子ども食堂で「学校では学べないお金の話」 将来の自立のため、FPが金銭教育

(2022年6月20日付 東京新聞朝刊)

お小遣いの使い方などについて、子ども(左)と話す金森さん(右)と小島さん=名古屋市昭和区のつなぐハウスで

 学校や家庭に続く「第3の居場所」として、さまざまな子が集う子ども食堂。そこを使って、お金にまつわる専門知識を持つファイナンシャルプランナー(FP)らが金銭教育に取り組んでいる。学校の授業はお金について教える機会が少ない上、金銭感覚は家庭によって違う。お小遣いなど身近なテーマに関する対話を通じて、経済的に自立できる力を身に付けてもらうのが狙いだ。

身近なお小遣いから投資の話まで

 「月のお小遣いはいくら?」「1000円」「必要な時にもらう」…。5月中旬、名古屋市昭和区の子ども食堂「つなぐハウス」。首都圏や東海圏の女性FPやキャリアコンサルタントらでつくる一般社団法人「ウーマンライフパートナー」(東京)メンバーの金森美津子さん(71)と小島邦代さん(57)が、放課後に集まった小学生10人ほどとお小遣いの話で盛り上がった。

 「月1000円のお小遣いがすぐなくなる」と打ち明けたのは6年生の小出実央さん(11)。夕食までにおなかがすいて、よくコンビニでお菓子を買うという。金森さんは「買うなら腹持ちのいいパンの方がいいんじゃない?」と、金額がかさまない使い方を提案した。さらに、友達が貯金をしていると話すと、小出さんは「自分もためてみよう」と前向きに。小島さんは「できる範囲で、例えば100円ずつためてみたら」と助言した。

 ウーマンライフパートナーは女性FPの有志らが2020年3月に設立。離婚や非正規雇用など、さまざまな理由でお金の悩みを抱える女性らを支えようと、傾聴活動やセミナー開催に取り組んできた。子ども食堂での勉強会は、2021年3月に東京都大田区の「気まぐれ八百屋だんだん」で開いたのが最初で、主に高校生以上の若者を対象に家計管理や税金、社会保障、投資について学ぶ内容。今年5月から名古屋のつなぐハウスに活動が広がった。

基本知識の有無が人生を左右する

 小島さんは企業の経理担当や、ひとり親家庭に向けた自治体の支援員などを経験。そうした仕事を通じて出会ったのが、税控除を受けられるのに書類を出さない人、将来の年金などの保障を理解せず、目先の手取りが減るからと社会保険に入らず非正規雇用で働き続ける人たちなどだ。「基本的な知識の有無は人生を左右する」と早いうちから教える重要性を痛感。地域の子どもの居場所として定着した子ども食堂で開く勉強会のメンバーに加わった。

 つなぐハウスを運営する一般社団法人「つなぐ子ども未来」代表理事の安藤綾乃さん(46)は「お金がある人もいれば、ない人もいるし、どう使うかも人によって違う。他人と違ってもいいんだとか、いろいろ考えるきっかけになればいい」と話す。

 ウーマンライフパートナーは、つなぐハウスとだんだんでそれぞれ月1回のペースで活動。参加するメンバーも募っている。問い合わせは電話=050(5358)9673=で受け付けている。

日本の家庭は「お金の話」が少ない

 金融広報中央委員会は2019年、18~79歳の2万5000人を対象に金融リテラシー調査を実施。それによると、家計管理や金融知識への理解度が高い人ほど「期日に遅れずに支払いをする」「緊急時に備えた資金を確保している」などの割合が高く、「老後の生活費の資金計画がない」「金融トラブル経験」などの割合は低かった。

 金融経済教育に詳しい愛知産業大の奥田真之教授は「日本は欧米諸国と比べ、家庭でお金の話をする機会が少ないとされる」と指摘。「子どもはいずれ自分で家計を運営する。お金に困らない人生を送るためのリテラシーを身に付けさせることは、『誰一人取り残さない』というSDGsにもつながる」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年6月20日

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