東京都の「英語村」 “話す楽しさ知った”と好評だけど…利用者数伸びず 開設から1年5カ月、費用対効果に疑問の声
学校の団体利用がメイン「英語漬け」コース
改装したオフィスビルの一部に、薬局やファストフード店など外国の街並みを模した部屋が並ぶ。ここでの会話は全て英語だ。児童・生徒が8人1組になり、英語が母国語のスタッフ1人が付き添う。英語能力に合わせてプログラムを組み、半日や1日コースなどで「英語漬け」を楽しむ。
学研ホールディングスなどでつくる民間企業「TGG」が運営し、都が整備費4億5000万円と、フロアの賃料として年間2億7000万円を補助する。都内の学校の団体利用に支障がない範囲で、都外の学校や個人の利用も受け入れている。
都によると、「話す楽しさを知った」などと利用者の多くが満足し、教員の評判もよい。問題は利用者数だ。2019年度、都内の学校の団体利用は約7万人。都内に通う小学5年~高校3年生約73万人の1割未満で、年間で20万人という想定を下回る。
多摩地域に「第二」計画 調査費2000万円
想定を下回っている理由について、都の担当者は「各学校の事情」としつつ、遠隔地からは移動に時間がかかるため二の足を踏むケースも少なくないとも説明。そのため、都は多摩地域に第二の英語村を設立しようと、2020年度予算案に調査費2000万円を計上した。
英語村による子どもの英語力向上への効果について、都は20年度中に検証する方針。第二の英語村が必要かという検討も求められる。
識者も賛否「”英語が通じた”体験になる」「教室でも工夫できる」
英語村の意義について、上智大言語教育研究センター長の吉田研作教授は「教室でしか英語に触れない子が『実際はこうなんだ』と体験する場。英語を学ぶ必要性を感じるきっかけになる」と語る。「文法ばかり、読んで訳してばかり。そんな授業だけでは英語嫌いになる。『英語が通じた』体験を積んでほしい」。吉田氏は構想を議論した有識者会議で座長を務めており、2カ所目の整備構想も評価している。
評価する声がある一方、東京大の阿部公彦教授(英米文学)は疑問を呈する。「英語体験はモチベーションを上げるために必要だが、TGGでこれだけ費用と時間をかける意味があるのか」。学生と接してきた経験から、「実用」英語ばかりを重視する国の政策を批判している。
「ALT(外国語指導助手)やインターネットを活用するなど工夫すれば、教室でも外国の文化に触れたりネイティブスピーカーと話したりする機会をつくれる。数年に一度TGGに行くより頻度が増え効果的だ」と指摘する。
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