歯ブラシで落とせる汚れは6割だけ! 歯科医師が解説「家族で始める予防歯科」

細川暁子、植木創太、熊崎未奈 (2022年5月24日付 東京新聞朝刊)
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舌ブラシの使い方を説明する杉浦洋平さん

 子どもから大人まで、いつまでも歯を健康に保つ方法を学ぶWEBセミナー「家族で始める予防歯科~マスクの下、健康ですか~」(中日新聞・東京新聞生活部主催)が12日、ビデオ会議システム「Zoom」を使ってあった。講師の杉浦洋平さん(45)は、歯ブラシだけでは虫歯や歯周病といった口内のトラブルを防ぐことはできないと強調。歯間ブラシや舌ブラシなどを使うよう勧めた。

妊娠中の歯周病 早産などのリスクも

 口の中の健康は「マイナス1歳」から意識することが大事。生まれる前、胎児のうちからだ。

 妊婦の健康状態は、胎児の歯に影響を与えやすい。しかし妊娠中は、つわりで十分に歯磨きができずに虫歯や歯肉炎になったり、ホルモンバランスの崩れから歯茎にエプーリスという腫瘤(しゅりゅう)ができたりすることもある。また、歯と歯茎の間の歯周ポケットで増殖し、歯周病の原因となる細菌は、早産や未熟児の出産につながるリスクも指摘される。杉浦さんは、妊娠4~7カ月の安定期に入ったら歯科の治療を受けるよう呼び掛ける。

乳歯にはフッ化物 永久歯の奥歯は?

 生まれてからはどうか。6カ月ごろになって乳歯が生え始めたら、表面にフッ化物を塗るのが有効。細菌の働きを弱めたり、酸で溶けにくい歯をつくったりする効果がある。フッ素配合の歯磨きや洗口液もいい。

 永久歯が生える6歳ごろの奥歯にお勧めなのは「シーラント」。生えたばかりの永久歯は、表面の溝が深く、虫歯菌が入り込みやすい。シーラントは、その溝をフッ素入りの樹脂でふさぐ治療だ。

10歳ごろまでは親が「仕上げ磨き」

 親ができることもある。歯の裏側や奥歯を子どもが自分で上手に磨くのは難しい。「10歳ごろまでは仕上げ磨きをしてほしい」と杉浦さんは呼び掛ける。膝の上に寝かせ、学校などでの様子を聞きながら磨けば、親子のコミュニケーションも深められる。

 40歳ごろからは、虫歯に加え、歯を失う原因で最も多い歯周病に気を付けたい。原因物質などが血管を通じて体内に入ると、血糖値を下げるインスリンの働きを妨げ、糖尿病が悪化する恐れがある。また、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞、認知症などにつながるリスクもあり、万病のもとだ。歯磨きの際に歯茎から出血したり、起床時に口の中がネバネバしたりなどの症状があれば、歯周病の可能性があるという=

表 歯周病チェックリスト

フロスで歯垢除去 舌の表面も清潔に

 寝ている間に増える細菌を取り除くため、歯磨きはできれば朝食の前と後の2回した方がいい。ただ、杉浦さんによると「歯ブラシだけで落とすことができる汚れは全体の6割程度」。つまり、歯ブラシだけでは歯周病や虫歯を防ぐことは困難だ。歯と歯の間のプラーク(歯垢)を細い糸で取り除くデンタルフロスや歯間ブラシを毎日使うことを勧める。

 口の中が不衛生だと、繁殖した細菌が唾などと一緒に肺に入り、誤嚥(ごえん)性肺炎にもなりかねない。加齢に伴って体力や免疫力が落ちている高齢者は、歯だけでなく、「舌ブラシ」で表面の汚れを落とし、舌も清潔に保つことが大事という。

 もう一つ、高齢者が注意したいのは、細菌の繁殖を防ぐ唾液の量が減ることによって口の中が乾燥するドライマウスだ。降圧剤や鎮痛剤などを飲んでいる人は、その副作用でなりやすいため、特に気を付ける必要がある。耳の下や顎の下を手で刺激し、唾液を出しやすくすることが予防になる。

読者の相談に答えました

 歯の治療についての疑問点や、電動歯ブラシを使う際の注意点、「出っ歯」の悩み…。当日までに読者からは多数の相談が寄せられた。セミナー後に取材した内容も合わせ、治療のアドバイスなどをまとめた。

出っ歯で口が閉じにくい…「矯正で直せます」 

 Q:【愛知県の女性(17)】出っ歯で口が閉じにくくて困っている。矯正をしたら治るのか。

 A:専門用語で「上顎(じょうがく)前突」と呼ぶ出っ歯の原因は、大きく3種類。上顎が大きく下顎が小さい「骨格性上顎前突」、上の前歯が唇側に大きく傾く「歯槽性上顎前突」、不正なかみ合わせで起きる「機能性上顎前突」-だ。

 いずれも矯正治療で治すことは可能だが、骨格的なずれが大きい場合は手術が必要になる例も。治療を始める際は、頭部全体を撮れるエックス線写真(セファログラム)を含めた精密検査を受ける必要がある。まずは専門医の診断を受けてほしい。

電動歯ブラシの注意点は?「性能を過信しないで」

 Q:【愛知県の男性(35)】電動歯ブラシを愛用しているが、注意点を教えてほしい。子どもや高齢者が使うことをどう思うか。

 A:電動歯ブラシには、毛が音波で震えるように動く音波式や、丸い形の毛が回転する回転式などがある。いずれも、力が弱い高齢者や子どもにとっては便利。私も、子どもが手を骨折した際には助かった。

 デメリットは、1万~2万円ぐらいと値段が高いこと。歯と歯の間もやや磨きにくい印象がある。歯への当て方が間違っていたり、強かったりすると歯肉や歯を傷つけるリスクもある。

 一番危険なのは性能を過信すること。手磨きと同じように、歯間ブラシやデンタルフロスといった補助的な道具が必要だ。手磨きにしろ電動歯ブラシにしろ、どこに磨き残しがあるか、プラークに色がつく「染め出し」を歯科医院でしてもらって確認してほしい。

杉浦洋平(すぎうら・ようへい)

 1976年、愛知県生まれ。愛知学院大大学院歯学研究科修了の歯学博士。名古屋市で開業している。生活面のコラム「Dr.sサロン」の執筆者の1人。

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