妊娠中の不安と喜び 189人の体験談 向き合い、つながり、支えられ…見えた「4つの絆」

妊娠中期、胎動を感じて前向きに
東京すくすくでは、社会課題に光を当て、困難を抱える人たちの思いを学び、行動を促すための「てらすまなぶ 妊娠のこと」プロジェクトの一環として、8月にSNSでの発信を積極的に行うインフルエンサーの女性たちとワークショップを行いました。

活発に意見を交わしたインフルエンサーのみなさん=東京新聞本社で
そこでわかったのは、妊娠中は体調だけでなく心理状態も大きく揺れ動いていること。妊娠初期はつわりによる体調不良や生活の変化に戸惑いが多く、精神的にも不安定になりがちです。いっぽうで妊娠中期になるとだんだん体調が安定し、特に胎動を通じて赤ちゃんの成長を実感して、前向きな気持ちになることが増えていく――という共通点も浮かびました。
安定期(16週ごろから)も終わりに近づく妊娠中期の24週目(7カ月)以降は、いよいよ出産へ向けて心も体も準備を始める時期。お腹の膨らみが目立つようになり、仕事を続けるべきか、上の子の育児はどうしよう…とさまざまな悩みや迷いを感じるタイミングでもあります。
「てらすまなぶ 妊娠のこと」プロジェクトではこの妊娠中期に注目し、東京すくすく公式インスタグラムで「妊娠24週目以降に、赤ちゃんの誕生を実感し始めた思い出」を募集。189人から192件のエピソードが寄せられ、そこで感じた“つながり”がいくつも見えてきました。みなさんの投稿を4つの「絆」にまとめて紹介します。
※本記事中のエピソードは、東京すくすく公式インスタグラムへの投稿を、主旨が変わらない範囲で表現を整えて紹介しています。
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絆① 命とつながる
かすかな胎動が確信に変わった瞬間。24週目を迎えた安堵。亡くした命の記憶…。体型の変化に加え、日増しにはっきりと感じられる胎動は、自身の体の中で確かに育っている小さな命との対話が生まれるきっかけになっています。
・24週を過ぎたころから、夜になると決まってポコポコ動き出し、まるで「今日も1日おつかれさま」って言ってくれているみたいだった。次第にしゃっくりのリズムまで伝わるようになり、愛おしさがどんどん増していった“会える日が近づいている”と、毎日が特別に感じられた時間だった。
・波打つように動く時、「ああ!本当このお腹に命があるんだ!」と感動した。
・お腹が少しずつ大きくなって、しゃっくりのような動きを感じた時に「これが胎動か!」と感動した。初めての妊娠で不安もあったけど、小さな命の動きに励まされる毎日だった。
・胎動、わかるかな?と思っていたけれど、お腹の中で魚が泳いでいるような感覚で、すぐにわかった。自分の体なのに自分の体じゃない、不思議な感覚だった。
・胎動を感じるとうれしい気持ちと同時に、胎動が少ない日は不安で不安で…。仕事中でもそっとお腹に手を当てて、胎動を確かめていた。今考えると全然仕事に集中できてなかった。
・妊娠初期に切迫流産になり、無事に産まれてくるかとても心配だったが、7カ月になり、日に日に強くなる胎動に、元気に育っているんだと毎日安心材料になった。
・流産経験があり、本当に育ってくれているのか心配な毎日だった。しかし日に日に胎動が強くなり、この子はいるんだと強く実感ができて、とてもうれしかった。
・ポコポコっと胎動を感じ、あっ私この子を何がなんでも守りたい、会いたいと思った。母になる準備を赤ちゃんがしてくれたんだと思う。

絆② 家族とつながる
胎動を感じる瞬間は、パートナーや上の子どもと、お腹に宿る小さな命の存在を共有する時間でもあります。新しい家族を迎える喜び、お互いへの思いやり、小さな胸に秘めた戸惑いや不安。そうした気持ちが少しずつ形になり“家族”になっていく様子が伝わってきました。
・お腹の中でポコポコと動くたびに、「もうすぐ会えるんだなぁ」と幸せを実感した。夫と一緒に手を当てて胎動を感じた瞬間は、何度でも思い出したくなる特別な時間。赤ちゃんに話しかけながら過ごした毎日が、私たち家族の絆を育ててくれた。
・当時3歳の兄が付けた胎児ネームは「からあげちゃん」。自分の大好物をネーミング!でもそれがかわいくて、家族みんなでからあげちゃんの誕生を楽しみにしていた。寝かしつけで絵本を読む時に、兄がお腹に向かって「からあげちゃんもきいててねー!」と呼びかけていた。その声にお腹の中で動きまくって反応していた弟は、2歳になった今も、相変わらず寝る直前まで動きまくっている。
・胎動がわかるようになると、夫がよくお腹を触ってくれた。毎日夜中起きて、私のお腹にちゃんと布団がかかっているかを確認してくれるのがうれしくて寝たふりしていた。
・1人目の時は胎動を感じ出してすぐに「ぼくいるよ!」と言わんばかりに、足型がくっきり浮き出るくらいよく動いていた。下の子の時はあまり激しい胎動を感じなかったが、お兄ちゃんがお腹を触った時だけはなぜかポコっと蹴ることが多くて、今蹴ったね!と息子との楽しい会話時間にもなっていた。一瞬一瞬が今その時にしかない宝物だったと感じている。

