【妊娠・出産サポーターズ】小児科医には何を聞いても大丈夫 赤ちゃんが生まれる前から伴走し、不安を解消します


お話を伺ったおぎくぼ小児科の院長・上野健太郎先生
小児科医とは
生まれてから大人に至るまでの病気を診断して治療を行うだけでなく、赤ちゃんがお母さんのおなかのなかにいるときから支えてくれる専門家。子どもが健やかに成長していけるように、胎児期から小児期、思春期を経て成人期までの過程で伴走してくれる医師です。今回は、おぎくぼ小児科(東京都杉並区)の院長・上野健太郎先生に詳しくお話を伺いました。
出産前に知ってほしい、予防接種のこと
―子育て中の“あるある話”の一つとして、乳幼児の保護者から「赤ちゃんが生まれて、接種するワクチンの種類・回数が多くてびっくりした」という声をよく聞きます。生まれてから気付くのはどうしてだと思いますか。
上野先生 赤ちゃんが生まれる前に、みなさんベビー服やベビーベッド、おむつなど必要なベビー用品の準備はしますが、感染症対策や予防接種のことまではなかなか考えないのでは。赤ちゃんは、生後2カ月から最初のワクチン接種が始まることを、初産の方も最低限知っておいてもらえれば大丈夫です。
ワクチン接種で小児科に来ていただければ、「次はこのワクチンの接種、次はこれ、その次はこれ」と小児科医から案内するので、安心してください。また、赤ちゃんが生まれると、自治体から保健師や助産師などの専門職によるご家庭への訪問(「新生児訪問」や「こんにちは赤ちゃん訪問」など)が行われているので、その際に予防接種についても説明してくれると思います。

―先生のクリニックを受診される患者さんは、ワクチン接種のスタートがきっかけのお子さんが多いですか。
上野先生 当院では主に0歳児から20歳未満までの患者さんを対象に診ていて、初めてのワクチン接種がきっかけのお子さんも多数いらっしゃいます。開院して1年ほどということもあり、乳幼児期でのワクチン接種がすでに済んでいる小学生や中学生、高校生などでは、かぜやインフルエンザなど感染症にかかって来院される場合が多いですね。
妊婦さんの接種が推奨されるワクチンも
―一般的には、小児科は子どもが生まれてから受診するものというイメージがありますが、妊娠中から小児科医が関われる範囲をどのように考えていますか。
上野先生 当院では、おなかの赤ちゃんが生まれてきたときに感染症から守るために、妊婦さんへの接種が推奨または考慮されているワクチンとして、三種混合ワクチン(製品名トリビック)や、2026年4月から定期接種化がスタートしたことで話題に挙がっているRSウイルス母子免疫ワクチン(製品名アブリスボ)の接種も行っています。当院でこれらのワクチン接種を受けた妊婦さんによると、ふだん妊婦健診を受けている産婦人科で取り扱っていないということで、小児科での接種を勧められたそうです。
ご自分でホームページを調べて当院にワクチンの接種で来院される方も一定数いらっしゃいます。2人目のお子さんを妊娠中の妊婦さんの場合は、1人目のお子さんが当院にかかっていることがきっかけです。

―生まれて間もない赤ちゃんが感染症にかかると、どのような心配がありますか。
上野先生 例えば、ほぼすべての乳幼児が2歳までに感染するとされているRSウイルスが原因で起こるRSウイルス感染症は、特に生後6カ月くらいまでにかかると重症化するリスクが高くなります。診察してせきや鼻水、呼吸が苦しそうなどの症状があるのに加えて、保護者から「上の子の保育園でRSウイルス感染症がはやっている」といったお話を伺ったりすると、割と容易に疑うことが可能です。
RSウイルス感染症は重症化すると無呼吸や急性脳症、脳炎などが起こることがあり、入院するお子さんもいます。呼吸困難が強い場合などには、人工呼吸器による治療が必要なこともあります。そのほかにも、将来、ぜんそくを発症するリスクが高くなることが知られています。
RSウイルスは流行時期が予想しにくい
―感染症には流行時期がありますが、感染症の種類によって傾向も違うのでしょうか。
上野先生 全国の「小児科定点医療機関」で受診患者数が毎週、保健所に報告されている「5類感染症」はRSウイルス感染症、突発性発疹、手足口病、プール熱など10種類あります。この仕組みで、子どもの間での流行状況が把握されています。
RSウイルス感染症の場合、かつては冬に流行していましたが、近年ではあまり季節を問わなくなっています。2020年に新型コロナウイルス感染症が流行した際に、徹底した感染対策の影響で、RSウイルス感染症の流行がほぼ収まっていましたが、その翌年の2021年には過去最大の流行が5〜7月に発生しました。
これによって、本来なら赤ちゃんのころに感染して免疫を付けるはずだった子どもたちが未感染のまま残り、流行時期がさらに予測しづらくなったと考えられています。

