漫画家 あんど慶周さん 「変態仮面」の原点は兄貴との切磋琢磨「パンツを引っ張って肩に掛けたら…」

(2018年12月23日付 東京新聞朝刊)

家族のこと話そう

 

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兄との思い出について語るあんど慶周さん(加藤晃撮影)

面白さを競い合って切磋琢磨

 子どものころ、1つ上の兄貴とよく一緒に遊んだ。2人とも面白いことを考えるのが好き。寝転んでやかんから口に麦茶を注いで、耐えられるまで飲み続けるとか、バラエティー番組の罰ゲームみたいなことをして遊んだ。そういうことで面白さを競い合って、切磋琢磨(せっさたくま)していたね。

 「変態仮面」のキャラクターも、そんな兄貴との思い出が発想の始まり。小学3、4年のころ、兄貴と一緒に風呂に入るときにパンツを引っ張りあって遊んでいて、「パンツを引っ張って、肩に掛けたらすげえよなあ」という話になった。その姿を漫画で表現したら、みんな絶対に笑うだろうな、と思いついたのが「変態仮面」というヒーロー。

活発な兄、引っ込み思案な自分

 自分は口数が少なくて引っ込み思案で、物心がつくころから絵を描くのが好きだったけれど、兄貴は友だちが多くて活発なタイプ。何でも兄貴の方ができて、自分はいつもまねをして、くっついて回っていた感じ。漫画も、兄貴が持っていたものを読ませてもらっていたな。

 よく覚えているのが、ロボットの絵を描いたときのこと。兄貴は6本足ぐらいの無機質なロボットだったけれど、自分は黄色いヘルメットをかぶった人間型のロボットが、スコップを持って穴を掘っているような、漫画的な絵を描いた。兄貴はその絵を見た瞬間、「あれ?」という反応。「おまえ、うまいな」みたいな。あの空気感、今でもはっきり覚えている。ずっと兄貴の後ばかり追い掛けていたけれど、こういう分野はおれの方がすごいじゃんって。兄貴抜かしたぞ、みたいな気がしたね。

漫画にもアドバイスくれる兄

 専門学校を出てからデザイン事務所で働いたけれど、漫画家になりたくて3カ月で辞めた。漫画賞に向けて作品を描いて、応募前に兄貴に見せたら「面白いじゃん」。それが、初めての受賞作。賞を取った後、兄貴は「うん。おれはね、何かに入賞すると思ってた」と言っていた。別の作品だけど、「こうしたら面白くない?」と兄貴に言われ、その案が生かされたシーンもある。笑い、遊び、ギャグのセンス。兄貴の存在は大きかったと、あらためて思うね。

 おやじもなかなか愉快な人じゃないかな。まじめな性格だけど、だじゃれを連発するの。例えば、誰かに家族のことを紹介するとき、兄貴と自分を「長男は高2、次男は高1…」と紹介した後、両手を上げて「わしは降参(高3)」って。だじゃれはいくつかパターンがあって、言うたびに自分らは「もういいわ」と思うけど、人を笑わすのが好きなんだね。そういうのって、遺伝なのかなあ。

あんど・けいしゅう

 1969年生まれ、愛知県出身。89年にギャグ漫画を対象とする集英社主催の「赤塚賞」で佳作受賞。1992~1993年、女性用の下着をかぶったヒーローが悪を退治するギャグ漫画「究極!! 変態仮面」を週刊少年ジャンプで連載。2013年と2016年に、鈴木亮平さん主演で映画化された。

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