歌手 AIさん 一人で何でもやってきたと思っていたけど、子育てを通じて一人じゃないんだと気付かされた

斉藤和音 (2025年11月30日付 東京新聞朝刊)

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自身の家族について話す歌手のAIさん=東京都渋谷区で(芹沢純生撮影)

カット・家族のこと話そう

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです

倒れてからポジティブに変わった母

 母は日系人とイタリア人のハーフ、父は日本人で、米ロサンゼルスで生まれました。父の生まれ育った鹿児島に来たのは2歳ごろ。当時ママは日本語を話せず、字も読めませんでした。買い物に行っても、塩と砂糖が分からないほど。父は仕事で家を空けていることも多く、よく泣いたり怒ったりしていました。

 小学4年の長女と1年の長男を育てている今だからこそ、幼い私と妹を育てたママの大変さがよく分かります。ママはストレスで倒れてしまったことがあり、その時から変わりました。朝起きると「今日は最高! ハッピー!」と声に出すなど、ポジティブな言葉ばかりを口にするように。「私は変わるんだ」と、意識的にそうしていたことを後になって知りました。

 そんなママは今、超ポジティブで誰に対しても優しい人。いらつく時も泣く時も、疲れている日もあると思うけど、常にみんなに元気をあげている。自信を付ける言葉を伝えている。すごいパワーですし、いつも尊敬しています。

 家の中では、ママが大好きなR&Bやジャズ、ソウルミュージックが常にかかっていて、多くの音楽に触れました。高校はロサンゼルスの学校に進学。ママは全然心配していなかったと思います。それぐらい信用してくれていた。ご飯や洗濯、掃除など、一人になって初めて、親のありがたみを実感しました。

子どもにイライラしてしまう時も

 結婚し、子どもが生まれると生活が一変しました。仕事を早く終えて帰らないと、翌朝5時からの弁当作りが待っています。授乳で数時間おきに起きる日々で鍛えられ、早起きはすっかり慣れました。

 子どものころ、英語で怒るママがすごい怖かった。ママにしかできないと思っていたけど、今は自分も怒り方が似てきたなと思います。危ないことは注意しますが、褒める時は思いっきり褒めます。手伝ってくれたり、長女が弟に優しくしたり。何か良いことをした時はこの世で一番すごいというくらい褒めます。

 子どもたちはたくさんのパワーをくれます。「この子たちを守るためなら何でもできる」と思え、仕事を頑張る力にもなります。ただ、やっぱりイライラしてしまう時もあって、そんなきれいにはいきませんね。

 親はなくとも子は育つといいますが、子育てを通して、人は勝手には育たないと分かりました。自分は一人で何でもやってきたと思っていたけど、両親や周りの人たちに見守られてここまで来ることができた。一人じゃないんだと気付かされました。

 子どもたちには「人と同じじゃなくていい。本当にやりたいことをやればいい」と伝えています。音楽も一緒。自分が本当に良いと思うものを皆さんにお届けできたら良いなと思っています。

AI(あい)

 1981年、米ロサンゼルス生まれ。鹿児島市育ち。「Story」「ハピネス」をはじめ数多くの楽曲でミリオンヒットを放つ。デビュー25周年を記念したツアーが11月、日本武道館でファイナルを迎えた。21日には、これまで歌と声を通して届けてきた思いをまとめたメッセージブック「ひとりじゃないから」(幻冬舎)を発売した。

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