「禁止看板だらけの公園」に反響 「ベンチに座るだけ。誰のための公園か」「そばに住めばつらさが分かる」
練馬区公園の禁止看板
東京都練馬区が管理する「いずみの里公園」では2017年の開園から6年間で、禁止事項などを記した看板が24枚も乱立。本紙は2月20日朝刊で「注文の多い公園楽しめますか」との見出しで報じた(東京すくすくでも「注文の多い公園、楽しめますか? 24枚もの禁止看板 練馬区の担当者に疑問をぶつけると…」として同日公開)。区議会でも議題に上り、担当者は「苦情への対応に苦慮しており、やむを得ず看板で注意喚起している」と述べた。
サッカー禁止なのに、ボールの音が…
江東区で生まれ育った女性(63)は「最近、目の前の公園でも禁止看板十数枚が続々と立ち始めた。これも時代の流れなんですか」と驚く。神奈川県鎌倉市の原均さん(71)も「近所の公園はあれもダメこれもダメで、ベンチに座ることしかできない。寒い日は誰もいない。誰のための公園か疑問だ」と規制だらけの公園に異を唱える。
一方、節度を欠く利用で困っている住民もいる。
豊島区の50代女性は「サッカー禁止なのに、子どもたちが金網やごみ箱にボールをけり続ける。音や振動がひどく、精神的に疲れる」と困り果てる。
「騒音のあるそばに住んでみて、そのつらさが分かるもの」と看板設置に理解を示すのは、ペンネーム「華蘭(からん)」さん(65)。「今はへたにしかるとトラブルになりかねない時代。看板を立てるのも仕方ない。せめて看板を見て相手を思いやることを学んでほしい」
子ども、保護者、お年寄りが話す場を
品川区で子育て中の丸原亜紀子さん(51)は「子どもが2歳ぐらいの時は、小学生のボール遊びが怖かった」と振り返りつつ、看板で一方的にルールを押しつけるやり方には疑問を抱く。「当事者である子どもや保護者、地域のお年寄りが話し合う場を設け、みんなでルールを作るプロセスが大切では」
東京都昭島市の松田直之さん(81)は「ただ立て札を立てるのは、子どもたちへの愛が足りない」と力を込める。「子どもの時、やんちゃをすると雷じいさんにしかられた」と自らの幼少期を引き合いに、昔と比べて地域のコミュニケーションが不足していることが看板頼みにつながっていると感じている。
ペンネーム「ひろちゃん」さん(58)も「普段からあいさつなどでコミュニケーションを保つことで、騒音も気にならなくなるのでは」と説く。
60代の河盛恵美子さんは「練馬区の件は迷惑行為を禁止することばかりに目が向いている」と指摘した上で、地域の良好な関係づくりに公園を有効活用しようと提案する。
「公園が紙芝居や絵本の読み聞かせなど住民が集う場になれば、自然とコミュニケーションが取れて、互いに理解できるようになる。看板による対話ではなく、人と人が直接対話することが大切ですね」
対策とったら別の苦情 品川区「模索し続けるしかない」
本紙報道は、公園管理者の自治体にも波紋を広げている。
「東京新聞の記事を読んで、『ウチはどうする?』と話し合いを始めたところです」。品川区の公園課の担当者はそう打ち明ける。
担当者は「練馬区とまったく同じ状況。おそらく都内23区はどこも同じ悩みを抱えている」と続けた。品川区でも、禁止看板が20枚も30枚も立っている公園があるという。
品川区では、利用者のすみ分けを図ろうと、公園敷地の一部をフェンスで囲うなどした「ボール遊びのできる公園」の整備を進めてきた。ただ、区内273カ所の公園のうち、整備されているのは1割にも満たない。逆に、近隣住民からは「ボールが金網に当たる音がうるさい」という苦情が寄せられ、担当者は「いたしかゆしだ」と頭を抱える。
区では現在、「看板を集約しては」「看板の文言を『○○禁止』から『静かに遊んでくれてありがとう』という表現に変えるのはどう?」とアイデアを出し合っている。担当者は「『これをやれば解決』という策はなく、模索し続けるしかない」と話している。
コメント