「こども誰でも通園制度」2026年度に本格実施へ モデル事業20自治体アンケートで見えた課題 在園児と同室? 一時預かりとの違いは?

 共働き世帯でなくても生後6カ月~2歳の子どもなら誰でも保育所などに預けられることを目指す「こども誰でも通園制度(仮称)」。政府が11日に発表した「こども未来戦略」案で、2年後の2026年度から全国の自治体で本格実施を目指すと明記された。支援の届きにくい世帯の負担軽減や子どもの健やかな成長を支える制度として、モデル事業を実施する自治体からは有効だとする声がある一方、制度設計には課題も多い。東京新聞が首都圏と中部地方20自治体に実施したアンケートや取材から議論のポイントを5つ洗い出してみた。
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モデル事業を利用する子どもたち=福井県若狭町

こども誰でも通園制度

 親が就労しているなどの要件を満たしていなくても、誰もが定期的に保育施設へ通えるようにする制度。行政の支援が届きにくい親子が孤立し、虐待などにつながることを防ぐ狙いがある。国の少子化対策の柱の一つとされ、こども家庭庁は、月10時間(週1回2時間程度)までの枠で、時間単位で利用できる仕組みを想定している。区市町村が指定した保育所や認定こども園、幼稚園などで導入される見込み。現在は31自治体50施設でモデル事業が行われており、2024年度には約150の自治体で試験的に実施、25年度に制度化し26年度から全国展開を目指す。保育所などに通っていない5歳以下の子どもは、同庁の推計では約152万人おり、2歳以下が9割以上を占める。

①在園児と同室保育か別室か

 こども家庭庁は、来年度にかけて行う試行的事業で3つの実施方法を想定している。

  1. 保育所などの定員と関係なく子どもを募集し、在園児と同じ部屋で過ごす
  2. 保育所などの定員と関係なく子どもを募集し、在園児と別の専用スペースを設けて保育する
  3. 保育所などに空き定員がある場合、その範囲内で子どもを受け入れ同室で過ごす。

 実施する事業者の裁量に委ねるとしているが、それぞれに留意する点がありそうだ。

東京都文京区 ◇保育所に空き教室があり、専属の保育士も置けるため別室保育を実施中

専用の保育室を設けた方が実施しやすい。集団生活に慣れていないモデル事業の子どもは、手をつないで外を歩くだけでも大変で時間内に目的地にたどり着けない、給食を席について待つという習慣がないなど、在園児と交わるのは難しいため。

東京都中野区 ◇保育所に空き定員枠があり、同室保育を実施中

通園回数が少ないモデル事業の子どもの登園により、在園児が不安定になる場合がある。例えば、保育士やおもちゃの取り合い、普段と異なる環境に対する不安など。全ての子どもが安心して利用できる環境をどのように工夫するか、課題がある。誰のための何の支援なのか、子どもの視点に立っているのか検討する必要がある

東京都品川区 ◇預かり当初は別室で専属保育士を置き、慣れてきたら同室保育を実施中

未就園児への支援の必要性は感じるが、保育所の現場に、在園児と非在園児の両方を預かるノウハウが不足している。例えば、集団生活の経験がないと、保育士がつきっきりで見守る必要がある。また、子どもだけでなく要支援家庭に丸ごとアプローチする視点も必要。事業者へのサポートが重要と考える。

②利用者を広く公募か「アウトリーチ」か

 利用する親子の募集方法は、モデル事業では公募か、支援を必要とする家庭に直接声を掛けるアウトリーチ型のアプローチなど、自治体によって異なった。こども家庭庁は、試行的事業でも自治体の判断に委ねるとしている。実効性のある制度にするために望ましい方法とは。

宇都宮市 ◇公募(先着順)で実施中

現状、情報収集能力の比較的高い専業主婦家庭などの利用が多いため、外国人世帯や周囲とのつながりが希薄な世帯の利用促進につながるよう、母子保健部局や児童福祉部局と連携した周知の徹底などが必要と考える。

