体が不自由でも、好きな服を諦めないで お直しサービス「キヤスク」誰もが着られる「SOLIT!」で広がる選択肢

海老名徳馬 (2022年9月5日付 東京新聞朝刊)

前開きに直したシャツを着る沖朝陽ちゃん(右)と、おそろいのシャツを着る双子の弟の大地ちゃん=母親の愛美さん提供

 着たい服を自由に選びたい-。そんな全ての人の望みをかなえようとする試みが始まっている。病気や障害で体が不自由な人を想定したお直しサービスや、性別や体形に縛られずにどんな人でも着られる服が登場。自分に合う服を見つけにくかった人たちにとっての選択肢が広がりつつある。

頭からかぶる服を「前開き」にお直し

 横浜市の沖朝陽(あさひ)ちゃん(1つ)は、頭の骨が変形する頭蓋縫合早期癒合症だった。骨を切って広げる手術を今年3月に受けてから半年ほどは、頭に防具を着ける必要があるため、頭からかぶるタイプの服は着られない。だが、新生児期を過ぎた子ども向けの前開きタイプの既製服は少ない。困った母親の愛美さん(37)が知人の勧めで利用したのが、既製服のお直しをするサービス「キヤスク」だった。

ボタンを面ファスナーに直したシャツ=コワードローブ提供

 専用サイトから申し込み、朝陽ちゃんの双子の弟の大地ちゃんと同じ頭からかぶるタイプの服を送ると、前開きタイプになって戻ってきた。「子どもたちにおそろいの服を着せられてうれしい」と愛美さん。追加注文を重ねて前開きの服は8着になった。

メニューは80以上 ズボンの横開きも

 お直しのメニューは、ほかにもボタンから面ファスナーへの変更やズボンの横開き、床擦れ対策など80以上あり、価格は1000円台から8000円ほど。障害のある子どもを持つ女性ら12人のスタッフが担当し、オンラインで詳細を打ち合わせた上で作業を進める。「シャツの前開きでも1センチ横にずれると開けやすさが変わる。具体的にニーズをイメージできるように要望を聞き取ることが大事」。運営会社のコワードローブ(千葉市)社長、前田哲平さん(47)は話す。

横開きに直したズボン=コワードローブ提供

 前田さんはもともと衣料品店ユニクロの経営部門などで働いていた。聴覚障害のある同僚から「周りの障害者が着る服の少なさに悩んでいる」と聞き、3年間で800人以上の当事者から困り事などを調査。「先に好みの服を選んで、後から着やすいようにお直しする」サービスを思い立ち、ユニクロを退社して昨年1月に起業した。今年3月にサービスを始めてから7月までで約140点の注文があったという。

袖も丈も…その人に合わせて受注販売

 障害や病気だけでなく、性別や体形にかかわらず身に着けられる服を生み出しているのが、2020年9月に誕生したブランド「SOLIT!(ソリット)」だ。アパレルや医療関係の有志らが運営。右袖や左袖といった部位ごとにサイズや丈の長さなどが選べるジャケットやシャツ、パンツを用意し、ホームページや各地で開く試着会で受注販売をしている。それぞれの好みや体の特徴に合わせて、1つの商品につき1600通り以上の選び方ができるという。

 基本のデザインは障害者や性的少数者を含む約40人の運営メンバーが話し合って決める。例えばジャケットは腕や肩の動きが制限される人が着やすいように、腕を入れる部分を広めにしながら、すっきり見えるように伸縮性のある素材を使うなど、見た目との両立にも気を配る。

 ホームページには車いす利用者や健常者が同じ服を着た写真が並ぶ。これまでの購入者の半分以上は健常者という。代表の田中美咲さん(34)は「誰もが着られるという考えに共感してくれる人が増え、想定以上に売れている。好みの服を着られない人の選択肢をどんどん増やしたい」と話す。

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