虐待や性暴力を受けた子どもの「司法面接室」 神奈川県立こども医療センターに開設 安心できる環境で被害を聞き取ります

米田怜央 (2023年2月16日付 東京新聞朝刊)
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子どもたちから被害を聞き取る面接室=横浜市南区で

国内3例目 小児専門では初

 虐待や性的暴行を受けた子どもたちに誘導なく被害を聞き取る「司法面接」のための部屋が15日、神奈川県立こども医療センター(横浜市南区)に開設された。院内に常設することで、治療が必要な子どもの負担軽減が期待される。開設したNPO法人「子ども支援センターつなっぐ」(同市中区)によると、国内の病院に置かれるのは3例目で、小児専門病院では初めて。

クラファンで目標金額の3倍集まる

 つなっぐはこれまでも医療センターの部屋を借り、専門スタッフによる聞き取りをしていた。聞き取りの結果は教育、医療などの現場で、本人に配慮が必要な際に活用できるという。2020年以降の実施件数は6件。今後の増加を見込み、常設の部屋を持つためにクラウドファンディングで資金を募り、目標金額の3倍以上の約930万円が集まった。

 司法面接を巡っては、警察、検察、児童相談所の職員が一度に聞き取る「協同面接」が広がっている。子どもたちがつらい経験を何回も話す心理的負担を減らすことができ、事件の証拠にもなる。法務省によると、2020年度は全国で2124件で、増加傾向にある。つなっぐは当面スタッフによる聞き取りを想定し、将来的には他機関との連携も視野に入れる。

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聞き取り前の子どもたちの待合室を紹介する田上幸治医師

診察と心のケアもワンストップで

 面接室にはスタッフと子ども用のいすを配置。状況は録音録画され、隣室で映像を通じて聞き取りの状況を確認するサポートスタッフが助言する。おもちゃやぬいぐるみが安心感をもたらす待合室も設けた。院内にあることで診断、治療がスムーズになるほか、入院中の子どもにも面接できる。

 つなっぐの代表理事でこども医療センターに勤務する田上幸治医師(54)は「子どもへの聞き取り、診察、心のケアをワンストップで対応し、負担を減らすことが大事。施設が広がるきっかけにしたい」と話した。

捜査や警察官の研修に協力 田上医師に感謝状

 神奈川県警は15日、児童虐待事件の捜査や警察官の研修に協力してもらったとして、田上幸治医師に感謝状を贈った。

 田上医師は2016年から警察官らを対象に、子どものけがが暴行か事故かをどう判断するかなど、医学的な勉強会を定期的に開いている。個別の事件で意見書も出してきたという。一方、県警は20年から児童虐待を専門とする班を設置し、捜査のほか、児童相談所、医療機関との連携を強化している。

 田上医師は「今後とも子どもの明るい未来のために頑張りたい」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月16日

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