〈坂本美雨さんの子育て日記〉91・初めて見る娘のいろんな顔 6年前ミラクルが起きた場所で

一枚一枚、ギョーザの皮を作るなおこさんと娘

行き先はカナダ 娘との旅
娘の10歳の誕生日から始まり、めいっぱい動き回った夏休みももう終盤。まだ終わらない宿題の行方が不穏ではあるけれど、遊び尽くそうと決めた夏休み。今年は、長めのお休みが取れたら娘と旅がしたいと常々願っていたことがかない、ふたりで濃密な時間を過ごしてきました。
行き先はカナダはブリティッシュコロンビア州。しばらくバンクーバーに滞在した後、フェリーで南ガルフ諸島のソルトスプリング島へ。
どうしても娘を連れて再訪したかった島。この連載でも書いたことがある、6年前、当時4歳だった娘と島を訪れた時のこと。島を離れるフェリーが出航したすぐ後、娘が公園に大切なポーチを置き忘れたことが判明。大泣きする娘にもらい泣きしながら、もしかしたらと思いSNSに書くと、それを見た方が島に住む知人の女性に連絡してくださり、その方がすぐに捜しに行き発見してくれて、ポーチが娘の元に戻ってくるというミラクルがあったのでした。
鳥が海を越えてポーチを運んでくれるというすてきな手作り絵本を添えて送ってくださったその女性は島に住むアーティストで、彼女に会いたいというのが今回の旅の目的の一つ。
心がぶわんと開いていって
彼女の名前は、なおこさん。カフェで待ち合わせした彼女は、大きな麦わら帽子を傍らに、熱心に絵を描いている姿が島に溶け込んで、ずっと眺めていたくなるたたずまいだった。
初めましてー!とハグし合うと、なんとも不思議な懐かしさ。なおこさんと市場を散歩し、ポーチを見つけてくれた公園で遊び、すぐに娘も私も心がぶわんと開いていくのを感じていました。「明日も夜ごはんを」と誘ってくださり、訪れたのは彼女が一緒に暮らしている、この島に長く住む日本人家庭の素晴らしいファームの中にあるおうち。大きなワンちゃんや鶏たちが迎えてくれて、娘はすぐにトランポリンへ走り出す。そこには、家や畑からギョーザの皮まで、自分たちの手で作りあげていく暮らしがあった。
荒々しく自生したブラックベリーの甘くふっくらした実を選んでせっせと摘む娘、くれくれとせがむ鶏たちの勢いに逃げ腰になる娘、星空の下で入る薪(まき)でたいたお風呂でホカホカになる娘。初めて見る娘のいろんな顔にいちいちうれしくなる。
均等じゃないギョーザの皮の厚みに笑いあうなおこさんと娘を見つめながら、この不思議なご縁をかみしめた旅。記憶はすぐに薄れるけれど、娘の体のどこかに残るといいな、そう願っています。
坂本美雨(さかもと・みう)
ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。
6年前に起きたミラクルをつづった子育て日記はこちら
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