施設を巣立った子どもの「実家」になりたい 里親経験のある建築士が茅ケ崎に「南湖ハウス」開設

石原真樹 (2022年2月8日付 東京新聞朝刊)
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2階建ての南湖ハウス=茅ケ崎市で

子どものあした

 18年間、里親をしてきた神奈川県茅ケ崎市の建築士の女性が昨年、児童養護施設で育った若者らが安心して過ごせる「実家」のような場所を地域につくろうと、一軒家「南湖(なんご)ハウス」を建てた。居場所づくりのほか、里親や社会的養護についての学習会や、子育て広場などにも取り組み「子どもや若者を大切にする社会」を目指す。

勉強会や子育て広場 個室で宿泊できる

 南湖ハウスは昨年7月、茅ケ崎市南湖の住宅地にオープンした。2階建てで、1階のリビングと台所を使って勉強会や子育て広場などを開く。2階には個室が3つあり、今後、子育てに疲れた親が一休みする間の子どもの一時預かりや、児童養護施設を退所した若者の宿泊などを想定している。

 立ち上げた松本素子さん(60)は、テレビで見た児童虐待死事件のニュースをきっかけに2003年に里親登録し、翌年、2歳半の男の子の里親になった。2人の実子が幼かったこともあり、常に一緒に住むのではなく、年に数回、2泊3日ほど自宅で受け入れる「3日里親」になった。

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「里子と撮った写真はアルバムにして大切にしている」と話す松本さん

 一緒にご飯を作って食べたり遊びに出かけたり、男の子がいずれ施設を出たときに困らないように「家庭」を経験してもらうことを心がけたという。男の子が里親制度から外れる18歳になるまでには、担当する児童相談所の児童福祉司の異動や施設の転園があり、その子の成長に息長く関わり続ける里親の存在の大切さを実感した。男の子は19歳になった今も、松本さんの自宅に遊びに来る。

施設出身者がスタッフに 交流会も企画

 里親を増やしたい。施設や里親を「卒業」した若者を支えたい。そもそも、施設や里親家庭で暮らさなければいけない子を減らしたい―。勉強会「早稲田大学里親研究会」に入って学ぶほど、思いは強まった。今回、義母の土地を使わせてもらえることになり、南湖ハウスを建てた。

 幼い頃から施設で育った県内の男性(24)はスタッフとして勉強会で当事者の立場から意見を出したり、施設出身者らの交流会を企画したりしている。「施設では大勢で暮らしていたのに、自立すると家で1人。南湖ハウスでわいわいするのは気を使わなくていいし、とても楽」と話す。

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今後の活動について話し合う松本さん(左)とボランティアら

 松本さんは今年「子どもの権利」をテーマに、施設で暮らした経験のある若者の講演会や里親を取り上げた映画鑑賞会などを企画している。「子どもの泣き声が聞こえたら、おかずを一品持って『どうしたの?』と声をかけられる地域にしたい。そこから、里親や社会的養護への関心も広がっていったら」と願う。

 活動予定などは南湖ハウスのホームページで紹介している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年2月8日

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