参院選で考えたい保育士の配置基準 「3歳児20人に1人」は無理がある 国は抜本的な見直しを

(2022年7月6日付 東京新聞朝刊)
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園児たちに紙芝居を読み聞かせる保育士=東京都武蔵野市で

1人では回らない 3人以上で

 6月上旬のある日の午後4時すぎ、認可保育所「西久保保育園」(東京都武蔵野市)。3歳児の保育室では、3人の保育士らが園児計20人を見ていた。保育士の1人は、おやつを食べ終えた園児を前に紙芝居を始めた。おもちゃで遊びたい子どもは、もう1人が見守る。保育補助の職員は片付けに追われた。

 国が必要な保育士数を定めた「配置基準」では3歳児の場合、園児20人に保育士1人となっている。だがそれでは現場は回らない。トイレに付き添うからといって保育室を空けられない。1人で園児20人の散歩を引率するのは安全面から不安が大きい。

 このため西久保保育園の3歳児クラスは、2人の担任保育士に加え、園児が多い日中は非常勤の保育士らが入り、3人以上で見守る時間帯をなるべく長くしている。西巻民一園長(58)は「国の基準通りでは運営できない。そもそも基準の想定では保育士の勤務時間は8時間だが、うちは13時間開所している」と指摘する。

厚労省は基準引き上げに消極的

 人件費のやりくりにも苦労する。武蔵野市では、国の基準より保育士を多く配置した施設への運営費の加算や、勤続の長い職員への期末報償金の補助制度などを設けている。「細かく条件を設け、保育の質の向上につながるようにしている」と市の担当者。

 ただ、自治体の努力だけでは地域や施設で保育の質に差が出てしまう。岸田政権は昨年11月に決定した経済対策で、今年2月から保育士の賃金を3%程度(月額9000円)引き上げる措置を盛り込んだが、西巻さんら武蔵野市内17の民間保育所の園長は、さらなる賃金引き上げや配置基準の改善を求めて市議会に働きかけた。その結果、市議会は意見書を国に提出。全国市長会も配置基準の見直しを国に要望している。

 厚生労働省の担当者は「国としても保育の質の向上に取り組んでいる」とした上で、配置基準の改善については「基準の引き上げにより基準を満たさない保育所が運営できなくなり、利用児童に影響が出ると考えられるため、慎重な検討が必要」と消極的だ。

表 参院選 保育に関する各党の主な公約

複数の党が「処遇改善」掲げるが

 10日投開票の参院選でも、保育士の処遇改善を複数の党が公約に掲げる。

 「コロナ禍で園児が減った際、余裕を持って保育ができ、現状の配置基準では厳しいと実感した保育士が多かった」と語るのは、保育士や保護者らでつくる全国保育団体連絡会(新宿区)の実方伸子副会長だ。

 保育行政は、政府が来年4月に新設する「こども家庭庁」に移る。実方さんは「どの自治体や施設でも平等に保育を受けられるよう、保育士の配置基準の抜本的な見直しに着手してほしい」と訴える。 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年7月6日

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  • 見直し君 says:

    男性保育士として、東京都内の保育園に勤務していましたが、一年で辞めました。国は配置基準や1人あたりの給料を改善しましたよ!となんか大袈裟に言っている印象ですね。給料が上がるにこしたことはないですが、元から低い保育士の給料では感謝というよりも当たり前だと思います。保育園管轄の厚生労働省であったり、保育園の改善に関わる国の方達は子育てをしたことがないのでしょうか?

    子ども1人を子育てするのも大変ですよね。保育士1人に対して、0歳児3人・1歳児5人・2歳児6人・3歳児20人・4歳児〜30人、保育士はこれだけの数を1人で見なければいけないんですよ。家族でさえ子どもの行動を予測できない時があります。見れていない時があります。集団生活をして行く保育園で乳児、幼児をこれだけの人数を見続けることがどれだけ大変か理解できるのでしょうか?

    子ども10人を保育士2人で見ていたとして誰かが排泄や怪我をして、保育士1人が抜けてしまったらその間子ども9人を1人で見ないといけないんですよ。保育中でも散歩中でも、安全確保なんて出来ないんですよ。0歳児を3人で見るなんて、おかしいです。1秒でも早く避難しなければいけない時、歩くことすらできない3人を抱えて即座に避難できると思いますか?

    各学年の避難もそうです。避難想定以外でも子ども1人に対しての保育士人数が少なすぎるんですよ。保育を甘く見ているし、安全面を想定できていない証拠ですよね。

    何かが起きて保育士が1人その場を離れても、子ども達は遊びをやめません。他の保育士は1人で戻ってくるまで頑張って見ていないといけないんですよ。保育士は子ども達にスマホやゲームを与えません。勤めていた園ではテレビを見せることもありませんでした。保育士が休憩取れるのは午睡前と午睡中です。自分の休憩時間すら事務作業や保育準備の為に削ります。保育士人数が少ないために午睡以外での作業時間が全く取れないんですよ。

    子どもの命を預かり、発達を促していく保育士は遊ぶだけの毎日ではないです。夏休みもなく、気を張り続けています。命を預かる立場として給料が少なすぎるんです。仕事量が多いのに給料が少ないから保育士を続ける人も少ない。配置基準を上げて、保育士の人数を増やして運営させるまでが厚労省や国の仕事です。自治体任せではなくそこまでやってくれれば保育の運営は出来ると思います。

    見直し君 男性 20代

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