個性を社会で生かすために 子どもの創造力を伸ばす「スコップ・スクール」 講師は第一線のプロ

子育て世代がつながる
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スコップ・スクールのオンライン講座に参加する子どもたち

 40年前「社会不適応児」と言われた自分が、自分らしさを価値に変えて社会で生かされているように、多様な子どもたちの個性を引き出す教育を提供したい。長年、広告クリエイティブの最前線で活躍してきた平石洋介さん(51)らが、子どもたちの一人一人の独創性や、創造力を引き出すプログラムを提供する「スコップ・スクール」を展開している。自身の子ども時代の原体験と今の仕事がつながっている、という平石さんに、目指す教育のあり方について話を聞いた。

米国と日本 小学校で感じた違和感

 「僕、頭に27針の縫い跡があるんですよ」。3歳のころ、近所のスーパーでエスカレーターの手すりベルトを見ているうちに、どこから来て、どこへ行くんだろう、と不思議に思った平石さん。エスカレーターをのぞき込んでしまい、引き込まれて大けがをしたのだという。両親の知らないうちに、バスに乗って1人で数キロ先まで行ってしまったことも。「多動ですよね。今だったら発達障害と診断されたのだと思うんですが、親はとても心配していました」

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平石洋介さん

 だが、父親の転勤で小学校1年生のときに渡米。3年間暮らしたニューヨークの現地学校では、「むしろキャラが薄かった」。周りにはさらに上手の落ち着きのない子もいて、自分を「不適応」と感じることもなく、楽しく学校生活を送ることができた。でも、3年生で日本に戻ってくると、ニューヨークの学校とのギャップに、さらに違和感が大きくなった。「集団登下校とか、時間割とか、みんなで一斉に同じものを食べる給食とか。どれもこれもなんで必要なんだろう?と思っていた」

個性を「価値」に変えてもらえれば

 結局、両親のすすめで4年生と5年生の2年間は、病気がちの子などが健康を取り戻すために全寮制で暮らし、学ぶ教育施設で過ごした。生活の時間はきっちりと決められていて、親の面会も月1回。「かわいそう、と思われるかもしれませんが、僕らはすごく楽しかった」。ゲームもお金もない中で、毎日、何をして過ごすか自分たち自身で考える。「人生であのころが、一番頭を使っていたかも(笑)。ここでの体験が、『生き方』について考え抜くことや、自分中心ではなく、仲間の良いところに目を向けて互いに高め合うという視点を持つ原点になった」

写真 PCに向かう子ども

プロの知恵や考え方を学ぶ子ども

 

 平石さんは大学を卒業し、広告大手の電通へ。コピーライターとして数々の広告を手がけてきた。「僕は運良く、何か1つユニークネスがあればそれを価値にしてもらえる会社で働くことができた」。だが、50歳を前に、「自分はラッキーだったけれど、きっと今も多くの子どもたちが、個性を価値に変えてもらえずに、チャンスを失っているのでは」と気になり始めた。これまでの仕事で培ったものを活かして、次世代を育てる仕事に取り組みたいと考え、社内で事業の提案をしたという。

電通・TBS・エデュソルが共同設立

 スコップ・スクールは、電通とTBS、教育事業のエデュソルの3社が共同で設立したスコップが運営。従来重視されてきたテストや偏差値で測ることができる認知能力に加え、非認知能力も重視し、クリエーション(うみだす)、コミュニケーション(つなげる)、コンプリート(やりぬく)の3つの力で構成される「実践的創造力」を育てることを目指す。最前線で活躍するプロを講師に、社会課題の解決を考えたり、アートやデザイン、プログラミングなどコース別にオリジナルのプログラムを提供。どのコースでも、知識を楽しく身につけながら、参加する子ども同士が議論しながら多様な意見を認め合う、実際に手や頭を動かして何かを形にする、アイデアを融合して、さらに発展させるといったサイクルを重視する。

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身体性を使ってデジタル音楽を作る講座に参加する子どもたち

 

 短期コースもあり、最新テクノロジーを使い、体の動きを写し取って音楽をつくり、演奏する講座や、「世界で使えるサインを作ろう」をテーマに、言語ではなく、デザインで伝えたいことを表現するプログラムなどを開催。昨年秋には、青森の「ねぶた」を制作するねぶた師とともに、歴史文化を学んだり、面をつくったりして好評だった。「僕の原体験から始まったビジョンに、多くの人たちが賛同、協力してくれたことで、事業としてスタートすることができた」

今の教育でチャンスを失っている子に

 オンラインプログラムを受けるためのデジタル環境があり、受講料を払うことができる家庭向けの「エリート教育では」と指摘されたこともある。「今の時点では、ある程度限られた家庭に参加してもらっているが、少人数からでも実績を積み重ねたい。ゴール設定は、質の高いプログラムをすべての子どもたちに届けることです」。企業のSDGsへの取り組みも盛んになっており、こうした教育事業に関心を寄せる協力企業を見つけていきたいという。

 「子どもたちの反応は予想以上。今の教育の枠組みではチャンスを失っている子にも、社会で活躍するプロの創造力を提供して、僕があのころ感じたよりもはるかにわくわくする時間を提供したい。子どもを子ども扱いしない、ということを合言葉にしています」

すくすくボイス

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