「片耳イヤホンで自転車に乗るのはOK?」高校生に広まる噂、出どころは…ある県の10年以上前の説明だった

鈴木里奈 (2023年7月6日付 東京新聞夕刊)
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石川県警が行った自転車の交通取り締まりの様子。片耳にイヤホンをして走行する人が見られた=5月30日、金沢市片町で

 片方の耳だけにイヤホンを装着して自転車に乗る高校生をちらほら見かけた。なぜ片方だけに? 石川県警による自転車の一斉取り締まりを取材中、ふと思った疑問を解き明かそうと、取材を進めた。すると、ある県の警察の「説明」がインターネット上で独り歩きし、広がっていることが見えてきた。

道交法では「禁止」が明文化されず

 5月30日朝、金沢市片町の市道では、自転車に乗りながらワイヤレスイヤホンを一つだけしている人、片耳にコードを引っかけてイヤホンが揺れている人が次々に呼び止められ、警察官から注意を受けた。男子高校生に尋ねてみると、思わぬ答えが返ってきた。

 「片耳だけなら、周りの音が聞こえるから大丈夫という県があると聞いたことがある」

 道路交通法では、イヤホン禁止は明文化されていない。石川県公安委員会が定める道路交通法施行細則には「カーラジオを聴き、またはイヤホン、ヘッドホンを使用して音楽を聴き、安全な運転に必要な音または声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」と書かれてある。

 片耳はイヤホンをせず、周囲の音が聞こえている場合はいいのだろうか-。石川県警によると、明確に違反とはいえないが、片耳イヤホンの使用者になるべく声をかけて注意を促しているという。

Q&Aコーナーで…2014年には更新

 高校生が話した「うわさ」の出どころを探ってみると、すぐにネット上で見つかった。「県」とは、石川から300キロほど離れた神奈川県のこと。神奈川県警に調べてもらったところ、2011年9月からホームページのQ&Aコーナーに、こんな記載があったという。

 質問「運転中に片耳のイヤホンで音楽やラジオを聞くのも違反ですか?」

 回答「片耳でのイヤホンの使用は、『安全な運転に必要な音または声が聞こえない状態』とはならないため、違反となりません」

 ところが、この回答は2014年7月に更新され、次のように変わった。「イヤホンやヘッドホンの使用形態や音の大小に関係なく、安全な運転に必要な音または声が聞こえない状態であれば、違反となります」

片耳でも聴くのに集中し…危険です

 以前の回答が消えたにもかかわらず、「神奈川県では片耳イヤホンでも大丈夫らしい」という話題がネット上に残り、検索で目に留まりやすくなっているため、石川県内でも高校生に信じられているようだ。

 「指導時に同じ質問を受けたことがあり、拡大解釈されてしまっていると感じる」と、神奈川県警交通総務課の佐藤和子課長補佐はちょっと戸惑い気味。片耳イヤホンについては「音が鳴っているか立証できないため、違反にはならない」としつつ、現場で見つけた場合は石川県警と同じように指導しているという。

 ネットに残る過去の説明をうのみにして自らリスクを高める必要はない。佐藤さんは「音楽を聴くのに集中してしまうので、片耳や両耳かは関係なく好ましくない。命を守る意識を持ってほしい」と呼びかけた。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年7月6日

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  • 教師のバント says:

    繰り返しで申し訳ないが、日本の道路は自転車走行に不適である。

    1.道幅が物理的に狭い。
    2.自転車利用者の意識が車両運転手よりは歩行者寄り。
    3.自転車走行レーンの整備が進まない。
    4.自転車が危険な乗り物である(止まれば倒れる)。
    等々、様々な問題を抱えており、全国民が問題を少なからず認識しているはずである(「自分だけは大丈夫」と考える人もいるが、そのような人も他人の粗相は批判するはずだ)。

    こういうことこそ、国に改善を頑張ってもらわなければならないし、道路工事は年中やっているのだから、整備の機会は十分にあるはずである。他国の取り組みを参考にするのも良いだろう。遅々として進まない一方で、キックボード許可?さぞかし政権党議員が献金を沢山貰ったのだろう。国交省は仕事をしているのか??

    この記事では(私の感覚では)至極まっとうな内容が取り上げられている。むしろ愕然としたのは、多くの投稿者が「なぜ、私の音楽を聴く権利が侵害されなければならないのか?」という意識優先で自転車を運転していることであった。普通に運転していても危険な道路で、更に事故の危険を増やすような行為は、お願いだから止めて欲しい。私自身、自転車を轢いたり、逆に轢かれたりしたくないし、交通事故はあなただけの問題ではないのだから。

    参考文献:早川洋平(2019)交通権36:43-59.

    教師のバント 男性 50代
  • 教師のバント says:

    よく「生徒には学ぶ力があるから指導はほどほどに」という意見があるが、何か事故が起きると(例えば、記事にあるような「片耳イヤホンをしていて交通事故に遭う」場合)「学校がキチンと指導しないから事故が起きたのだ」と同一人物が怒鳴り込んでくることがある。

    学校は、交通ルールについて警察職員による講演会や自転車指導等を通じて指導を行っているし、そもそもこれは家庭の指導の範疇ではないのか。決して「事故に遭わなかったから、外の音は拾えたから、車は罰せられていないから、大丈夫」という話にはならないはずである。

    交通事故は自分が備えていても他から貰うことも珍しくない。事故の危険度を少しでも減らすために、自転車運転中のイヤホンの装着は違法と定めて欲しい。

    投稿欄を見ると、高校生ばかりでなくいい年こいた大人が「自室に戻るまで音楽を我慢できない」世の中なのか、と暗澹たる思いだ。せめて、不幸にして事故に遭っても「先生の指導不足」などと寝ぼけた台詞は夢の中に留めて頂きたい。現在の日本の公衆道徳なんて残念ながらこんなものだ。

    教師のバント 男性 50代
  • キガネムシ says:

    そもそも日本の道路は狭く自転車の走行に不適である。また多くの自転車の運転者は交通ルールすら守れず、歩行者にとっても車の運転手にとっても危険極まりない。よって、片耳イヤホンは問題外の主張である。全国一律で「イヤホン装着は違法で○円以下の罰金もしくは○年以下の懲役」にするのが良い。「まだ高校生だから」などと甘えたことを言ってはいけない。何はともあれ、安全第一である。最近は電動キックボードなるものも承認され、利権優先の我が国が悲しい。

    キガネムシ 男性 50代
  • 自転車乗りニキ says:

    今までは片耳イヤホンをしてました。パトカー横を通っても何も言われませんでした。今は骨伝導スピーカーにしてます。耳を塞がないので、大音量にしない限りは周りの音に音楽が書き消されるぐらいなのでオススメです。
    聞こえないからと大音量にすると、こめかみが刺激され痛くて音量を下げざるをえなくなります。交通量の少ない場所なら小さい音量でも音楽を楽しめます。
    骨伝導スピーカーなら違反にならないのかどうなのかってところですね。

    自転車乗りニキ 男性 30代
  • ネムネム says:

    何の運転であっても片耳というのはやめた方がいいと思います。
    前に片耳つけて運転しててもと思ってやってましたが、結局のところつけてる方の耳は聞こえにくくなるため、やめました。
    両耳が聞こえてる人が急に片耳だけでいつもと同じだけ音が拾えているのか?
    この問いに関して私はNOと思えています。音楽を聴いていれば尚更集中力が低下し事故に繋がる可能性が高まるのではないでしょうか。

    ネムネム 男性 40代

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