コロナ休校のストレス、どう回復? 埼玉大・高橋准教授インタビュー 「子どもを大切にする学習環境を」

(2020年6月26日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 埼玉県内各地で学校が再開して3週間となった。授業や部活も始まり、通常の学校生活に戻りつつあるが、新型コロナウイルスの感染拡大による3カ月に及んだ休校の影響で、ストレスを抱えている子どももいるという。教育行政や学校現場に詳しい埼玉大教育学部の高橋哲准教授(教育法学)に、どんな対応が必要か聞いた。
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学校は「子どものストレス一つ一つに応える対応が求められる」と指摘する高橋准教授=さいたま市桜区の埼玉大で

一人一人にかけられる時間を増やすことが重要

 -長い休校の影響は。

 友達に会えなかったことは大きなストレスだった。子どもは、子ども同士の関係の中で育っていく。家から出るなと言われて遊びを奪われ、子どもらしく過ごせなかった影響も大きい。

 また、1日の中で給食が唯一、栄養バランスの整った食事を取る機会だという子どもにとっては満足な食事ができない期間だった。日中も親と顔を合わせているために虐待を受けた子どももいる。いずれもコロナ禍の前からの問題だが、休校の長期化で、より深刻になった面がある。

 -学校に求められる対応は。

 スムーズに学校再開を進めるには、まず、子どもが子どもらしくいられる時間を回復することが一番大事だ。ストレスへの対応が求められ、先生がいかに一人一人にかけられる時間を増やせるかが重要になる。

 例えば、分散登校が先生たちに好評というニュースがあった。一度にみる児童生徒の数が少ないため、いつもより一人一人と向き合えて、声を掛けやすい。子どもにとっても楽しかったという。

分散登校はこれまでのコストカット優先の結果

 -教師は負担が増えそうだ。

 多忙化が加速している。学校再開後、分散登校中は、同じ内容の授業を二度行ったり、慣れないオンライン授業をやったりした。さらに感染症対策。子どもたちの登校前と下校後に先生たちが消毒や清掃もしている。先生たちはぎりぎりのところで教育活動を継続している。

 加えて、県が実施する学力テスト「県学力・学習状況調査」は、余計なプレッシャーを先生たちにかけ、大きな問題だと考える。現場は実施に向けて準備や対策をしなければならず、貴重な授業日数の浪費につながる。何より、教育が子どもに合わせるのではなく、教える側の都合優先になってしまう。

 -負担を減らすには。

 考えてほしいのは、なぜ分散登校にしなければならなかったか。人にも施設にも余裕がないからだ。

 文部科学省は、3密を避けるために1~2メートル机の間隔を空けるよう通知したが、余裕を確保するためクラスを2つに分けられるほど空き教室はなく、担当する先生も不足している。これまでの教育政策では、学校の統廃合を進めて大規模化し、国際的にみて多すぎる1クラスの定員も減らさなかった。コストカットを優先させてきたことが、今回のような事態を生んでいる。

 子どもを大切にする学校環境は、感染症にも強い学校になる。教育予算や教職員を増やし、できる限り少人数の集団にして先生が子どもたち一人一人に向き合う時間を持てる環境をつくる。子ども同士や、子どもと先生たちの関係性を回復することが重要だ。

高橋准(たかはし・さとし)

 1978年、さいたま市生まれ。2008年に東北大で博士号(教育学)を取得し、11年から現職。著書に「現代米国の教員団体と教育労働法制改革」(風間書房)など。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年6月26日

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