「起立性調節障害(OD)の子どもたちの会」当時者の中2が立ち上げ 頑張りたいけど頑張れないつらさを理解してほしい

阿部博行 (2023年6月28日付 東京新聞朝刊)
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ミズベサロンに出席した中山さん(左から3人目)と参加者ら=横浜市で

 思春期に多いとされる「起立性調節障害(OD)」の子どもたちが安心して集える居場所を作りたい-。横浜市港北区の中学2年、中山知佳穂さん(13)が、同じ病気の当事者として任意団体「起立性調節障害の子どもたちの会」を立ち上げた。中山さんは「今後に発症するかもしれない子どもたちのためにも、学校や社会に正しい理解を広めていきたい」と話している。

「やる気の問題」と誤解されがち

 ODは自律神経がうまく働かず、めまいや頭痛などの症状が出る身体の病気で、中学生では約1割に発症するともいわれる。朝に調子が悪くて起き上がれず、登校できないため「やる気の問題」と誤解されがちで、自分を責めることも少なくない。

 中山さんは小学6年の夏に発症し、近所の内科医から心療内科の受診を勧められたが、自覚症状から「心の病気ではない」と思い、東京都内でODを専門に診ている医師の診察を受けた。現在は通院による対症療法で体調を整えながら、遅れた学習を補う日々を過ごす。

自分の意思でコントロールできない

 今年になって「当事者同士で、できることを一緒に少しずつ増やし、情報を共有する場を作れないか」と思い立ち、横浜市市民協働推進センター(市庁舎一階)に相談。同センターの助言を受けて5月に任意団体をつくり、ホームページも開設した。今月15日には同センターが企画する市民対話集会「ミズベサロン」で中山さんは自身の思いを言葉にした。

 「自律神経という自分の意思ではコントロールできない働きのせいで、頑張りたいけど頑張れないというつらさがありますが、なかなか周囲に理解してもらえません。もっと世の中や医師、学校の先生や周囲の方々にそのことを理解してほしいと思います」

対応ガイドラインの作成を求めたい

 集会にはオンラインを含め同じ悩みを抱える当事者と家族、スクールカウンセラー、支援者ら約20人が参加し、現在の課題と今後の活動について話し合った。ODの子どもたちは不登校につながりやすく、教職員の理解とサポートが必要となるため、行政に「OD対応ガイドライン」の作成と全校への配布を求めたいといった意見が目立った。

 子ども同士の活動として、中山さんがボッチャや夏祭り、散策と写真撮影、クリスマス会といった企画を提案。東京都八王子市と兵庫県からオンラインで集会に参加した中学生らは「遠方なのでオンラインでも良ければ、企画に参加したい」と賛同した。保護者からは「娘に学校に行けていない時期を『黒歴史』と思ってもらいたくないので、小さな団体でちょっとずつ成功体験を楽しんでほしい」といった発言もあった。

起立性調節障害(OD)とは

  自律神経の働きの不調のため、起立時に身体や脳への血流が低下するなどして、立ちくらみ、めまい、動悸(どうき)、頭痛、腹痛、倦怠(けんたい)感、失神などの症状が出る。午前中は体調が悪く、午後に回復することが多い。身体的成長が著しい思春期を中心に10~16歳で多く発症。軽症を含めると小学生で5%、中学生で10~30%が該当するとの報告もある。ODの半数以上が学校の長期欠席を余儀なくされており、発症の早期から適切な治療と家庭や学校での病気に対する理解と対応が必要とされる。

起立性調節障害の子どもたちの会

■ツイッター=@supporting_OD

■メール=foryourselfwithod@gmail.com

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年6月28日

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