〈新年のごあいさつ〉工夫や我慢では解決しないことを変えていくために

写真 階段を上がる親子

 年末に1本の映画を見ました。2021年に公開された「護(まも)られなかった者たちへ」(中山七里原作、瀬々敬久監督)。阿部寛さんや佐藤健さんらが登場する、生活保護の申請や受給をテーマに据えた物語です。その作品の中で、ある人物が、理不尽な状況に置かれた人たちに対して「声を上げてください」とSNSで呼びかけるシーンがありました。

 すくすくでも折に触れ取り上げてきた、学びたいのに機会を得られない子どもたちや、進学させてあげたいのに経済的な状況がそれを許さない家庭、過酷な勤務状況にある保育士たちの存在が重なりました。

 誰もがおかしい、このままでは誰かが倒れてしまう、心を病んでしまうと思いながら、いまだ変わらないことが、たくさんあります。現場や家庭の工夫で吸収できることには限度があります。子どもや子育てをめぐる制度を変えたり新設したりすることでしか解決できない現状を動かすには、政治の力が必要です。

 今年4月に発足するこども家庭庁の2023年度予算案が出ましたが、2022年度の子ども関連予算と比べて2.6%の増額にとどまっています。これに対して、防衛費の伸び率は桁違いの26%。政府は子ども関連予算の「将来的な倍増」を掲げますが、程遠い数字だと言わざるを得ません。

 2023年は統一地方選の年です。投票率の低さが毎回指摘される子育て世代ですが、近年、この層の票が結果を左右したのではないかとみられる選挙がいくつかありました。杉並区長選、品川区長選で、ともに40代の女性区長が誕生したのは記憶に新しいでしょう。もちろん、必ずしも女性である必要はありません。子育て世代の声や現実を知り、本当に意義のあることは何かを理解し、政策に反映できる人であることが重要です。

 おかしいと思うこと、工夫や我慢では解決しないことが、身の回りにありませんか。日々の暮らしを送るのにせいいっぱいで、役所の窓口や地域の議員を訪ねて直接声を届けることは難しい人も多いかもしれません。それでも今は、自治体がホームページを通じて募るパブリックコメント(意見公募)や「区長(市長)への手紙・区民(市民)の声」などにスマホから意見を書き込むことができる時代です。

 すくすくにも、記事へのコメント欄「すくすくボイス」や投稿フォームを通して、みなさんの声を受け取る仕組みがあります。みなさん自身のやりやすい形で、ぜひ声を上げてください。今年も引き続き、子育ての心配ごとや子どもをめぐる制度への疑問をこのサイトを通じて受け止め、子どもとかかわる皆さんと一緒に答えを探していきます。

 本年も、どうぞよろしくお願いします。

(東京すくすく編集長)

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