり、ホテルにこもって朝まで書いてみたり、思いがあふれて涙したり、気持ちの余裕がなくなって友人と争いそうになったり(笑)。そのくらいこの本のことで頭と心がいっぱいでした。タイトルは「ただ、一緒に生きている」。22日に巣立っていきます。飛んでいった先で、良い出合いがありますように!(ミュージシャン)

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