大田区の3歳女児死亡 母親自身も両親からネグレクトされていた 止められなかった虐待の連鎖

逮捕された梯沙希容疑者(左)と亡くなった長女の稀華ちゃん=知人提供
「のんたん」と呼んでかわいがっていた
母子家庭の2人は、川沿いに立つマンション1階の1DKで3年前から暮らしていた。近くのコンビニ店の女性によると、梯容疑者は娘を「のんたん」と呼んでかわいがり、「仲がいい親子だった」と話す。
捜査関係者によると、梯容疑者が6月13日まで8日間過ごした鹿児島県の交際男性の元から帰宅すると、稀華ちゃんはごみが散乱する6畳居間のマットレスの上で亡くなっていた。
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梯容疑者は「お茶やお菓子を置き、豆電球とエアコンをつけておいた」と供述しているが、死因は飢餓と脱水。捜査関係者は「泣いて疲れて、眠って…。それを繰り返し、衰弱していったんだろう」と唇をかむ。
近隣住人、稀華ちゃんの存在すら知らず
部屋の間仕切りは外側からソファでふさがれ、ベランダ側の窓は施錠されていた。捜査員が隣室の声や物音がどの程度聞こえるか実験した際も、ほとんど聞こえなかった。隣人や上の階の住人は、稀華ちゃんの存在すら知らなかった。

亡くなった梯稀華ちゃん=知人提供
梯容疑者は1歳半ごろまで稀華ちゃんを遊園地に連れて行くなどしており、インスタグラムに仲むつまじい様子の写真を載せていた。昨年春ごろ、稀華ちゃんを保育園に通わすのをやめ、同じころ、JR品川駅近くの居酒屋で働き始めた。
勤務中、稀華ちゃんを部屋に一人で残し、仕事後にパチンコに興じて帰宅が深夜の日もあった。勤務先には「他の人が面倒を見ている」と伝えていたという。
3歳児健診を受けず 児相も気づかず
捜査関係者によると、防犯カメラの映像から5月上旬以降、稀華ちゃんを外出させておらず、5月8~11日にも一人で鹿児島に出かけていた。
梯容疑者も小学生の時、実母と養父から身体的虐待や育児放棄を受けて保護され、18歳まで宮崎県内の児童養護施設で過ごした。捜査関係者は「自らも虐待を受けて育ったことで、育児放棄に抵抗感が少なかったのかもしれない」と話す。
3歳児健診を受けさせておらず、児童相談所も育児放棄を把握していなかった。防ぐことができなかった虐待の連鎖。コンビニ店の別の女性は「もっと周囲に頼ったり相談したりしていれば、事件は防げたかもしれない」と声を落とした。
虐待加害者の特徴 「前回は大丈夫だったから」と自分を正当化
◇虐待問題に詳しいNPO法人「チャイルドファーストジャパン」の山田不二子理事長の話
ネグレクト(育児放棄)を含む虐待事件の加害者は「前回大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」と自分を正当化して虐待を繰り返し、次第に制御が利かなくなって子どもを死に至らせてしまうことがよくある。今回のようにほかに養育者がいない母子家庭で母親が仕事をしているケースは、危機感を持って対応しなくてはいけない。区や保育所、要保護児童対策地域協議会の中で情報共有が適正にされていたのか、検証する必要がある。
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