来年は親子で稲作体験はいかが? 田植えや稲刈り…各地で体験イベント 「生きる喜びを感じ、リフレッシュできます」

五十住和樹 (2020年9月11日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

 家庭や学校給食で子どもたちが毎日のように食べているお米。生育の過程を知り、自分で作ってみる体験は、食や命への関心を高めることにつながりそうだ。最近は農家や地域おこしの団体などが、田植えや稲刈りを体験できるイベントを各地で開いている。来年は親子で稲作を体験してみては。 

「ザリガニがいたよ!」

 「土があったかい!」。6月の週末、さいたま市郊外の広大な緑地空間「見沼たんぼ」の一角にある水田で歓声を上げていたのは、東京や同市内などから田植え体験に来た約20人の親子たちだ。参加者のほとんどが初体験で、イネを手にはだしで水田に入り、慣れない手つきで挑戦。30分ほどで植え終えた。

 体験イベントを主催したのは、一般社団法人「INAKA PROJECT」(さいたま市)。参加者は実際に田んぼに入る前に、田んぼや稲作についての基礎知識を学ぶ。INAKA PROJECTのスタッフが、大雨で急増した水を一時的にためて水害を防ぐなど田んぼの役割を解説。イネを観察し、3本一緒に植えることなど、注意点なども伝えた。

 8歳の長女と5歳の長男を連れて家族4人で参加した同市の杉山京子さん(44)は「食卓に出るご飯はどうやって育てられるのかを、子どもたちに知ってほしかった」と話す。東京都渋谷区の大隅浩太朗君(5つ)は「土がむにゅむにゅと軟らかい。ザリガニがいたよ」と笑顔。田んぼにはオタマジャクシなど多くの生き物がいることを知り、触れるのもふだんはなかなかできない体験だ。

お米を食べるのは命をいただくこと

 INAKA PROJECTの場合、田植えや稲刈りなどイベントごとの参加が可能で、1回の費用は大人も子どもも3000円程度。今年は7月の長雨の影響が心配されたが生育は順調で、今月半ばからの稲刈り体験では、鎌で手刈りし、はざにかけるまでを行う予定だ。

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田植えに挑戦する親子たち=さいたま市緑区で

 法人代表の平野史人(ふみひと)さん(36)は「土をはだしで踏むと、命をはぐくむ大地を感じることができる。親子で生きる喜びを感じ、リフレッシュできます」と、稲作体験の魅力を語る。「お米を食べるのは命をいただくこと、ということにも気づいてもらいたい」

 同法人では年間会員になり、種まきから田んぼに水を入れてならす代(しろ)かき、田植え、草取り、かかし作り、稲刈りなどをフルコースで体験できるコースも。収穫祭も開かれ、収穫量が十分なら、地元ブランド米「彩のきずな」十キロを持ち帰ることができる。

土地の食文化や生活文化を知るきっかけにも

 来シーズンに向けて農業体験イベントを探す場合は「TABICA」など体験型の催しを特集するインターネットのサイトを活用するのが便利。費用や自宅からの行きやすさ、どんな体験ができるのかなどを確認し、子どもの年齢など家族に合ったプランを探すことが大切だ。「準備する持ち物や注意点、雨天時の実施の有無などをメールや電話で確認できる主催者だと安心です」

 自然体験教育に詳しい北海道教育大岩見沢校教授の能條歩(のうじょうあゆむ)さん(57)は、稲作体験について「実際にイネを植えることで、子どもたちがいつも食べているコメを身近に感じるようになる」と指摘。「水田で生き物に触れることで、『自分も他の生き物に囲まれて生きている』と肌で感じて納得できると、自然への愛着も感じやすくなる。その土地の食文化や生活文化を知るきっかけにもなる」と意義を話す。

 子ども時代、見沼たんぼでザリガニ捕りや釣りに明け暮れたという平野さん。「自然豊かな田んぼの中で遊んだ経験が今の自分につながっている。子どもたちにも稲作体験を通して、楽しみながら『食』への興味を深めてほしい」と呼び掛けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年9月11日

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