転居時に児童虐待見逃すな 埼玉の5市が連携 職員の共同研修も

加藤木信夫 (2019年1月19日付 東京新聞朝刊)
 埼玉県西部の狭山、所沢、飯能、入間、日高の5市は18日、「児童虐待防止に関する連携協定」を締結した。虐待リスクのある子育て世帯が5市の中で転居した場合、情報の受け渡しに漏れがないよう、職員の共同研修や、虐待を把握するためのチェックシートの共通化などを目指す。虐待防止を目的に複数の自治体が連携して協定を結ぶのは全国的にも珍しいという。

児童虐待のリスクを把握するための県作成のチェックシート。狭山市など5市は現在、地域特性などを加味した独自のシートを個別に使用していて、共通化が課題だ

   意外に多い近場の引っ越し

 今回の協定は、狭山市で2016年1月に虐待による女児の死亡事件が発生したのを契機に、準備を進めてきた。

 取りまとめ役の狭山市によると、昨年4~12月、住民票のある子育て世帯が5市の中を移動した例は13件あり、生活圏の近い場所への転居は珍しくないという。

 埼玉県内では昨年8月、県警と県の児童相談所の間で、児童虐待に関連する情報を共有するデータベースの運用が始まったが、市町村はこの枠組みに入っていない。

 担当者は「日ごろ、子どもに一番近い位置にいる自治体の間で、情報の温度差が生じないよう、連携する必要がある」と協定の意義を強調した。

   チェックシートを共通化へ

 虐待の有無や程度を反映するチェックシートについては現在、県作成のシートに各自治体がそれぞれの特性を加味して運用している。そのため、虐待程度の記入スタイルが「大中小」だったり「ABC」だったりするなどの差異があり、情報共有に向けての課題になっている。

 狭山市の場合、転居を多く繰り返していたり、警察から「子どもの泣き声がした」などの連絡があったりした世帯を対象に、シートへの記入を促している。その結果、虐待リスクが高いと判断した場合は「要保護」や「要支援」に指定するなどし、適切と思われるセクションでの対応につなげているという。

 今後は、5市で共通のチェックシートを作るなどし、複数の市をまたぐような事案でもリスクの見落としがないように対応していく方針だ。

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