子連れ選挙運動は公選法違反ではありません 「通報されそうになった」経験者が新プロジェクト 議員を目指す親を支援します

(2022年10月16日付 東京新聞朝刊)
 子育て世代の声を政治の現場に届けようと立候補した候補者たちが、子どもを連れて選挙運動したところ、公職選挙法違反などと批判されることに悩まされている。立候補を躊躇(ちゅうちょ)する原因にもなっているため、選挙で同じ経験をした有志ら3人が23日から、子育てしながら地方議員を目指す親を支援する「こそだて選挙ハック!プロジェクト」を始動させる。

図解 公職選挙法の規定と「子連れ選挙」に関する見解

公選法137条の「18歳未満」とは

 「選挙運動中に子どもを連れていたら通報されそうになった」「対抗陣営に子どもを連れていないかチェックされた」-。発起人の1人で、3歳の子どもを育てながら今年の参院選に東京選挙区から出馬したフリーランスの田村真菜さん(34)。選挙後、自身の子連れ選挙を報じた記事を見た地方議員や元候補者からこうした声を聞いた。

 家族の協力が得られないなど、さまざまな事情で選挙運動中に子どもを同行せざるを得ない候補者がいる。最大の悩みは「年齢満18年未満の者は、選挙運動をすることができない」とする公選法137条への対応だ。親の横で子どもが有権者に手を振れば禁止行為にあたる可能性がある。

 田村さんも「選挙管理委員会に違法ではないと確認した行動でも、詳しく知らない人から通報されたり、批判されたりすることがある」と体験を語る。

具体的な禁止行為は? 個別に相談

 来春の統一地方選を半年後に控え、誰でもためらいなく選挙運動できるよう後押ししたいと、プロジェクトを始めることにした。法律で禁止されているのは具体的にどういう行為なのかなど、候補者の個別の相談に応じる。共に行動するのは、神奈川県鎌倉市議と女性議員のサポート団体代表で、統一地方選に挑戦する人を募っている。

 総務省によると「単に一緒に連れて歩くことのみをもって直ちに抵触するものではない」(担当者)。具体的にどこまで許されるかは、個別ケースでの判断となるため、迷う候補者は多い。他の陣営から選挙違反と言われないために「子どもは一切連れてくるなと言われた」(元参院議員)という候補者も少なくない。

都選管委が見解を公表 同行はOK

 東京都選挙管理委員会は参院選後、ホームページ上の「Q&A」に子連れ選挙に関する見解を加えた。「選挙運動にあたる場合がある行動」を明示したほか、候補者やスタッフと子どもが同行すること自体は禁止されていない旨などを説明。こうした見解を明示するのは珍しく、先進的な取り組みといえる。

子どもを連れて選挙運動をすることはできますか。

18歳未満の者は、ポスター貼りなどの単純労務に従事することを除き、選挙運動をすることが禁止されております。

単に候補者やスタッフと一緒に子どもが同行すること自体は禁止されておりませんが、有権者に対し直接働きかける行為(例えば、選挙運動用自動車に乗車して無言であっても有権者に対して手を振ることや、街頭演説で与えられた原稿を機械的に読み上げる行為等)は、禁止されている「選挙運動」に当たる場合があります。

(東京都選挙管理委員会ホームページ「選挙Q&A」(選挙運動と政治活動)から)

 選挙制度に詳しい東北大大学院の河村和徳准教授は「都の見解は全国各地で通じるはずで、候補者は自身の選挙区の選管に確かめてほしい」と指摘。その上で「根本的解決には子育て中の候補者が望めば誰でも、負担なく子どもを預けて活動できる仕組みを整えることだ」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年10月16日

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