不合理で時代錯誤な「校則」は、民主主義のプロセスで子どもたちに解決させるべき

山本克也 (2022年2月1日付 東京新聞朝刊)

武庫川女子大・大津尚志准教授に聞く「校則の歴史と問題点」

 合理性のない規則を強いて、時代錯誤、人権侵害ともいわれてきた校則。昨年6月には文部科学省が社会の変化を踏まえた見直しを求める通知を出し、生徒会主体で規定の改正に乗り出す学校も出てきた。そもそも校則はどんな変遷を経て生まれ、今後、どう運用していけばいいのか、「校則を考える」の著書もある武庫川女子大(兵庫県西宮市)の学校教育センター准教授、大津尚志さん=写真=に聞いた。

写真 武庫川女子大 学校教育センターの大津尚志さん

戦後になっても「学校がつくるもの」

 -校則はいつごろ生まれ、どんな内容だったのでしょうか。

 江戸時代の寺子屋にも掟書(おきてがき)のようなものがありましたが一般的に校則の原型といわれるのは、1873年に当時の文部省が出した「小学生徒心得」です。明治政府使節団が視察した欧米の学校でのルールなどを参考に、日本の事情を踏まえてつくられました。

 17項目あり、「参校は受業時限十分前」「自己の意を述べんと欲する時は手を上げて」といった校内での決まり事のほか、「朝早く起き顔と手を洗ひ口を漱(すす)ぎ髪を掻(か)き父母に礼を述べ」など校外のことも示されていました。教師が「有徳者」であり、絶対であることを示す「教師の定むる所の法は一切論ず可(べ)からず」との文言もあります。儒教道徳の影響が強く、学ぶことと道徳性を高めることが一体であるかのように考えられていました。

 -太平洋戦争を経て、変化はありましたか。

 憲法で国民主権がうたわれ、「民主主義」という教科書も発行されました。しかし校則が民主的に決められたかというと、そうはならなかった。生徒心得には、天皇崇拝に関する文言に代わって、「民主」「自主・自律」といった言葉が登場するようになりましたが、心得は学校の側がつくるものという意識でした。1960年代後半の「高校紛争」以降、一部の高校で制服自由化などが進みましたが、1970年代に入ると、非行防止の観点から服装や頭髪などに細かい規則を設ける動きが相次ぎました。

細かい規定を守らせるのは、無駄です

 -現在の校則は何が問題ですか。

 校則違反の生徒の顔写真が卒業アルバムに掲載されなかった問題(1988年)や、生まれつき髪が茶色だった大阪府の高校生が黒に染めることを強要された問題(2017年に提訴)などを経て、全国的に見直され、現在も進行中です。

 それでも今なお「下着の色は白」「前髪は眉にかからない」といった不合理な規則がみられます。「華美でない」「高校生らしい」といった、判断基準があいまいな字句もある。

 教員側にしても、働き方改革が叫ばれる中、校則を理由に検査などで細かい規定を守らせるのは時間と労力の無駄ではないでしょうか。

「校則を変える規定」ないことが多い

 -校則は必要ですか。

 学校が学ぶ場である以上、環境を担保し、周囲を不快にさせないという意味では一定のルールは必要です。ただ、非行は近年減っており、校則を守らせることが目的化している面がある。多様性が叫ばれる中、トランスジェンダーや外国にルーツを持つ生徒などへの配慮も重要です。

 決まりは人間がつくる以上、完全なものはありません。校則を改めて学校が再び荒れるようなら、元に戻せばいいだけ。そもそも、校則に関する法律はなく、決定権は校長が持っています。校則を変える規定がないことが多く、生徒たちが声を上げようとしても、教師もどうしたらよいか分からないことがあります。

 熊本市教育委員会は昨年春、すべての公立学校に対し、子どもや保護者らの意見を反映させた校則の見直しを求める指針を出しました。神戸市や高松市でも、同じような指針が出されました。

 「自分たちの課題は、自分たちが関わって解決する」。民主主義のプロセスを子どもたちに経験させるべきだと思います。

大津尚志(おおつ・たかし) 

東京大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。専門は教育学・教育課程論。日本シティズンシップ教育学会理事。著書に「校則、授業を変える生徒たち」(共著、同時代社)、「校則を考える」(晃洋書房)ほか。

元記事:中日新聞Web 2021年12月23日

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