部活動の髪形ルール、高校生の7割が「疑問」 気分もパフォーマンスも上げるには?「部活ヘアサロン」で探ろう

 昨夏の甲子園では、優勝した慶応高校の生徒たちの自由な髪形が話題になった。一方で、部活動における「髪形ルール」に、高校生の約7割が疑問や理不尽さを感じているとの調査結果も。そんな現状について高校生と一緒に考え、試合や大会に臨む際に気分もパフォーマンスも上がる髪形を探ろうと、化粧品会社「マンダム」(本社・大阪市)が出張形式の「部活ヘアサロン」を開いている。
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ヘアメイクの講義を聞く雪谷高校女子バスケットボール部の部員たち=東京都大田区の都立雪谷高校で

都立雪谷高女子バスケ部の14人が参加

 昨年12月半ば、東京都大田区の都立雪谷高校で開かれた出張講座には女子バスケットボール部の1年生14人が参加した。

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ヘアメイクの講義を聴く雪谷高校バスケ部の部員たち

 「プレー中にポニーテールが崩れてきちゃうっていう人、いる?」。講師を務めたアスリートビューティーアドバイザー大矢美紀さん(27)の問いかけに、髪の長い部員たちがうなずく。「後頭部がたるまないようにするポイントは、髪を2回に分けて結ぶこと」。マネキンを使って見本を見せる大矢さんの手元に真剣な視線が注がれた。「まず上半分だけを結んでから、下半分を合わせて結んでみて。最初にスタイリング剤を付けておくと、より緩みにくくなるよ」

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部員たちを前に、ポニーテールの結び方を実演する講師の大矢美紀さん(左)

 接触プレーのあるバスケでは、ヘアピンを使えない。「プレー中にポニーテールが緩むのが気になる」「振り返るときに髪が顔にかかって前が見えない」。結べない長さの髪や、崩れやすいサイドや後頭部の髪をどうするかは、部員たちにとって悩みの種だ。

「なんとなく」から「こうしたい」へ

 この日の講座には、アスリートビューティーアドバイザーの花田真寿美さんがオンラインで登壇。自身も高校時代に所属するバドミントン部で「角刈り」のルールに従っていたと明かし、「今までなんとなく、周りがこうだから、とやってきたことかもしれない。でも自分らしさというのは、自分の『好き』の集まりでできる。これまでの否定ではなく、こうしたい、と言ってみて」と伝えた。

 事前のアンケートでは、8割の部員が「前髪」について回答。崩したくない、上げておでこを出したくない、大人っぽくアレンジしたい、「触角」を残したい―。前髪の両サイドを長めに伸ばして耳の前に垂らす、女子中高生にはやりの「触角」スタイルへのこだわりも強かった。

 ショートカットの琉南(るな)さん(16)は、いつもは下ろしっぱなしの前髪が目に入らないように、細いゴムを使ってアレンジしてもらった。「伸びてくると目にかかって視野が狭くなっていたけど、ヘアピンが使えないのでそのままにしていた」と話し、「これならプレーしやすそう」とはにかんだ。

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講師にヘアメイクを実践してもらう雪谷高校バスケ部の部員

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講師にヘアメイクを実践してもらう雪谷高校バスケ部の部員

 結べない肩上までの長さのくららさん(16)は「一回一回、プレー中に髪をかき上げていた。編み込んだりジェルで固めたりすれば、試合中の動きが良くなりそう」と、プレーの質にも言及した。

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講師にヘアメイクを実践してもらう雪谷高校バスケ部の部員

明るい表情、前向きな言葉が生まれた

 初めは緊張気味だった部員たちも、一人、また一人と髪形が変わっていくごとに表情が明るくなり、「パフォーマンスも良くなりそう」と前向きな言葉も飛び出した。大矢さんは「気に入った髪形で気分が上がるだけでなく、『耳にかけ直す』『目にかかる』『たるむのが気になる』といった、無意識に集中力を切らしてしまっていた今の髪形の機能面のデメリットにも気付いて改善を図れた」と指摘する。

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講師のヘアメイクを実践する雪谷高校バスケ部の部員たち

 女子バスケ部顧問の谷口比奈(ひな)教諭(24)は「バスケは接触が多く、かつ走る場面も多いので、どうしても髪が乱れる。例えば、振り向いてボールを受ける場面で髪形の影響を受けないためにはどうすればいいのか、といった普段は突き詰めて考えないことについても、今日は考えるきっかけになった」と手応えを感じた様子。選手からは「自分らしいプレーをする」「頼られるプレーヤーになる」「(雪谷高校の掲げる)文武両立を目指す」という前向きな言葉も飛び出した。「髪形が変わると気分も上がると思う。このテンションで、大会前にチームとして『こうしよう』と部員たちから上がる声が増えるといい」と期待する。

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完成したヘアメイクをチェキで撮影し、思いを書き込む雪谷高校女子バスケットボール部の部員たち