クリニックの待合室では、モニターを活用して情報を配信している
―生まれてくる赤ちゃんを感染症から守るためのワクチンの一つとして、RSウイルス母子免疫ワクチンについて、妊婦さんやそのパートナーに知っておいてほしいポイントを教えてください。
上野先生 RSウイルス母子免疫ワクチンは、妊娠24~36週の妊婦さんが接種することで、母体でつくられた抗体が胎盤(へその緒)を通しておなかの赤ちゃんに移行します。それによって、生まれてきた赤ちゃんが生後6カ月くらいまでRSウイルス感染症にかかるのを防いだり、かかった場合でも重症化を防ぐ効果が期待できます。
2026年4月からは、妊娠さんを対象としたRSウイルス母子免疫ワクチンの定期接種化がスタートしましたが、定期接種化に伴い、これまで自費での接種だったのが、公費負担となって実質無料で接種できるようになります。今のところ、RSウイルス感染症を治す特効薬はないため、予防することがとても重要です。
今後、定期接種化が進むことで、乳児がRSウイルス感染症にかからずに済んだり、かかったとしても入院するほどの重症化は避けられたりする時代がやって来るかもしれませんね。
RSウイルス感染症に対するワクチンは、以前、早産に影響する可能性があることが言われていましたが、現在は否定されています。ですので、そういった情報を見聞きしたことがあって不安に感じている妊婦さんがいたら、医師にご相談ください。
365日、地域密着で対応していきたい
―先生のクリニックでは、365日診療をされていたり、ワクチンの種類やポイントをホームページで紹介されていたりと、患者さんに寄り添った取り組みが多くありますが、その理由を教えてください。
上野先生 お子さんの体調不良は突然やってくるので、365日対応している小児科が身近にあると、保護者の方々は安心できますよね。私自身、小児科医になることを選んだ際に、大規模な病院で高度な医療を扱うよりも、地域密着で患者さんに接していきたいという思いがありました。
予防接種については、保護者の方々からさまざまな質問を受けることがあるので、ホームページで詳しく取り上げています。予防接種の情報は、新しいワクチンの登場などによって、どんどんアップデートされていくので、当院のホームページでも、こまめに更新していくように心がけています。
―最後に、妊婦さんやそのパートナーへのメッセージをお聞かせください。
上野先生 かかりつけの小児科医を選ぶのは、赤ちゃんが生まれてからでも、全然心配ありませんよ。もし、妊娠中から小児科を見ておきたいと思ったら、当院のように妊婦さんを対象としたワクチンを扱っている小児科を訪れてみるのもおすすめです。小児科医は赤ちゃんが生まれてからだけでなく、生まれる前から伴走しますので、気軽に相談してください。

取材後記
赤ちゃんとの新しい生活は、たくさんの楽しみや喜びがある一方で、心配や悩みが尽きないことだってあるもの。赤ちゃんのことや産後のことなど、気になることがあったら、一人で抱え込まずに専門家を頼ることが大切です。
近年では、「プレネイタルビジット(出産前小児保健指導)」などの名称で呼ばれる育児相談に取り組んでいる自治体や小児科などもあり、出産前に妊婦さんやそのパートナーが、出産後の育児や赤ちゃんの健康などについて、小児科医などの専門家に相談できます。また、産後、かかりつけの小児科をスムーズに見つけられるように、妊娠中に妊婦さんの見学などを受け付けている小児科もあります。そうした機会を活用してみるのもいいかもしれません。
妊娠中から小児科医という専門家の存在を意識しておくことで、より安心して子育てのスタートを切ることができるのではないでしょうか。
上野健太郎(うえの・けんたろう)
おぎくぼ小児科院長。日本小児科学会専門医。昭和大学医学部卒業。厚木市立病院、東京慈恵会医科大学附属病院、富士市立中央病院などを経て、2024年に365日診療を行う体制のおぎくぼ小児科を開院。クリニックのホームページでは、日々の健康管理や予防接種についてなどの情報発信を積極的に展開している。
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