杉並区立小の校庭「放置くぎ」2年たった今年も見つかる 改修工事は4校で3億2000万円、国の補助なし

宮畑譲 (2025年8月30日付 東京新聞朝刊)
 学校の校庭に放置されたくぎが問題視されるきっかけとなった東京都杉並区立荻窪小で、校庭の改修工事が行われている。これまでに金属探知機などでくぎを取り除いてきたが、2年たった今年に入っても見つかっていた。校庭改修に国の補助はなく、区は費用の全額を負担する。学校側の不注意が元で、児童の安全を確保するためのコストがかさんでいる。
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重機による改修工事が進む校庭=杉並区立荻窪小で

校庭の放置くぎ問題

2023年4月、東京都杉並区立荻窪小の校庭で、転倒した児童が地面から出ていたくぎに接触して左膝付近を十数針縫う大けがを負った。その後、他の自治体の校庭や公園のグラウンドでも放置くぎが見つかり、問題が広がった。運動会や体育の授業でラインを引く時の目印として打ち込まれたとみられる。事故発覚後、文部科学省は全国の教育委員会に点検の徹底を通知、2024年に作成した学校の安全点検要領にも注意すべき危険として盛り込んだ。

金属探知機を使っても、難しい

 児童のいない8月上旬の荻窪小の校庭。厳しい日差しの下、トラックやショベルカー、ロードローラーなどの重機が入り、土を運んだり、ならしたりしていた。地表約10センチの土を入れ替える工事は6月から始まり、夏休み明けには通常通り使える予定だという。

 同校の校庭で放置されたくぎに児童が接触してけがをしたのは2023年4月。その年、業者が金属探知機で埋まったくぎを見つけるなどして撤去したくぎや金属片は計574個に上った。

 それから2年。「もうくぎはないと思っていた」。こう話すのは、2024年4月に着任した手塚成隆校長。着任後、杉並区内の別の小学校の校庭でくぎが見つかったため、同年9月に自主点検をして20本のくぎを取り除いた。その後、さらに約100本が見つかった。

 事故後、荻窪小の校庭で、新たにくぎは打っていないにもかかわらず、除去しきれない。手塚校長は「金属探知機が反応した場所を掘っても出なかったり、逆に反応がなかった場所から出たりする」と完全に撤去する難しさを語る。

校長の嘆き「どこにゴールを…」

 荻窪小の事故後、杉並区が区立小中学校などの70施設を調査した結果、計1万5000個以上のくぎなどの金属物が除去された。しかし、その後も断続的に発見され、昨年秋と今年春に区が発表した調査結果で、それぞれ約1000個が見つかった。

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杉並区役所

 こうした状況を受け、杉並区は本年度、区立小4校の校庭改修を決め、予算を計上した。荻窪小を含むうち3校は放置くぎが多く出たことを考慮した。改修費は荻窪小が約3500万円、他の3校は各1億円程度で、計約3億2000万円に上る。国の補助はなく、全額区の予算で賄う。荻窪小の事故後の撤去作業でも計約7100万円かかった。

 杉並区で区立学校の校庭改修は通常20~30年に一度。杉並区教育委員会の担当者は「改修だけで安全を確保するのではなく、日常的に点検するのは大前提。ゼロになっていると思わずに校庭の表面の管理をしっかりやる必要がある」と話す。

 手塚校長は改修することになり、安心する一方、放置くぎが完全になくならない現状を嘆く。「予算を取って校庭の改修までできるのは一部。どこにゴールを設ければいいのか」

安全確保は重要だが、費用対効果は?

◇名古屋大学の内田良教授(教育社会学)の話

 公立学校の施設整備は後れを取っている。学校の安全を確保するのは教育をする前の土台であり、非常に重要だ。ただ、数千万円から1億円という額は耐震補強に匹敵する。何事も費用対効果、優先順位がある。どこの自治体も杉並区のようにはいかないはずで、教育に関わる予算をどのように使うのか、常に議論が必要だ。

元記事:東京新聞デジタル 2025年8月30日

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