 出張講座の華やかな様子が気になったのか、廊下からのぞいていた野球部の男子部員が途中で部屋に入ってくる一幕も。丸刈りの頭部を手で触りながら、体育課の中村尚嘉(たかよし)教諭(60)に「僕たちもこういうのやってみたいです」とお願いしていた。

高校サッカーの試合前日 飯塚高校も

 昨年12月30日には、全国高校サッカー選手権大会に出場するため上京した福岡県代表の飯塚高校サッカー部でもサロンを開催。美容師でメリケンバーバーショップのクリエイティブディレクター、ヌマタユウトさんが、翌日に初戦を控えた部員のヘアカットとスタイリングを行った。

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久保公斗さん(左)の髪をカットするヌマタユウトさん=東京都内で

 主将の3年、藤井葉大(ようた)さんは「過去、大きな大会前に髪を切ってプレーが変わる先輩の姿を見て、見た目がマインドやプレーにも変化を与えるんだと思った。自分は髪形でモチベーションが変化する性格。皆でヘアカットすることで、気持ちもそろって試合に出られるのはうれしい」。

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ヘアカット前の藤井葉大さん

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ヘアカットを終えた藤井葉大さん

 エースの3年、久保公斗(きみと)さんは「前髪を上げてもらうようにオーダーした。髪を切ったことで気持ちが高まっている」と話した。

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ヘアカット前の久保公斗さん

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ヘアカット後の久保公斗さん

 翌31日の青森山田高校との試合では、1-1(PK3-5)で惜敗したが、優勝校相手に一歩も譲らぬ熱戦を繰り広げた飯塚高校の部員たち。髪形も、試合に向けたモチベーションアップに一役買っていたのだろう。

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ヘアカット後に集合した飯塚高校サッカー部の部員たち

10人に1人が「髪形を理由に入部を諦める・退部する」

 「なりたい自分になろう」。そう掲げて、自己表現が制限されやすい部活動の「髪形ルール」に新しい風を吹き込もうと「部活ヘアサロン」を企画したマンダム。きっかけとなったのは、高校生1000人と部活動顧問を担当する高校教員200人を対象に昨年3月に行った実態調査だった。

当たり前のものとして受け入れるのか

 野球部は丸刈り。運動部女子はショートカット。合唱部や吹奏楽部は舞台で表情が明るく見えるように「前髪全部上げ(おでこ出し)」。マーチングバンドでは髪を長く伸ばし、癖のある子は縮毛矯正をかけてストレートにするのが「暗黙のルール」…。

 調査では、部活生の10人に1人が「髪形を理由に入部を諦める・退部する」という経験をしたり聞いたりしたことがあると回答した。一方で、疑問を持たずにルールを受け入れている学生も3割に上り、マンダム広報部の萩原奈津子さん(43)は、この結果を受け、「あらゆるところで多様性がうたわれている令和の時代なのに、学生の3割が当たり前のものとして髪形のルールを受け入れていることに驚き、それでいいのかと疑問を持った」と話す。

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「部活ヘアの現状」について説明するマンダム広報部の萩原奈津子さん(左奥)

 学生たちからは、実際に理不尽だと感じたり、おしゃれができなかったエピソードを募った。運動部では「ヘアスタイル(ツーブロック禁止、結び方の指定など)」「髪の長さ(丸刈り・ショートカット指定など)」、文化部では「コンクールで(おでこ出しなど)前髪が指定される」といった声が上がった。

 いつから始まったのか、どうして始まったのか分からないまま、なんとなく従っているルールも。萩原さんは「中には本当に必要なルールなのかも検討されていないものも多いのでは」と話す。学校自体の校則はなくても、部活が独自に設けている髪形ルールも、特に伝統校・強豪校では多いという。

自己表現できることが参加意欲につながる

 一方、「髪の長さや髪形で自己表現をできること」が「部活参加意欲やパフォーマンスアップにつながると思う」と答えた生徒は7割に上った。

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ヘアメイクを実践するマンダム広報部の萩原奈津子さん(右から2人目)

 「安全面や大会のルール面などで制約がある中でも、考えることで個性は出せる」と話す萩原さん。指導者の側からも「変えたい・変えなければ」という意識は感じ取れるという。昨年11月に都内私立高のチアダンス部を第1回としてスタートした「部活ヘアサロン」。関西や九州での開催も含め、これまでに6回実施した(1月17日現在)。「『外見を整えるだけで気持ちや行動が変化する』というのが現場で熱量を持って感じられてうれしい」と話す。

 少子化で中高生全体の人数はさらに減っていく今、「部活の髪形ルールのせいで、『10人に1人が入部を諦めた・やめた』というのはすごくもったいない」と訴える。「10代後半から20代前半にかけては、おしゃれや身だしなみを通して自分らしさを、どう魅力として表現していくかに関心が高まる時期。それなのに、校則や部活のルールをはじめ、『学生らしく』と言われるなどいろいろな縛りがあり、『やりたいけれどできない』というギャップが一番大きい時期でもある」と分析。その年代の抱える悩みへのアプローチのひとつとして、自己表現が制限されやすい部活動の「髪形ルール」に新しい風を―。「大人として、企業としてバックアップしていきたい」

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