イラスト・永須華枝
・夫が単身赴任中で、上の子と2人で生活していた。動き回りたい2歳児とお腹が大きくて思うように動けないもどかしさや、2人でいる時に陣痛が来たらと不安だった。そんな精神的にしんどい時に、2歳の娘がお腹を優しくなでてくれたことが忘れられない。
・3歳の娘にお腹の中に赤ちゃんがいることを絵本を作って伝えたところ、真顔で聞いた後、何かを思い出すように泣き出した。聞いてみると、小さな声で「あかちゃんいやだ」と言われた。まだ早かったかな。そうだよね嫌だよね。ごめんね、と一緒に泣いた。下の子が生まれて2カ月、今では毎日のように「だいすき」と妹に愛を伝えてくれている。
・夫が私だけを気にかけてくれていた最後の期間。今ではお互い子どもたちに夢中です。
・31週目で産休入り。そこからベビー用品を買い揃えて、世界一幸せな洗濯をして、家の大掃除をして…。バタバタだったけど、夫と2人の貴重で楽しい思い出。
・次男妊娠中、6歳離れた長男は誕生をとても楽しみにしていて、お腹が大きくなると大好きだった「抱っこ」もめっきり言わなくなっていた。どこで聞いたのか「赤ちゃんてミルク飲んだら寝るらしいよー」と育児情報も話してくれるように。長男が赤ちゃんの時は、ミルクを飲んでも抱っこしても泣き続けて全然寝なかったのに、本人が助言してて笑えたが、大きくなったなーとほっこりした。

絆③ 自分とつながる
日々変化していく自分の体に不自由さを感じたり、胎内に宿る自分とは別の命の存在への責任感が芽生えたり、押しつぶされそうになったり。妊娠後期を目前に控えた24週に、自分を見つめ直し、弱さ・強さに気づいたという声も寄せられました。
・出産することが怖すぎて毎日夜泣いてた記憶がある。
・本当に母親になれるのかすごく不安だった。
・妊娠24週頃からお腹がかなり大きくなり、しゃがんで家事を行うことが大変で、休憩しながら行っていた。この頃から胎動も感じられるようになり、起床時に動いていることが確認できると、とてもうれしく「今日も頑張ろう」という気持ちになったことを鮮明に覚えている。
・ようやくつわりが終わってご飯を食べられるようになり、検診が2週に1回に変わったりして出産が近付いてきている実感がわいてきた。お腹が大きくなってきて息が苦しいけど検診でお顔が見れたり胎動を感じると2年の妊活・1年の不妊治療頑張って良かったと思うし、幸せを感じる。
・産休中は時間が合う限り母と一緒に買い物に行ったりウォーキングをしたりして過ごしている。なんだか純粋に“娘”として過ごせる最後の期間のようで、母と2人で過ごす時間を存分に満喫しようと思う。子どもが産まれたら私も母のようなお母さんになりたい。

絆④ 社会とつながる
社会の中の小さな思いやりに気づいたという声も届きました。妊婦であることに、あらゆる場面で理解を示してもらえるわけではないものの、席を譲ってもらったことや声をかけられたことをよく覚えている人は少なくありません。妊婦へのこうした思いやりが、目立たなくてもちゃんと残っていく世の中であってほしいと、私たちは考えます。
・お腹が大きくなるごとに、職場などで気づいてもらえることが多くなった。家族以外の方と妊娠をきっかけに関わることができて人の温かさを感じた。今度は私がお返ししていきたい。
・スーパーで買い物中に突然お腹の中の赤ちゃんが元気に動き出し、思わず立ち止まってお腹をなでていると、近くにいた子どもが「赤ちゃん、こんにちは〜!」と手を振ってくれて、思わず笑顔に。見ず知らずの子に温かい気持ちをもらえた出来事だった。
・看護師で病棟勤務しているが、産休までしっかり働いた。入院中の患者さん方は、訪室するたびに体調を気遣ってくださり、お腹にも声かけてもらいすごくほっこりした日々を過ごすことができた。
・息切れして長い距離歩けなかったこと、患者さんや先輩が心配してくれたこと、電車で席を譲っていただけることが増えたこと(だいたい男のサラリーマンの方が多く感謝です)。しんどかったことだけでなく周りの方の思いやりに触れて幸せだったことが思い出。
あなたの体験も共有しませんか?
189人の体験談を通して、うれしさや安堵だけでなく、不安や迷いも含めて似た思いを抱えてきた人がたくさんいることが見えてきました。この記事が自分自身や身近な人のことを考えるきっかけになれば、また「てらすまなぶ 妊娠のこと」プロジェクトがこれから妊娠に向き合おうとする方や妊娠中の方、育児中の方、支える方たちが共感し合える場になればうれしいです。
今回紹介した声以外にも、まだ言葉になっていない「妊娠中の思い出」がたくさんあるはずです。記事の下のコメント欄「すくすくボイス」では、引き続きみなさんの声を募集しています。印象に残っている出来事や気持ちがあれば、ぜひ教えてください。
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