夜泣き、お漏らし、赤ちゃん返り…避難先での乳幼児と親の心のケアは? スキンシップと「自分の時間」を大切に

藤原啓嗣、熊崎未奈 (2024年2月1日付 東京新聞朝刊)
 能登半島地震が発生して1カ月が経った。石川県七尾市や能登町など、被害が大きい市町でも保育所などが再開し、未就学の子どもたちが活動する場は徐々に広がってきた。ただ、現地で被災した乳幼児や保護者を支援した人たちは、異変を察して心のケアをする重要性を訴える。気を付けるべきポイントを取材した。
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1月22日に再開し、子どもたちの姿が戻った保育所=石川県能登町で

ストレス募る時期「遊べる場の確保を」

 「夜泣きがひどくなり、トイレトレーニングが終了していたのに、お漏らしするようになった。どうすればいいのでしょう」

 能登町で被災した30代の女性が悩みをはき出した。保育園児の2人の娘がいて、再開した保育所に通い始めたが、地震後は避難所で暮らすなど生活が激変。子どもの様子も変わり、赤ちゃん返りして甘えるようになったという。

 子どもも親もストレスや不安が募る時期。「同じように子どもを育てている仲間で集まって、子どもが遊べる場を確保するのが大事」と話すのは、一般社団法人「こども女性ネット東海」(名古屋市)の藤岡喜美子執行理事(69)だ。

乳幼児健診など相談の機会がなくなる

 こども女性ネット東海は昨年、被災時に子どもや女性目線の支援が広がることを目指し、女性の防災リーダーを養成する講座を開いた。今回の地震後、修了した有志の女性を募って、1月10~12、21~23日に七尾市の避難所の運営を手伝った。

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被災した母親に代わって、避難所で子どもをあやす支援者=石川県七尾市で(こども女性ネット東海提供)

 複数の避難所を回り、生後3~6カ月の乳幼児を育てている4人の女性から相談を受けた。「母乳の出が悪くなったがミルクに切り替えてもいいのか」「離乳食を始めようとしていたが、今後どうするか」と悩む人も。また、子どもが避難所を走り回って周囲の人に迷惑をかけるのではと気にする保護者もいたという。

 普段は、乳幼児健診などで医師や保健師に相談できるが、被災するとこういった機会から遠のく。藤岡さんは「避難所を訪れた保健師をつかまえたり、電話などで相談できる窓口を利用したりして、悩みを抱え込まないで」と呼びかける。

遠慮せず託児 親も自分の時間を持つ

 東洋大の准教授で、NPO法人「災害時こどものこころと居場所サポート」の小野道子代表理事も、保育所や避難所に開設された子どもの居場所や一時保育などを活用し、保護者自身が自分だけの時間をつくることを勧める。親が不安だと子どもの不安も増す。「預けることに罪悪感を持たないでほしい。被災時は自宅の片付けなど忙しくなるので、自身のケアも忘れないで」と訴える。

図解 乳幼児を育てる保護者へのアドバイス

 一方で避難所や地域に、子どもや乳幼児を持つ保護者が、一緒に安心して過ごせる居場所をなるべく多く設けることを提案する。小野さんは2019年、台風19号で被災した長野市でそういった居場所を開設し、子どもが元気を取り戻す様子を目の当たりにした。「子どもは遊びで自分を表現する。一緒に遊ぶことで人間関係もできてくる」と小野さん。

 理想は、避難所などでも活発に遊べる場や静かに過ごす場など、パーティションなどで区切り、用途や年齢別に過ごせる場をつくること。「居場所では子ども同士はもちろん、保護者も情報交換できる。スタッフが専門機関につなぐこともできて、心のケアと居場所は密接につながっている」

動画より簡単な遊び 日常を取り戻す

 被災した子どもたちは環境が変わると、不安感が大きくなる。指しゃぶりを始めたり、おむつが取れていたはずなのにおねしょをしたりすることもある。小野さんは「甘えさせてあげたり、だっこしたりしてあげて、普段よりスキンシップを多めに」とも助言した。

 藤岡さんは今回の被災地に、支援物資としてクレヨンや塗り絵、折り紙を届けた。避難所などでは、子どもはスマートフォンなどで動画を視聴することが多くなりがち。「新聞紙など身の回りにあるもので折り紙など簡単な遊びをして、子どもが自分で工夫できる遊びに導くことができれば。災害時を日常から切り離して考えるのではなく、いかに日常を取り戻すか工夫してほしい」と話す。

 石川県こころの健康センターではホームページに被災者向けの対応や子どもたちへの接し方、LINEや電話で子どものことを相談する手段も掲載している。

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