国籍のない子どもが増えています 必要な支援は? 交流に力を入れる学生団体「他の子と違わない」

(2023年5月5日付 東京新聞朝刊)
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マレーシアで無国籍の子どもたちと交流する田中瞳子さん(左)=田中瞳子さん提供

 国籍は人と国家を法的に結び、教育や医療を受けたり、仕事に就いたり、結婚したりするのに大切なものだ。だが、どの国の国民とも認められない無国籍者が世界で少なくとも430万人いるとされる。日本では政府統計で500人近くいるとされるが、このうち子どもの人数が10年前より増えており、子どもへの支援が重要になっている。

将来、結婚や就職での困難も

 無国籍者を支援する大学生の団体「無国籍ネットワークユース」(Stateless Network Youth=SNY)は、学習支援などを通した子どもたちとの交流に力を入れる。

 「気温の上がり方が一番大きいのは何月と何月の間?」。新年度の開始後の日曜日、メンバーで国際基督教大3年の田中瞳子さん(20)が、オンライン会議システムで東京都内と群馬県館林市をつなぎ、小学4年の男の子と算数の折れ線グラフを復習していた。2歳下の弟も画面に顔を出す。

 兄弟は日本で暮らすミャンマーの少数民族ロヒンギャの両親の元に生まれ、地元の学校に通う。ただ、ロヒンギャはミャンマー政府から迫害され国籍を与えられていない。学習支援を始めて1年半。脱線しておしゃべりになることも多いが、兄弟は「今週もできる?」と連絡してくるほど楽しみにしている。

 田中さんは3月、SNYの活動でマレーシアに赴き、無国籍の子どもたちと交流した。親が正規の仕事に就けなかったり、家を借りられなかったりして、生活環境は厳しかった。医療が受けられない子もいた。

 ロヒンギャの兄弟のうち兄には歯科医師になる夢がある。弟も「お医者さんになって病気や薬のことを調べたい」と話す。田中さんは「無国籍でも他の子と違わない。でも、このままだと将来、結婚や就職などで壁にぶつかるかもしれない」と心配する。

国籍の取得

 生まれた子に親と同じ国籍を与える「血統主義」(日本、中国など)と、その国で生まれたことに基づく「出生地主義」(米国、ブラジルなど)に大別される。無国籍の背景には、移住先で滞在資格がないことなどを理由に親が子の出生登録をしていない場合や、国の主権や外交関係の変化、民族的な差別などの理由がある。

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SNYとともに活動する無国籍ネットワークの代表理事で早稲田大教授の陳天璽(ちんてんじ)さん

早大教授の陳天璽さん 自身の経験を絵本に

 出入国在留管理庁の2022年6月調査によると、国内の無国籍者は487人で、2012年12月の620人より減った。一方で18歳未満は95人から122人に増えた。

 ただ、調査は在留資格者に限られ、SNYとともに活動する無国籍ネットワークの代表理事で早稲田大教授の陳天璽(ちんてんじ)さん(51)は「実際にはもっと多い」と説く。在留カードに書かれた国籍が登録されていない場合もあり、旅券や婚姻の申請時に初めて自分が無国籍と分かる人もいる。

 陳さんは「日本に無国籍者を規定する法律がなく、行政支援も不十分だ」と訴える。国連難民高等弁務官事務所は、日本政府に無国籍者を正しく把握する制度の導入を求めている。

 30代で日本国籍を得た陳さんは、かつて国籍を持たなかった。台湾から横浜に移住した両親は、1972年に日本が台湾と国交を断絶したことで、悩み抜いて無国籍となった。昨夏、陳さんはかつての自身をモデルにした絵本「にじいろのペンダント 国籍のないわたしたちのはなし」(大月書店)を出版した。部屋を借りられない、就職を断られる…。主人公のやり場のない思いが描かれる。

絵本「にじいろのペンダント」

 絵本には「私たちは国籍がないだけで何かが欠けているわけではありません」というセリフもある。陳さんは「無国籍の子どもに自信を持ってほしい。周りの子どもたちには、さまざまな境遇の子がいると知ってほしい」と願う。

 絵本は大月書店のウェブサイトから試し読みができる。 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年5月5日

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