男児の性被害に相談窓口を 日本版DBSの法案提出は早期に ジャニーズ性被害問題を背景に政府が緊急対策 

(2023年7月27日付 東京新聞朝刊)

表 こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ(抜粋)

 子どもや若者が被害者となる性犯罪・性暴力問題で、政府は26日に緊急対策を取りまとめた。子どもに接する仕事に就こうとする人が性犯罪歴がないことを確認できる「日本版DBS」創設に向けた法案の早期提出を明記し、男性・男児向けの電話相談窓口を設置するとした。一方で被害当事者からは被害防止の実効性を高めるため、施策を決定する政府に直接意見を伝える場の設置を求める声も上がっている。 

子どもの被害が増加 だが氷山の一角

 政府が緊急対策の取りまとめに動いた背景には、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による性加害問題で国民の関心が高まったことがある。緊急対策では他にも、同意のない性行為は犯罪になり得ることを明確にした改正刑法の周知徹底を図ること、文化・芸術分野で活動する人を対象にした相談窓口も設置することをうたった。

 子どもや若者が被害者となる強制性交等罪の認知件数は年々増加している。今年1~4月の暫定値は、0~19歳の年齢層でみると、前年同期より2割以上増えているが、氷山の一角とみられる。

「当事者が政府と対話する場が必要」

 当事者団体「Be Brave Japan」の石田郁子代表は「より実践的な対策につなげるため、被害当事者が政府と対話する会議体の設置が必要だ」と訴えている。

 今回の緊急対策の策定にあたっては、小倉将信こども政策担当相が被害者と面会したとしているが、話を聞いた人数や回数は公表していない。性被害を訴えたジャニーズ事務所の元所属タレントらからの聞き取りも行っていない。

乏しい具体性 身近な人の性暴力は?

◇後藤弘子・千葉大大学院社会科学研究院教授の話

 緊急対策は総花的な内容で具体性に欠ける。例えば改正刑法をどう周知していくのか。「不同意性交」という新たな概念が入ったことを踏まえ、「性的同意とは何か」など性教育を学校での人権教育として行っていくべきだ。

 ガイドラインもなく、子どもから性被害の相談を受けた際にやるべきこと、やってはいけないことを知らなければ二次被害につながる恐れもある。親を含め身近な人からの性暴力をどう防ぐのかという観点もない。対策の実効性を高めるため、継続的な議論が必要である。

図解 日本版DBS導入後のイメージ

日本版DBSとは

 英国の「ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス」(前歴開示および前歴者就業制限機構)を参考に検討。政府が個人の犯罪記録を管理し、性犯罪歴がないことを証明する「無犯罪証明書」を発行。学校や保育所で働く人が就業先に提出することを想定している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年7月27日

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