災害時に子どもを守る「ママ防災」 草加市の母親たちが役立つ情報を発信

大沢令 (2021年3月24日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
写真

「ママ防災」代表の鬼塚麻美さん

 災害時に子どもを守れる母親を増やしたい。東日本大震災の被災地でボランティア活動をした埼玉県草加市の会社役員鬼塚麻美さんが市民グループ「ママ防災」を立ち上げ、母親向けに日常でも役立つ防災情報を発信している。 

キャンセル待ちが出るほど好評

 震災直後から宮城県や岩手県の被災地でボランティア活動をした鬼塚さん。「被災地で学んだ災害の恐ろしさや、備えることの大切さを伝えたい」と、草加市立氷川児童センターで防災バッグの作り方を話したことがきっかけで、地域の母親向けに防災講習会を開くようになった。2018年にグループを設立。3児を育てる代表の鬼塚さんをはじめ、約10人のメンバー全員が母親だ。

 子どもの防災バッグの作り方や救急手当て、心肺蘇生の方法や自動体外式除細動器(AED)の使い方…。講習会のテーマは参加者の要望も踏まえて決め、分かりやすく解説する。災害対応に女性の視点を反映させる必要性が指摘される中、講習会はキャンセル待ちが出るほど好評だという。

性被害から身を守るアドバイスも

 草加市の今年のハザードマップ改訂では一部を監修した。日ごろの備えとして生理用品や防犯ブザー、レトルト離乳食など女性や子育て世帯が準備しておくべき物品のチェックリストを掲載。寝袋など防災グッズは黒や緑色といった使用者の性別が分かりづらい色を選ぶこと、トイレに行く時は3人以上でグループ行動することなど、性被害から身を守るためのアドバイスも盛り込んだ。

写真

「ママ防災」が母親向けに開いた「便利な防災グッズの会」=草加市で(ママ防災提供)

 草加市危機管理課の岩城宏行課長は「保護者や女性の視点で分かりやすく、行政が気付きにくいことも指摘してもらった」と感謝する。

 鬼塚さんが防災情報の発信を始めた原点は、仙台市内で津波の被害に遭った夫婦との出会いだった。震災直後は危険区域で支援物資が届かず、海水に漬かった自宅の床や柱は1年後も塩が浮いた。「何かできることはないか」と申し出ると、女性は「忘れないで」と涙ぐんだという。

被災地からのバトンをつなげたい

 震災から10年。鬼塚さんは、その時の光景を今も胸に深く刻み、女性の言葉にどう応えればいいかを考え続けている。被災地ではがれきの撤去や泥のかき出し、農作業の手伝いなど復旧、復興への道のりに寄り添ってきた。被災地を離れても、災害から家族や地域を守る知識や技術を身に付けようと、防災や危機管理に関する資格を取得。グループの活動を通じて多くの人とノウハウの共有を目指している。

 いつ、どこで起きるか分からない災害に備えるため、「被災者の気持ちに寄り添い、被災地から受け取ったバトンを、災害から子どもを守る母親たちにつなげたい」と力を込めた。

 「ママ防災」は写真投稿アプリ「インスタグラム」(アカウント名=mamabousai)でも情報発信している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年3月24日

あなたへのおすすめ

PageTopへ