愛知県大府市 ◇公募(子育て状況の聞き取りあり)で実施中

他市から転入してくる子育て世帯が多く、両親が遠方でなかなか頼ることができず、子育てに関して強い負担感を抱えている。そうした負担を感じている世帯に優先利用してもらい、子育ての負担軽減につなげることは、とても意義のあることだと感じる。

岐阜県岐南町 ◇アウトリーチで実施中

養育的な問題があるなど支援が必要な家庭が優先して利用できる仕組みが必要。自治体からの助言や指導に対して拒絶的な家庭に対しても、子どもを介して、信頼関係ができることで関係性が良好になり、寄り添うことができたり、見守ることができる。モデル事業に参加することで見守りのできた家庭があることは大変有効だった。しかし、受け入れられる人数や年齢に制限があるので、全ての子どもが利用できるようになるといいし、気軽に利用できることが大切だと思う。

名古屋市 ◇アウトリーチで実施中

アウトリーチ型で育児不安を抱える世帯に声掛けし、利用につなぐことができれば、これまで次の支援につなぎにくかった育児不安を抱える世帯をターゲットにすることができる。一方で、制度を利用すること、保育所などを定期的に利用すること自体に困難さを感じる世帯も多いため、利用につなげることが難しいと感じることもある。

他都市が行っているような抽選とすると、利用者は多くても、既存の一時預かり事業とのすみ分けが不明確になるだけでなく、これまでと同様、次の支援につながりにくい困難を抱えた世帯が埋もれてしまい、福祉的な意味合いが薄れてしまう。それであれば、一時預かりの実施箇所を拡充する方がよいのではないかとも思う。誰のための何のための制度なのか明確にした上で、今後の制度構築を考えたい。

③一時預かり事業との違いは

 保護者の通院やリフレッシュなどで一時的に子どもを預けたい場合、保育所や児童館などで受け入れる「一時預かり事業」が全国1269自治体で展開されている。アンケートでは、この一時預かりとの違いを明確にした方がよいという回答が、全体の65%に上った。多くの自治体が、既存事業とのすみ分けを求めている。

横浜市 もともと保育所や一時預かり専用施設があり、定期的な利用は可能。それぞれ月120時間の上限で受け入れており、週1、2回としているモデル事業よりも多く預かれる現状。試行的事業ではどうすみ分けていくのかが難しいところ。
福井県若狭町 もともと一時預かりでも定期的な利用が可能。保育計画や記録もしっかり付けるようにしている。
静岡県島田市 一時預かりと定期預かりのすみ分けが分からない。
愛知県大府市 一時預かりより、定期的に通える。
滋賀県近江八幡市 一時預かりとは違い、支援計画の作成や保育の状況の記録、保護者との定期的な面談などがある。

⑤職員の負担増の懸念

 モデル事業を実施する上での課題を挙げてもらったところ、「保育士を含めた職員の確保」(90%)に次いで「職員の負担増」(80%)との回答が多かった。単年事業で終わらせないために、こども家庭庁は現場の負担感をどう支えていくのか。

東京都八王子市 モデル事業を実施する意義は大いに感じるものの、アンケート結果の分析や効果検証について実施施設との調整にかかる負担感が大きい
中野区 未就園児家庭は、公的支援を受けづらいこともある中で、継続的な関わりが持てることは保護者の助けになっていると考える。一方で、施設の配置状況、運営状況を考慮する必要があり、専任の職員配置が求められると考えられるが、保育士不足の環境下において調整は困難。本事業の実施にかかる現場の負担感をどのように軽減させるのか。
福井県若狭町 個人面談の記録の作成や入力など、職員の負担が増える。
石川県七尾市 一定のニーズがあり、子育て支援として有効。一方で、全ての施設(園)で実施することは難しく、保護者や保育者への周知・理解を得ることが難しい

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本格導入に必要なものは? モデル事業の自治体担当者に聞きました

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