保育士がトイレで1歳児を… 母親「まさか虐待を受けるなんて」 待機児童対策で施設が急増 労働環境の改善が急務 

(2020年8月31日付 東京新聞朝刊)
 園児を突き飛ばす、怒鳴る、食事を無理やり食べさせる-。こうした保育所内の「不適切保育」は、子どもが被害を訴えにくく表面化しづらい。厚生労働省は今月、これまでになかった全国的な虐待防止策づくりに着手したが、虐待の一因とされる保育士不足や労働環境の悪化を同時に是正する必要性を指摘する声も出ている。
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保育所の1歳児クラスに通う子どもが帰宅後に「痛い、痛い」と訴え、ばんそうこうを貼った時の様子=大阪府で(母親提供)

「ブタ」「あっちに行け」今もトイレに入るだけでパニック

 「子どもは今でもトイレに入るだけで『キャーッ』と泣いてパニックになり、夜泣きもする。先生から受けた暴力や暴言を思い出すようです」。わが子が昨年、保育士から虐待を受けた大阪府の30代の母親は話す。 

 母親によると、認可保育所の1歳児クラスだった当時、約10カ月間にわたり担任の女性保育士からトイレでたたかれたり、顔を壁に押しつけられたり、「ブタ!」「あっちに行け」などと暴言を吐かれたりした。

児相は「家庭内の虐待しか対応できない」 市は「指導した」 

 退職した元職員から今年2月に電話があり、被害を知った。後から思えば、背中や顔が赤く腫れていたように感じたり、泣いて登園を嫌がったりしていた。だが、担任から説明はなく、子ども同士のトラブルやけんかと考えていた。「まさか保育所で虐待を受けているなんて…」

 母親は児童相談所や市に連絡したが、十分な調査や説明はされなかった。「児相は『家庭内の虐待しか対応できない』と言い、市は『園長を指導した』と繰り返すだけ」。母親は園長や担任と話し合いの場を設け、同僚に独自のアンケートも配った。最終的に担任は虐待をおおむね認めた。母親は「当初、明らかな虐待を園側が『不適切保育』と言うのも納得がいかなかった。市や第三者機関がきちんと調査し、対応する仕組みが必要」と訴える。

全国で広がる被害 施設が急増、保育士の育成が追いつかず  

  同様の被害は各地で起きている。東京都足立区の認可保育施設で昨秋、園長と主任保育士が複数の園児にトイレへの閉じ込めや放置、暴言を繰り返していたことが分かった。同僚が運営会社と区に訴えて判明、会社側は大筋で事実関係を認め、区は運営会社に改善を指導した。福岡市の認可保育所でも昨年、保育士8人が関わる園児への虐待や暴言があったとして、市が改善勧告を出した。

 待機児童対策で、都市部で保育施設が急増し、都内だけでも2014~2019年で、1000以上の認可保育所が新設された。人手不足から、適性や能力が不十分な保育士を採用したり、育成が十分できない場合もある。

人手不足で労働強化 「国による手厚い人員配置が必要です」

 預かった児童の様子から家庭内の虐待を見つけるなど、保育士は虐待予防や児童の保護などに率先して取り組むべきとされ、保育士が虐待する事態への対策は進んでいない。

 保育施設での虐待被害に詳しい寺町東子弁護士は「規制緩和や人手不足で保育士の労働が強化され、ストレスなどから虐待が起きやすい状況になっている」と指摘。「まずは国がお金をかけて人員の配置基準を手厚くし、保育士が余裕を持って保育できる環境にすることが必要だ」と話す。

 また、児童虐待防止法では保護者による虐待が対象で、保育施設などでの虐待が除外されている問題点を挙げ「悪質なケースからどう子どもを守るか、法制度の見直しも考えるべきだ」と強調した。

[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年8月31日

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  • ronn says:

    まだ1歳児なのに虐待を受けて痛い思いをしたと思うし、暴言もはかれてと両親の方も、自分の子供が虐待を受けるなんて悲しいことなんだなーと思いました。本当にこんなことはあったらだめなんだなーとおもいました

    ronn 無回答 10代
  • 匿名 says:

    とても悲しくなりました。 学校の授業で調べましたが、学ぶことが多かったです。

      
  • 匿名 says:

    人としておかしい人が保育士になれてしまう制度がまずい。
    私の園でも誰も見ていないところで暴言を吐く人がいる
    いくら注意しても変わらない。基本的な人としての常識が形成されてないまま大人になってる人が増えてるし、何も考えてなくても学校を出れば資格が取れてしまう。子どもが可愛い、好かれる自分が好きという保育士も多いです。
    現場で教えられる範囲を超えてます。

      
  • 匿名 says:

    「虐待」とは親などの「見えないところ」で起きていることもあるんですね。保育士も人間。イライラしたりしてしまうのは虐待をしてしまう親の心境とおなじなのかもしれませんね。

      
  • 匿名 says:

    保育園選定の際に虐待が一番怖い。虐待してますか?って質問して答える加害者はいないんだし。
    10か月も我が子が虐待にあってるのを気づいてあげられない、むしろ、虐待されに行くように促した形になっていたなんて想像するだけでゾッとします。
    親としてどう防いだらいいのでしょうか。「預かってもらえるだけ有り難いだろ」という社会的空気から保育士へ下手に出るしかなくツライです。
    正直、預けたくて預けてるわけじゃないのにと思ってしまいます。
    保育無償化よりも、たとえ少額でも育休給付金が支給される期間を伸ばして「未就学児は家庭で面倒みる。それでも会社のキャリアは継続される」という社会的雰囲気になれば待機児童や人手不足の問題は解決するのではないでしょうか。

      
  • 匿名 says:

    人手不足からの虐待?
    子供(乳児、幼児含)を育てるのは、実子であっても大変な事だと実感してます。
    起こり方、しつけの仕方など、各家庭のやり方に対応しなければならない状況があります。かなりのストレスが蓄積されるでしょう。子供を預ける親子さんもある程度の了解はあると思いますが、やり過ぎだと思います。
    最近は、ネグロストなんとか言ってよくわかりませんが、各家庭でも問題があります。そういう親に対して見本となる子育てを教えてくれる存在であって欲しい。 
    また、子供から見た大人の見本は、親と一番身近な存在の人だから!

      
  • 匿名 says:

    うちの子の保育園でも先生がいつも怒っています。
    運動やお勉強などスケジュールも分刻みで、先生も余裕が無いのかもしれません。
    「出来た時の喜びと感動を味合わせたい」と言うような事をおっしゃっていましたが、6歳が人生の集大成ではないので、そんなに色々出来なくたって良いのにと思ってしまいます。
    体力と忍耐力は付いた気がしますが、ここの園で良かったのか、今でも考えます。

      

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