子どもの疑問に研究者がYouTubeで真剣回答「こども科学インターネット相談」 夏休みの名物番組の”穴埋め”が好評、2学期も続きます

小松田健一 (2021年9月10日付 東京新聞夕刊)
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村田さんが中心となって立ち上げた「夏休みこども科学インターネット相談」のサイト

 YouTubeで各分野の研究者が子どもたちから寄せられた疑問に答える「夏休みこども科学インターネット相談」が話題を集めている。東京五輪のため、NHKラジオの名物番組「子ども科学電話相談」の放送は今夏1回だけ。「代わりとなる企画を」と米国在住の日本人研究者が呼び掛けて始まった。2学期以降も継続する。

米国在住の考古学者村田悟さんが企画 各界の研究者40人が参加

 発案者は米国ニューメキシコ州で、古代マヤ文明を研究する考古学者村田悟さん(48)。ツイッターで「Dr. RawheaD」のハンドルネームはフォロワー数約1万9000の人気アカウントだ。7月下旬にNHKの番組事情を知った際「穴埋めができないか」と、ツイッターを通じ協力を呼び掛け各界の研究者約40人が参加することに。

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米国ニューメキシコ州の自宅でオンライン取材に応じ「クオリティーの高い企画にしたい」と意気込みを語る村田悟さん

 質問は「夏休みこども科学インターネット相談」のサイトから受け付ける。原則としてスマートフォンの音声録音アプリを使うよう求めている。

 回答は質問を受けた後に研究者らが写真やイラストを使いながら行う。YouTubeのため何度でも視聴可能だ。

鋭い質問が続々「宇宙に寿命はあるの」「ドーナツの穴は1個か2個か」

 機械学習や人工知能(AI)を専門とする名古屋大大学院工学研究科の藤原幸一准教授は「研究者は自分の研究内容に興味を持ってもらいたい気持ちが強い。子どもであれば、将来一緒に研究できるかもしれない」との思いで加わった。

 いまは、SFなどにあるサイボーグの動きを速くする「加速装置」は実現できるか、という質問に取り組んでいる。「1人では調べきれず、他の先生と話し合った。子どもは見ている世界が違う」と舌を巻く。

子どもたちから寄せられた主な質問

  • 世界にはなぜいろいろな言葉があるの?
  • ムンクの「叫び」の男はなんて叫んでいるの?
  • 古代エジプト文字の読み方が知りたい
  • 各文明で大切だった宝石は?
  • 宇宙に寿命はあるの?
  • 雷はどうして落ちるの?
  • 土星の夕焼けは何色?
  • 魚はどうして水中で生きられるの?
  • ドーナツの穴は1個なのか2個なのか?

 鋭い質問も少なくない。村田さんは5歳男児の「ドーナツの穴は1個なのか、2個なのか。ぼくは上から見て1個、下から見て1個、合わせて2個だと思う」という問いに「頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた」と明かす。

 これには長崎大の金谷一朗教授(情報科学)らが2人がかりで回答。金谷教授は「自分も気が付かなかった。とてもいい質問」と絶賛。トンネルの穴に例えて「両側から掘ると穴は2つだが、出来上がった穴は1つ。数え方は違うがどちらも正解」と説明した。

「元祖をしのぐクオリティーに」 スポンサーも募集中です

 質問者の最年少は2歳、最年長は12歳。これまでに寄せられた約100問のうち、23問について、計13回の動画にまとめて公開した。

 村田さんは「『元祖』をしのぐクオリティーにしたい」と意気込む。ただ、基本的には研究者の善意が支えている。長く続けるには機材の充実や報酬支払いに資金が必要でスポンサーを募っている。

 NHKによると、夏休み子ども科学電話相談は1984年に始まった。2019年に毎週日曜放送で「子ども科学電話相談」としてレギュラー化。今夏は五輪や高校野球中継と重ならない8月8日のみ放送があった。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年9月10日

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