モデル 牧野紗弥さん 夫婦別姓のため事実婚へ…子どもも理解してくれた

( 2021年8月22日付 東京新聞朝刊)

夫婦別姓などについて話すモデルの牧野紗弥さん

祖母の言葉「牧野姓を残してほしい」

 小学6年の長女(11)、4年の長男(9つ)、年長の次男(6つ)の子育てでバタバタの毎日です。そんな中、夫婦別姓を実践するため、年内にも事実婚にしようと、家族で話し合いを進めています。

 私は2人姉妹の次女で、いとこ3人も全員女。幼いころから祖母がみんなに「牧野姓を残してほしい」と言っていたのが心に残っていて、13年前、夫(50)との結婚を決めた時も「姓を変えるつもりはないよ」と言いました。夫も「いいんじゃない」と応じたのですが、夫の両親の理解を得るのが難しそうだったため、いったん夫の姓に変えて結婚しました。

 ただ改姓したことでモヤモヤが募りました。子どもたちを夫の「家」の子どもとして扱われ、実家の母も私に「嫁」の対応を求めるようになりました。

家事、育児…すべては「ジェンダー」

 私も「女は家事、育児」という思い込みに縛られ、夫の仕事を優先するのが妻の役割と、自分の仕事を調整したり断念したり。いっとき育児で離れていたモデルへの復帰が思うように進まず、家事も完全にキャパオーバー。苦しくて涙が出てきました。

 夫は家事を「やっている」と言いますが、細かく見えにくい「名もなき家事」もあります。「言われたことはやるけど、自分で気づいてやってと言われても無理」という夫の言葉を契機に、夫が家事、育児のすべてを2週間やることになりました。

 2週間後、夫から「毎日次から次にやることがあり、想像以上に疲れた。これまで24時間オンの状態ではなかった。気づかせてくれてありがとう」とメールが届きました。同時期、雑誌のコラムを読み、自分の悩みが「ジェンダー」という言葉で説明がつくとわかり、モヤモヤも氷解。「家庭内ジェンダー」平等を目指し、昨年後半から、ペーパー離婚して旧姓に戻し、夫婦別姓にしたいと家族に伝えるようになりました。

長女の作文「そもそも制度がおかしい」

 子どもたちは理解しているようです。長男に「ママが旧姓に戻したら?」と聞くと、「ママが前よりすごく楽しそうだし、いろいろ話してくれたから大丈夫」と言ってくれました。

 長女は学校で偶然、結婚して妻の姓に変えた男性の先生から、結婚後にどちらの姓を名乗りたいかを考える授業を受けました。その時、「お父さんとお母さんは、自分の姓を変えたくなくて離婚するしかない。そもそも一つしか選べない制度がおかしい」と作文に書きました。

 子どもたちには生き方にいろんな選択肢があることを伝えたい。互いに自立し、尊重し合える家族でありたい。これからもたくさん話し合い、自分たちらしい家族の形を見つけたいと思っています。

牧野紗弥(まきの・さや)

 1984年、愛知県生まれ。「VERY」(光文社)「Domani」(小学館)などのファッション誌でモデルとして活躍。テレビやラジオなど活動の幅を広げている。

コメント

  • 我が家は一人っ子長男・長女結婚(事実婚)で、夫婦共働き、夫婦別姓20年です。結婚に反対だった両実家も、4人の孫の成長で機嫌を直し、20年経ってこれで良かったね、と。4人の子供たちは2人ずつ姓が違います
     
  • 娘さんの作文はまっとうですね! 選択肢があれば良い。